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DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ―  作者: 紫風 剣新
一年編
1/67

プロローグ

はじめまして作者の紫風剣新です。私は子どもの頃、妄想癖がありましてその妄想をなんとか思い起こし文章化させたのがこの小説です。初投稿なので分からない点が多々ありますが、どうかよろしくお願いします。

 この世界には特別な能力を持つ人間がいる。

 ある者は炎を使い、またある者は自分の姿を消し、またある者は天地を操ることだってできる。

 その力を用い様々な依頼をこなす職業を闘士「バトラ」と呼び、その能力のことを特別「スペシャル」と呼ぶ。

 この物語の主人公はそんなスペシャルを持った一人の少年、一撃龍いちげきりゅう。彼と彼の周りにいる者達の「闘い」の物語である。


 一人の少年がいた。

 名は一撃龍。

 一族の遺伝である、赤と黒が入り混じった特徴的な髪色。額には想像上の生き物とされている龍の絵が刻まれている。

 名前の由来となった額の紋章だが、なぜ彼にだけこんなものが刻まれたかは全くの謎であった。一つだけ分かっているのは、生を受けた瞬間から刻まれていたということだ。


 ☆ ☆ ☆


 僕、一撃龍は七歳の誕生日を迎えた。

 パパの職業は闘士バトラ。特殊な能力で敵を倒し、僕達を守ってくれる本当のヒーローさ。

 パパは仕事が忙しくて家にあまり帰ってこなかったけど、たまの休みの日には公園に行ったり、ショッピングしたり、たくさん遊んでくれた。

 そんなパパが大好きだった。

 僕の将来の夢はパパみたいな立派なバトラになることだった。

 今日は、誕生日。でも、パパは仕事だった。

 しょうがないよ。仕事だもんね。でも、この日のパパは悲しい顔をしていた。

 もう一生会えないんじゃないかって、そんな気がした。

 行かないで!行かないで!

「ゴメンな」

 そう言い残してパパは、祝いの言葉をつげず、誕生日プレゼントもくれず、仕事に行ってしまった。

 僕は心臓に無数の針に刺さったような、そんな痛々しい気持ちに陥った。

 結局、それが僕が聞いたパパの最後の言葉になった。


 ☆ ☆ ☆


 俺は15になった。

 俺の額にあった紋章は、すっかり薄くなり、パッと見ただけでは識別できないくらいだ。

 普通なら友達とバカやったりして、人生で一番楽しい時だ。

 俺はそうはならなかった。

 俺には幼少期から父親がいない。そのせいか、昔から周りからいじめられていた。

 それが原因で不登校気味になってしまい、学校に顔を出すことは無くなってしまった。そして、俺は次第に家に引きこもってしまった。

 父さんがいなくなったせいだ!バトラという職業があったせいだ!

 俺はあの一件以来父親とバトラ、二つの言葉が大嫌いになった。

 俺が暮らすのはダイバーシティという、闘士の育成に力を入れる新しく出来た小さな国だ。

 そんな街の川のそばの小さな住宅街。そんな住宅街にある、木製で二階建ての、いたるところに塗装がはがれている、悪く言えばボロっちい家に俺は現在母さんと二人暮らしで住んでいた。

 俺の部屋はその二階にある。拠点と呼んでいるその部屋は、実に快適。一歩も動かなかくても、お菓子、ゲーム、マンガが手に取れるように設計したまさに理想の空間だ。

 母さんは元々闘士だが父さんにスペシャルを託し、今はバトラを引退し女手一つで子育てに励んでいる。

 母さんは昔から俺にあんまり怒ることが無かった。

 一見すると、いいかも知れないが俺がこんなにひねくれた性格になったのも母さんのせいかもしれない。


 俺が拠点での生活を満喫している時だった。

「龍、ちょっといい?」

 ああ、うぜー。

 自分の生活リズムを崩されるのは誰だって嫌だろう?

 母さんが、ガシャンガシャンと今にも崩れそうな音を立て階段を駆け上がっていく。髪は二つ編みで動物の耳がしおれたような髪型、白いうさぎ柄のエプロンをつけている。母さんのトレードマークだ。

 しばらくして、拠点の安息が揺らいだ。

 敵襲とも取れる激しいノック音だった。

「なんだよ!?」

 俺は自分の安息を守るために精一杯の威嚇してやった。

「入るわよ」

 俺の威嚇は簡単に無力化された。

 敵(母さん)がバタンバタンと乱雑な音をあげて拠点に侵入してきた。

 ガード(ドアを閉め忘れた)を怠った俺の不覚だった。

「おい、勝手に入ってくるなよ!」

 とは言ったものの許可なく人の部屋に入るのはタブー。

 母さんは明らかにタブーを犯したので、俺はパジャマ姿で髪の毛にたいそうな寝癖をつけながら、精一杯注意してやった。

「あんたこれからどうするの? 父さんと同じバトラになるため戦校に行くか、普通の就職先に入るために一般校に入るか?」

 母さんは俺の部屋で腰を下ろし、俺の忠告をさらっと受け流し、強引に本題に入りやがった。

 この国では、一般的に義務教育を終えると正バトラになるために国から推薦を受けたり、バトラ育成学校、通称戦校に通ったりする道と、一般企業に入るための一般学校、通称一般校に通う道。二つの道を選ぶことになる。無論、バトラになりたい者は戦校、一般企業に入りたい者は一般校に入ることとなる。

 んなこと考えたくねえよ。

 俺は拠点で悠々自適に暮らしたいんだよ!

「どっちにも行かねーよ! 俺は、一生ここにいるんだ!」

 言ってやったぜ。どうだ、ビビったか。

 突然、パチンという音が拠点内に響いた。新たな敵襲か?と、思ったがなぜか俺の頬が痛みを覚えた。なぜか、母さんの右腕がテニスのフォームのような格好をしていた。おまけに右手が綺麗にぱっくり開いてる。

 平手打ちだった。母さんは俺に平手打ちをお見舞いさせたのだ。

 平手打ちどころか、怒ったことすらほとんどない母さんの奇襲。

 あまりにも突然のことで、俺はひるんでしまった。

「あなたは! あなたは! どうしてこんな子になってしまったの…… パパ帰ってきてよ……あなたがいないとダメなのよ……」

 母さんは顔全体を両手で覆って、わんわんと泣き始めた。

 やばい……泣かせちまった……

 俺は母親を泣かせるほど堕ちた人間になってしまったのか……。

 俺は父さんがいなくなってからの8年間の自分の生き様をひどく後悔した。

 もう、8年間は戻ってこない……。

 人生をやり直したい。

 俺は決心した。

 これからの人生で、母さんを喜ばせないといけない。

 では、どうするか?

 俺はこの問いに一つの答えを導いた。

 父さんを見つける。

 俺自身も父さんと再会して、あの時の真実を聞きたい。聞かない限り死ぬことはできない。

 じゃあどうするか?

 バトラになる。

 これが近道だ。

 そう言えば、小さい頃の夢は「父さんみたいな立派なバトラになる」だったな。すっかり忘れていた。

 原点回帰と言ったところか。

「母さん。俺はバトラになって父さんを探しだす!」

 決意の言葉だった。

「そう……良かった……」

 母さんは泣きやんで、少し笑顔になってくれた。

 良かった。

「俺をバトラにしてくれ、母さん!」

「ちょうどこの近くに戦校があるから、そこに通いなさい」

「戦校でも観光でもなんでもこい!」

 こうして俺はバトラになるために、そして父を探すための新しい人生が始まった。

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