二つの幻 「境界の屋敷」
竜波紋の話が思いつかないので、こっちを進めました。
それではごゆっくり。
不気味な空間から抜けるととある屋敷が一つ。
多分紫の家なのだろうか、妙な静かさを覚える。
あのチート能力を使えば人目につかない所に家を作ることなどたやすいことだが。
「ここが八雲の屋敷か?」
「そうよ。さっ、入って入って」
「そう急かすな。では、お邪魔するよ」
早速屋敷の中に入る。
造りは昔の日本の屋敷といったところか。
しかしこうも広いのに紫一人で住んでいるのだろうか?
「なあ、八雲。一つ聞きたいことがある」
「ん?」
「ここはお前一人しか住んでいないのか?」
「いいえ、私の式神がいますわ。たまにその式神がもう一人連れてくることもありますわ」
「となると基本的に二人で住んでいるのか」
「貴方も私の式神になります?」
「やめろ、なったところでお前にこき使われることしか思いつかん」
「あら、酷いですわ」
「じゃあ実際の所どうなんだ」
「……」
「やっぱりな……その式神も同情するよ」
まったくこの賢者は……
しかしどんな奴を式神にしたんだろうか?
そこは気になる所である。
「紫様、帰られたのですか」
「ただいま藍。後、今日からこの幻想郷の住民になる古い友人を連れてきたわ」
「後ろの方がそうですか?」
「如月幻夜という。幻夜で構わない」
「紫様の式の八雲藍です。藍とお呼びください」
「あー……お前も八雲の名があるのか、呼ぶときに面倒だな」
「どういうことです?」
そう、いつも八雲と呼んでいるのでこれから先世話になることも多いと思うので少々面倒になった。
「幻夜はいつも私の事八雲って呼んでいるものね。これを機会にゆかりんって呼んでもいいのよ?」
「……分かったよ紫」
「相変わらずノリが悪いわね~」
「(無視)ところで藍とやら、その九本の尻尾もしや九尾か?」
「はい、そうです」
紫の奴なんて奴を式神にしたんだ。
規格外にもほどがあるだろ。
しかも同じ狐で相手の方が格上……肩身が狭いな。
こっちはただの長生きした狐なのに。
「貴方も狐の妖怪なのですか?」
「あぁ……しかし九尾に会えるとは来てよかったかもな」
「えぇ!?」
「そう驚かれてもな……現代ではかなり有名だけどな」
「そうですか、なんというか照れくさいですね。しかし、幻夜様は狐なのに尻尾がないですね、どうしたんですか?」
「(様ね、指摘すんのも面倒だし向こうがそう呼びたいんだったらいっか)切った」
「えっ!?何故!?」
「ちょっと邪魔くさかったし、生えるものだろうと思ったら生えなかったからそのままにした」
まあ、本当は別の理由だけど。
「何かびっくりしました、私もたまに邪魔だと思うときもありますけど一応体の一部なので」
「それが普通だよ。我が異常なだけだ」
「はぁ……いつまでも立ち話もなんですし居間に案内しますね」
「では、改めてお邪魔させてもらうよ……紫、部屋の隅で何泣いてんだ?」
「しくしく……二人で盛り上がって……ゆかりん悲しくないもん……」
賢者(笑)だなこれは。
知っている奴にこの幻影見せて、威厳の欠片なんて跡形もなく無くしたら面白そうだな。
さすがに恩があるからやらないけどな、それに大事な親友だし。
「悪かったよ。ほら行くぞ」
そう言って紫の肩を掴み揺する。
しばらくすると観念したのかよろよろと立ちあがる。
まったく世話の焼ける奴だ。
居間に行くために藍について行く。
しかしやっぱり和はいいものだ。
なんとなく気が落ち着く気がする。
……ぶつぶつ言っている奴がいなければの話だが。
「いつまで落ち込んでるんだ、置いていくぞ?」
「……」
「紫様?」
「放っておけ、奴の事だから少し経てば元に戻るさ。この幻想郷が出来る前の付き合いだからそれなりに知っている」
「そうですか……ではこちらでお待ちください、お茶をお持ちいたしますので」
「悪いな」
とりあえず座布団に座る事にした。
八雲、いや紫の奴あんな落ち込む奴だったか?
昔も落ち込んだ所を少ないが見たことはある。
けれどあそこまでひどくはなかった。
幻想郷が出来てから心の変化があったのか?
仕方ない慰めるかな。
ちょうどすれ違いに入ってきたからちょうどいいな。
紫は私と向き合うように座る。
「……」
「おい、いつまでもそんな態度だといくら我でも心配だぞ?」
「……」
本当にどうしたのだろうか、やけにしおらしくて逆に気味が悪い。
今までこんな態度見たことがない。
幻想郷にしつこく勧誘してくるときもこんな顔はしなかった。
そういえば幻想郷が出来たと紫が報告した後もたまに顔を向こうから出しに来てからだったか、思い当たるとすれば。
「……我がいなくて寂しかったのか?いや、我がこの幻想郷にいなくて寂しかったのか?」
「……」
「それは悪かった。でも、これからはずっとここにいる」
「……本当に?」
「本当だ、二言はない」
多分寂しそうだったからこう言ってみたけど所詮でまかせだしな。
紫の表情もさっきより明るくなったから大丈夫だろ。
「ありがとう。でも、何か物足りないな~」
「何がだ?」
「なんていうかそっと抱きしめてほしいというかなって」
「今度は頭がおかしくなったか?」
「酷いなー、また落ち込んじゃうわよー」
……また面倒なことになりそうだ。
仕方なく紫の隣にいき、優しく抱きしめる。
「……こんなのでいいのか紫?」
「うん。なんだか安らぐな~、それに幻夜は暖かいな~」
本当に何があったんだ?
こんな奴だとは思っていなかった。
今までの面影が全くない。
やっぱり寂しかったのかね、私がいなくて。
しばらくそのまま抱いていたが、
「紫様、幻夜様、お茶をおもち……」
お茶を持ってきた第三者の声で気まずい雰囲気に。
そんな目で見ないでくれると嬉しいが。
とりあえず状況説明に。
「あぁこれはだな、こいつが寂しいというもんでなぜかこんなことに」
「……そうでしたか、紫様とりあえず離れましょう。幻夜様が困っています」
「むぅ~、もう少しこうしたかったのに。まぁいいわ、藍、お茶貰うわよ」
「はい、幻夜様も」
「悪いな。しかし紫、九尾に家事をさせるなんて贅沢だな。藍、苦労してるだろ?」
「まぁ、そうですけど楽しいですよ」
「楽しいならいいけどな。そうだ、しばらく我もここに世話になるから手伝うかな」
「いいのですか?」
「どうせ面倒事全部押し付けられているのだろう?いいよな紫?」
「いいけど何で分かったのよ?」
「じゃあ何で視線をそらすんだ?」
「えーと……」
「まぁいいや。では、これからよろしく頼むよ」
八雲家に新たに狐の妖怪が住むことになった。
多分、九尾の苦労は少しは軽くなるはず?
まだ話はあまり進んでないですけど一日遅れでチョコの話をやりたいと思います。
では、また後で。