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第四話:三角関係!? 3

 気づくと、わたしは家に向かって歩いていた。


 小さな公園にさしかかると、騒ぎ声が聞こえてくる。


 薄暗くなり始めた公園内にある切れかかった街灯の下で、制服を着た三人の

男子高校生が、タバコを吸いながらふざけあっている。


 今までのわたしなら、見て見ぬふりを決め込んでいた。


 それが今の日本にあっては最善の方法なのだから。


 でも、最近は違う。


 イオがわたしの身体を占領しているからだ。


 あいつには妙な正義感がある。


 その上、今は虫の居所が悪い。


 なにやら、イオとレナとアールの三人の間には複雑な事情がありそうだ。


 わたしはといえば、広瀬先輩と九条先生のあんなシーンを見てしまったショックから

立ち直れないでいる。


 なんでわたしがこんなに落ち込まなくてはいけないのだ。


 先輩とわたしは、なんの関係もないのだから。


 それに、あれは、先輩ではなく、身体を支配していたのはきっとレナだったのだから。


 足元に吸殻の散乱している不良たちの側まで来ると、イオがどすの利いた声をあげた。


「拾えよ!」


 まあ、普通の女子高生のわたしがしゃべるのだからたかが知れている。


 しゃがみ込んでいた不良が、微妙に時間をずらして立ち上がった。


 一人がタバコをくわえたままわたしの前に来ると、それを吐き捨てた。


「肺ガンでおまえらが早死にするのは勝手だが、地球を汚すのは許せねぇ」


 いつものイオの決め台詞である。


 大抵ここで一瞬相手は引くのである。


 そして、ほとんどの人間が同じようなセリフを吐く。


「けっ! 気狂いかよ。 邪魔だからさっさと帰れ!」


「そこに散らかっている吸殻を片付けてくれたら、帰るよ」


 不良たちは、イオの言葉を無視してなおもタバコを吸い続ける。


「片付けろよ」


「うるせえな!」


 不良の一人がイオの胸を小突いた。


「手を出したな。だったら、こっちもいかせてもらうぜ」


 言葉と一緒にイオの左手のパンチが不良の腹に入る。


 彼は息も出来ずにその場にかがみ込んだ。


 別の一人がいきなり繰り出した拳を、イオは寸前のところで避ける。


 その後、続けざまに飛び出してくる鉄拳をらくらくとイオはかわしていく。


 なんどかかわしたのちにイオの右手によるアッパーカットが決まった。


 だけど、これはかなり力を抜いている。


 今までの経験上、イオは左利きである、なのに右手を出したのは相手を一撃で

ノックアウトしないためだ。


 数えきれないほどの膝蹴りが相手の胃袋めがけて入った。


 さらに、なんどもなんども相手の腹めがけて軽いパンチを繰り出している。


 手加減しているのって、相手のためっていうより、自分の憂さ晴らしのために相手をなぶりものにしているとしか考えられない。


 初めてイオを怖いと思った。


 今までも、イオに自分の身体を取られるのではないかという不安はあった。


 けど、決してイオに恐怖は感じなかった。


 あいつが、わけもなく人を傷つけるようなやつではないって感じていたから。


 今までにも幾度となく不良や悪人? をやっつけてきた。


 でも、今日はいつもと違う。


 普段は悪に対する戒め、相手を改心させようという気持ちだけだった。


 なのに今は、暴力という行為を楽しんでいるようだ。


 わたしは自分の身体だというのにその残虐な行動を止めることができない。


 わたし自体は運動音痴で喧嘩などしたこともない、そんなわたしの身体を使って普段喧嘩慣れしているであろう相手を、簡単に倒してしまうのである。


 それほど力のあるイオの仲間たちが、もしこの地球上に沢山やって来たとしたら?


 もしかしたら、イオの星の住人たちが、今現在、地球に向かっているかもしれない。


 思い浮かべただけでもぞっとする。


 ふとわたしは思った、イオに勝って欲しくないって。


 こんな不良たちを勝たせるのは悔しいけど、でも、人間である彼らには負けないで欲しかった。


 イオなんか負けちまえ!


 三人目を殴ろうとしたイオの手が、ふと、止まった。


「このやろう!」


 相手の拳が、イオの腹にめり込んだ。


 三人のうちでも一番弱そうだったが、相手も必死である。


 かなり効いた。

 

 イオの腹と言っても、彼が今は支配しているだけで本当はわたしの身体なのである。


 この後、イオはなんの抵抗もしなかった。


 ただ、彼らのなすがままにされていた。 でも、女の子にとって大事な顔が殴られそうになる時だけは避けてくれた。


 イオたちみたいに整った顔じゃないけど、やっぱり傷がついたらいやだもんね。


 少しは気使ってくれてるんだ、イオのやつ。


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