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DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ―  作者: 紫風 剣新
一年編
13/67

第十ニ伝「顔合わせ」

第十ニ伝です。顔合わせって絶対緊張しますよね。緊張しない人はおかしい!

 進とアリサが5mほどの間隔を開けて対面する。龍と凛、剛は傍でその戦況を見守った。

 練習とは思えないような緊迫した空気が確かに実戦場に流れていた。

「それじゃあ闘いながら私なりの極意を教えるね★」

「なめやがって」

 アリサの言動の一つ、一つが逐一進の鼻についた。

 アリサは重心を低くし、顔の前に左手を構え、みぞおちの前に右手を構えた。一見すると奇妙な態勢。しかし、それは実に理にかなっていた。

「極意其の一、相手に隙を見せない。この構えは私独自であみだした構えなんだけど理にかなってるよ。重心を低くして的を小さく、手で人の弱点である顔面とみぞおちを守る」

 進は躊躇なくブーメランを放った。

 御託はいいからさっさと始めようぜ。

 そんな言葉がブーメランから見え隠れしていた。

 まずは様子見。さあどうでる?

「極意其のニ、相手の攻撃は即座に避け、即座に後ろを取る」

 アリサは目にも止まらないスピードでサイドステップして、実にあっさり曲者のブーメランを避けて見せた。

 気がつくと、進の後ろをいとも簡単に取っていた。

「ししょーすげー!」

 同じく身一つで闘う剛にとっては、アリサの動きは喉から手が出るほど欲しい動きだった。

「(速い……! ナーガの時のようなまやかしとは違い、ただ単純に避けられて後ろを取られた!)」

 アリサの力は進の予想以上を軽やかに超えていた。

 所詮は教員。それも、いつもノーテンキに過ごしているあの担任だ。この俺が、負けるわけが無い。進は心の底で思っていた。

 甘かった。油断してたら殺られる。

 進は一呼吸して気を引き締めた。

 バッという地を蹴る音がした。進は軽やかなステップでアリサと距離を取った。

「反応はいいね、でも今ので死んでたよ★」

「なに!?」

 全てが甘かった。アリサが本気なら後ろを取った瞬間死んでいた。

 この女は俺より強い……!

 進の頭はおかしくなっていた。進は自分が最強だと勘違いしていた。だが、こうも立て続けに自分より強いものが現れるなんて。

 しかし、進は成長していた。

 自分より強い相手だとしても、闘いを経て相手より強くなればいい!

 進は急にしゃがむ。すると先ほど投げたブーメランがアリサの視界に突如捉えた。

 奇襲だった。

「(投者のもとに戻ってくるブーメランの特性を生かして、ちょうど真後ろを取ったのが裏目に……!)」

 今度は余裕がなかった。持ち前の図抜けた反射神経でアリサは格好悪い横転をして避けた。

 この子は強い!

 アリサは進の強さを認めた。認めたうえで気を引き締めた。

 今のは完全に入るパターンだったのに……なんて女だ……!

「完全に武器を使いこなしてるね進君は、頭の回転の早さは私より上だね、困ったなー★」

 アリサはいつもと変わらないニコニコした顔で進を見ている。

 あの顔だ。俺の嫌いなノーテンキな顔だ。しかも、俺と闘っている最中に。俺は相手にもさせてもらってないのか。

 俺は無力だ……。

 力ない音で役目を終えたブーメランは力を失い地面に落ちる。

「今度はこっちの番かな★」

 来る……!

 アリサの攻撃宣言は進を神経を集中させた。

 アリサは進との間合いを詰めた。おかしなスピードだった。進はスピードには自信があった。でも、その自信を軽くひねりつぶすようなそんなスピードだった。

 神経をとがらせる。相手から目線を外さない。

 速いけど、対応できない速さではない!

 進が回避行動を取ろうとした瞬間だった。

「消えた…!」

 その時、アリサは消えた。


 そして、進の目の前に姿を現した。

 一瞬の出来事だった。

 やばい!避け切れない!

「極意其の三、決めるときは一撃で!」

 アリサは進の目の前で逆手付きの構えを披露した。

 みぞおち狙いか……なんとか受けきれる……!

 進は逆手突きに合わせてブーメランを盾にした。

 バカな!?

 アリサは進の予想に反した行動をとった。跳躍して、回転しはじめた。

「アリサ拳撃・順回!」

 猛スピードの走り、一瞬姿を消す特異な歩法。その二つはこれを決めるための伏線だった。

 完敗だ……アリサという担任は俺よりはるかに死線をくぐりぬけている猛者だ……俺は井の中の蛙だった……ちっぽけな海で大威張りしているだけだった……大海という強者達を知らなかった……。

 俺は……弱い……。

 精神的にも肉体的にも重い一撃だった。アリサは「はっ!」という掛け声とともに進の胸辺りに蹴りをぶちかました。

 進は吹き飛び、地面に叩きつけられた。

 それは、それは圧倒的な力の差だった。

「ごめーん★ 大丈夫? 手加減したつもりなんだけど……」

 アリサの言葉は進に止めを刺した。

「ギリか」

「! 痺れる……」

 アリサの体に痺れが生じた。

「なんとか帯電できたか」

 進はアリサの蹴りが当たる瞬間に自身の体に電気を纏わせていた。

「ただじゃやられないってわけね、進君恐ろしい子」

 なんとか最後に一矢報いることができた。だが、負けは負けだ。真摯に受け止めねばな。

「お前ら後は任せたぞ、くれぐれも俺が与えたダメージを無駄にするなよ。俺は疲れたから休む」

 進は仲間に託すことを覚えた。

 進は緊張の糸が解けたようにそばにある木に背をもたれ、尻もちをついた。アリサという一流バトラとの戦闘は1vs1は想像以上に体力を消耗するようだ。


「進様大丈夫ですの? いくら先生とはいえ許しませんわ」

 凛はアリサのことを尊敬していた。強くて優しい女流バトラ。理想像だった。

 でも、今はアリサに違う感情を持ち合わせていた。大好きな進をボロボロにした宿敵。今のアリサは凛の目にそう映っていた。

 気づいたら前線に立っていた。いてもたってもいられなかった。

「待ってよ凛、今度は三人で……」

 凛の行動はあまりにも身勝手だった。

 全員で行こう。そう決めた矢先であった。まだまだ、このチームの完成は程遠い。

「あなたの作戦なんてろくなもんじゃないですから聞いてられませんわ」

 凛は龍の言葉に聞く耳をもたなかった。

「りーん!次は俺の番なー!」

 ついには、剛までも次は俺の番とか言う始末。

 我が強すぎるよこのチーム……。


「常に周りを見て冷静な子だと思ったけど違うようだね凛ちゃん」

 アリサは凛のことを冷静にチームをまとめる優等生くらいの認識だった。しかし、凛はアリサの予想に反していた。典型的な自己中心的な女の子だった。

「褒め言葉として受け取っておきますわ」

「凛ちゃんって意外と感情的なんだね」

「行きますわよ、聖剣エターナル! 初出陣ですわ!」

 聖剣エターナル。光間家に代々伝わる謎の剣。凛はついに、この剣のベールを脱いだ。

 それは直視できないほどのまばゆい光だった。聖剣エターナルは力の根源である凛の光属性をどんどん吸い取ってしまう。

「凄い! 私の光属性がみるみる吸収されて、逆にこの子のパワーがどんどん伝わってきますわ!」

 凛は力を得た確かな感覚がその身に焼きついた。

「あの光は光属性だね、あの剣は光属性専用の剣かなにかかな? いずれにしてもいいもん持ってるね」

 アリサは感じた。あの剣の独特なオーラを。そして、用心しなければやられると。

 凛が聖剣エターナルを振り上げると、光が剣先に集まり、その輝きはさらに増した。

 振り下ろした。地面に亀裂が走る。この剣の総重量は30kg。もろに食らったらひとたまりが無い。

 しかし、所詮は素人の剣使い。アリサにとってかわすことはいともたやすい。

「凄い威力……だけど、全然使いこなしていないみたいだね」

「さすがに当たりませんわね」

「凛ちゃん?」

「はい?」

「もしかして進君のこと好きなの?」

 凛はビクッとした。

 心の奥底を手づかみされた、そんな心地よくない感覚。汗が全身からとめどなく流れる。

「はっ! いやそんなことは、えーと、でもどうですかね」

 凛は面白いほどに動揺した。

 この時点で勝負は決していた。闘士なら相手の動揺を見逃すはずが無い。それもアリサならなおさらだ。

 綺麗な掌底だった。凛のみぞおちに炸裂した。

「さすがですわね」

 ここで凛の専売特許、治癒能力が活きた。アリサの攻撃を最小限に受け止めた。

「(加減したとはしえ、もう治癒していく……光属性をここまで使いこなすとは……)」

 しかし、アリサの攻撃をもろに受けた凛はひざをついてしまった。勝負はいずれにしても決した。


「ししょー、お待ちしました! 一番弟子、鉄剛いざまいります!」

 鉄剛はいつにないほど気分が高揚していた。

 剛にとってアリサは憧れそのものだった。自分の腐りきった心を身一つで打破してくれた。恩人のような存在だった。

 俺はこの人についていく!

「まだあなたの師匠になった覚えはないけど、拳撃を極めるというなら師匠になってもいいよ★」

「そういうことなら俺はししょーの弟子にふさわしいっすよ。俺はスペシャルを持っていない。だから、拳撃を極めることしかできないっすから」

「フフッ、これは面白い素材見つけちゃったかもね★」

 アリサは嬉しかった。自分の後継者になりえる存在を見つけたことに。アリサは、剛のことをまるで自分の息子を見るような暖かい目で見つめた。

「では遠慮なくいかせていただきます!」

 自分の拳を認めてほしい。その一心で、剛は自分の自慢の拳を師匠にぶつけた。

 アリサはそれを簡単に払いのけて見せた。

「まだまだあ! 剛連拳!」

 剛は勢いそのままに連弾を放つ。

 アリサにとってして見ればいくら連弾だからといえ全く問題にしなかった。すべての打撃を見切り、受けた。

「よーしいいぞ剛、俺の存在は完全に忘れされている」

 龍は頭を使い、なんとかアリサに勝つ方法を模索した。

 思いついた。

 それは、奇襲。

 龍は空き家の裏に隠れてアリサの隙を伺った。実戦場の障害物を利用した作戦だ。

「次は私から行くよ★」

「はい!よろこんで!」

 アリサと剛の激しい打ち合い。アリサは剛の打撃を全て見抜いていなしている。


 打ち合いから数分経った。

「はーはー」

 剛は限界だった。ここまで、ノーストップの打ち合いはしたことがない。それも、アリサ相手にだ。剛の息は明らかに乱れていた。

「ふー、ちょっと疲れたね★」

 一方のアリサは息の一つも乱れていない。アリサは剛に手を貸した。

 アリサは全身の筋肉を緩めた。

 今だ!

 龍は隙を見つけた。

 アリサのもとに一直線に駆け抜ける。駆けながら鳳凰剣を抜いた。


「(分かりやすく隙を作ったらバカ正直に突っ込んできた)」

 アリサには龍の行動が筒抜けだった。そして、わざと隙を作った。

「行けー!」

 龍は剣を振り上げた。

 これで決める……!

「残念★」

 しかし、決まることはなかった。

 アリサは剛を掴み片手で持ちあげ、剛を盾にして龍の攻撃を防ごうとした。

「龍、ストーップ!」

 このままじゃ当たっちまう。

 剛は必死で叫んだ。

「やばい、止めないと!」

 それにこたえるために龍も必死で攻撃を止めようとするが……。


「ぎゃあ!」

「いてっ」

 骨と骨がぶつかる酷い音がした。龍と剛はデコとデコを合わせて激突した。

「あーあ、こりゃだめだ」

 少しでもこいつらに期待した俺がバカだった。

 進は感じた。実力差が違いすぎる。


「オッケー、バトルはこれで終わり、集まって」

 アリサは手をぱちぱちと叩きながら四人を集まらせた。

 言いたいことは山ほどあった。アリサは四人に一言ずつ伝え始めた。

「とりあえず一人一人思ったことを言うね。まず進君、闘いの才は認めるけど、一人で突っ走りすぎ。一歩さがってみんなと協力して戦うことも大事、分かった?」

「それは俺の勝手だ」

 進は屈辱を受けた。負けた挙句、負かされた相手に指摘されるなんてことは。

 自分でも分かっていた。自分には協力意識が著しく欠けていることを。

 だが素直に「はい」と言ってしまったら、自分がこれまで築き上げてきたなにかが崩れるような気がした。

 アリサは頭を押さえながら話を続けた。

「はー、次に剛君。まず、私の弟子になりたいなら構えからして全然ダメ。あれじゃあただのけんかだよ」

「はい! ししょーに認められるようなバトラになります!」

 返事だけは良かった。剛は全てを受け入れ、全てを吸収する。これが進とは違うところだ。

「そして凛ちゃん。あなたは実は意外と少し感情的。進君だけじゃなくて周りも見るようにね」

「だから違いますの!」

 改めて言われると尚も恥ずかしかった。

 凛は照れながらアリサの言ったことを訂正しようとした。

「最後に龍君、あたしを攻撃する時手加減したでしょ?」

「ばれていましたか、すみません」

 龍は最後の攻撃時、炎を弱めていた。練習だという甘い考えが、こういう判断を下した。

「闘いは常に真剣勝負、生きるか死ぬかだよ。その油断が命取り。これからは、相手が誰でも手は抜かない。分かった?」

 アリサは龍の行動を危惧した。

 この行動は、将来取り返しにならないことが起こりそうだからだ。

「わかりました」

「後、チームプレーに関して言えばバラバラで話になれないレベル」

 自分たちでも分かっていた。チームワークがバラバラだということを。ただ、改めて言われると応えるものだった。

「ということで明日から特訓するから。それと、明日ナーガチームと顔合わせがあるからよろしくね★」

 顔合わせ……。

 一気に四人に緊張が走った。

 自分の対戦相手は嫌でも気になる。どういうやつが相手なんだろ?

「で、あなたたちのリーダー誰なの?」

 リーダーか。そんなこと全く考えてもいなかった。チームなるものそのチームをまとめるリーダーは必要不可欠だ。

「そういえば決めていませんでしたね、どうするみんな?」

 誰がリーダーに相応しいか?

 全員が他のメンバーのことを思い起こした。

「リーダー、いい響きだ! ぜひ俺に!」

 剛が立候補した。龍と進と凛は反射的に口を揃えた。

「それはない!」

 剛の意見はあっさり棄却された。

「リーダーはチームの中で一番強い者がなる、これは道理だ。お前らには任せておけない、俺が適任だ」

 進が立候補した。

 それは、覚悟の表れだった。

 自らがリーダーになることで負けられないというプレッシャーをかける。勝利への執念がそうさせた。

「賛成ですわ」

 凛は素直に喜んだ。大好きな人がリーダーになって、指示を受ける。そんな嬉しいことはないだろう。

「リーダーってのはみんなを統率しなければならない。お前、俺たちのことまとめられるのか?」

 龍は進に改めてリーダーの意志を問うた。

「当たり前だ、任せろ」

 メンバーはなにも異論を唱えなかった。

「このチームは進チームに決まりね★ 進チーム行くぞファイ!」

「オー!」

 全ては勝利のために、進チームとして新たに始動したのであった。

 交流戦まであと6日。


 ☆ ☆ ☆


 翌日。

 龍、進、凛、剛、アリサの五人はナーガチームとの顔合わせで応接室に収集された。応接室は長細いテーブルと片面に五つずつのいすしか置かれていない狭い部屋だった。狭さも相まって全員の緊張感が凝縮されたような室内だった。

「今日、ここでナーガチームと顔合わせだからね。もうすぐ来ると思うよ」

 アリサは緊張感をなんとか和らげようと口火を切った。

 フー、フーという呼吸がいたるところから発生する。特に、龍は緊張がひどく、両腕は小刻みに震えていた。

「誰かな? 俺の獲物は?」

 剛の腕もまた震えていた。しかし、龍とは違い武者震いの方だった。

「ちょっと静かにしてくれますの?」

 凛はこんな独特な状況においても冷静だった。冷静に剛を注意したその時だった。

 扉が開くガラガラという音がやけにはっきり室内を響かせた。

 来る……!

 室内の緊張感が最高潮に達した。

 まず、長ったらしい白い髪をなびかせて、ナーガチームの担当である白連氷が入室してきた。

「どうもはじめましてみなさん、白連氷です。なんかこの教室ジメジメしてませんか? は”ジメ”ましてだけにね」

 ただでさえ冷え切っている室内に、このしょうもないダジャレ。

 冷房でキンキンに冷えた室内で、アイスを食べるようなものである。

 5人は硬直した。

「空気が冷え切っちゃてるじゃないですか先生♪ また、しょうもないこと言ったんですか?」

「先生、つまんない」

「先生、俺は面白かったっすよ」

「僕たちの品位を落とす発言は止めてくれますか?」

 邪化射ナーガ、邪化射ナギ、水堂黄河、日向太郎の4人が続々と応接室に入ってきた。

 ついに進チームの前に姿を現したナーガチームの面々。

「ああーー!」

 各々に見覚えがあった。

 運命だった。この対戦カードは運命の悪戯としか思えなかった。

「どうも、黄河さん」

「ナギちゃん、久しぶり!」

「あの憎たらしい奴だ!」

 進チームの面々が、それぞれ面識ある人に声をかけた。

「龍、まだシルット食ってるんすか」

「凛ちゃん…」

「君が1年の代表とは、1年の実力の底が知れますね」

 ナーガチームの面々がそれを返す。

 今まで冷ややかな雰囲気を決め込んでいた多目的室の空気が少し和らいだ。

「久しぶりだね進君♪ 僕と戦って心おれたんじゃない?」

 この男だけは違った。

 邪化射ナーガ。

 すべての空気を支配した。

「心おれるかアホ、お前をどうやって倒すかを四六時中考えてたぜ」

 心配はいらなかった。

 進はいつもの自信満々の調子で答えて見せた。

「あれー、みんな知り合いだったのー?」

「だったら話は早いです」

 それぞれが知り合いだと分かり、アリサと氷はほっと肩をなでおろした。

「少し黙ろうか君たち」

 再度空気がピンと張りつめた。

 ナーガはまん丸の眼を見開きながら、辺りを見渡した。

「今日みなさんに集まってもらったのは交流戦の対戦方法についてです」

 ナーガはすっと表情を和らげ、マイペースに淡々と話を進めた。すでにこの空間はナーガの手中にある。

「まだ決まってなかったのか?」

 進は腕組みしながら言った。

「大方は決まってるんだけどね、学年カラ-であるフラッグを奪い合うっていうルールなんだけど問題はチーム戦にするか、個人戦にするか。君達が圧倒的に不利だから、君達が決めていいよ」

「むかつくやろーだな、進にそっくりだぜ!」

 剛のこの発言が進の逆鱗に触れた。

「俺があいつに似ているだと冗談じゃない!」

 確かに剛のいうとおりかもしれない。

 龍は妙に納得した。

「ちょっとまって。個人戦だったら全部で四戦、二勝二敗だったらどうするのですの?」

 疑問を持った凛は場を整理しながら質問した。

「いい質問だね可愛い子ちゃん」

「! なにをい、言ってるのですの!?」

 凛の心臓がドキッとした。

 親以外に「可愛い」と言われたことは初めてだった。

 凛までも手玉に取るとは恐るべし邪化射ナーガ……。

 龍はナーガの怖さをさらに見つけてしまった。ナーガはお構いなしに続けた。

「だから一つは二人一組でやってもらおうと思ってるんだけど。そうすれば、全部で3試合、決着はつくはずだよ」

「なるほどですわ」

「で、どうするんだ? 個人戦かチーム戦?」

 剛は色々な人をキョロキョロしながら尋ねた。

「ここはリーダーの進君に決めてもらおう。リーダーとしての初仕事だね」

「賛成です、どうする進?」

 アリサは進に決断を委ねさせることを提案し、一同はそれに賛成した。

 進は小さくうなずき、目をつぶった。しばしの沈黙の後、目を見開いた。

 決断した。

「先生に言われたとおりチーム戦はまだまだ、少しでも勝つ可能性があるのは個人戦だ。個人戦を希望する!」

 進は個人戦を希望した。

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