コンビニで…… (下)
仕方ない……この街は既に死と化した街、良い気はしないが脅すしか方法はなさそうだ。
俺は腰にあったリボルバー拳銃を右手で持ち、構える。
「おい! 騒ぐんじゃないぞ、大人しくしてれば命はとらない」
「ヒッ!」
銃口を向けられた男性は驚く。指示していないのに両手を上げ、無抵抗を示す。
「悪いな、今は食料が必要なんだ。騒いだりしなければ何もしない」
男性はコクコク、と首を縦に振り口を固く閉ざした。
「それと袋をくれないか? なるべく大きい袋を頼む」
両手を上げたまま座り込み、袋を片手で取る。もう片方の手は上げた状態で立ち上がり俺に袋を手渡す。
案外、話し合えばわかった奴だったのかもしれないな。
食料はなるべく長持ちするものでないと後々大変だ。
俺はこの行為に罪悪感を抱きながらも食料と水も確保し、十分袋に詰めたところでレジの前へと戻る。
「しかし、よく屍に襲われなかったものだな。お前は運が良いらしい、けどこの先気をつけろ。ここにもいつか屍はやってくる」
「(やばっ……何この臭さ)」
自分で自分の言葉に臭さを感じながらも、コンビニを後にしようと自動ドアを開け歩き出す。ところが悪役を背負った俺に、ヒーローの仕事は無理だった。
真正面から真のヒーローが、俺を蹴り飛ばす。
「ぬはっ!」
「アンタ、私のコンビニに手を出したわね!? 人間だろうが容赦しないわよ!」
目の前に、いかにも格闘家と思わしき短髪美女が立っていた。それに顔立ちは紗依さんと似ている。
「な、何だ!? っぐ……腹痛ぇ……」
「『何だ』はこっちのセリフ。人の食べ物を盗むなんて、どれほどの悪人なのよ」
「(はは……短気な女子ほど短髪が似合うのは何故だろうな)」
そんなことを思いながら、俺は目の前の美女に見惚れていた。
短髪美女はというと、俺の拳銃をずっと見ている。
「それ、今すぐ渡しなさい」
日の光のせいか輝いて見える美女は、拳銃を渡せと言う。これを渡せば唯一の対屍武器を失うことになる。又、この美女が俺を殺しかねない。
俺はその言葉を拒み、拳銃を強く握る。
「いいから早く渡しなさい! 私たち、死ぬわよ」
その言葉の後に続いて聞こえたのは、喉に力を入れた時のように発せられる唸り声。それも今までで特に大きな合唱であった。
屍の数は十……いや、それ以上の大群で此方に向かってくる。見た瞬間に手の力が抜け、食料や水の入った袋を落とした。
「早く渡せ!!」
「……あぁ」
頭の中は混乱して、俺は無意識にリボルバー拳銃と予備弾の入った袋を渡す。
「これの装弾数と残弾は何発!?」
「え、あ、装弾数は五発。残弾は二十発、だ……」
言葉に従うしかなかった。この美女は怖い。その時、ようやく現状を理解し、
「……ってちょっと待て、この数を相手にするのか?! 無茶すぎる!」
集まった屍は、軽く十八人はいるだろう。けれどリボルバーの反動は大きいらしく、頭に命中させるのは難しいはずだ。しかし、俺の心配など無用だった。短髪美女はリボルバー拳銃を両手でしっかりと持ち仁王立ちの状態で狙いを定め、頭を打ち抜き殺していく。それも連射速度が早い。体内時計で時間を計っただけだが、恐らく二秒間に二発は撃っている。
「(リロードは早くないけど……これならいけるっ!)」
と、思ったがいつまで経っても構えない。
「何をやってんだ、屍が来るぞ!」
「うっるさい! これリロードしにくいのよ」
不器用、とかそういう問題じゃない。リロードしようと弾を入れるが入らずに地面に落ちる。そして諦めたのか袋に弾を戻して俺に投げつけた。
「それリロードしておいて、私が何匹か倒しておく」
「お、おい――――」
一人で突っ走っていく美女。
彼女は自身の素手と足だけで残り十三人の屍たちを相手にする。驚きながらも、俺はリボルバーに残弾を装弾していく。
「(よし五発詰め込んだ。これで残弾数は十五発だが、なんとか大丈夫そうだな)」
「おい、リロードしたぞ! 早く受け取れ」
「オーケー!」
俺の声に返事をして一人の屍を蹴り倒し、此方に向かい、そして先程と同じように的確な命中率で撃ち殺した。
撃ち終わると美女は再び屍の方へ行き足止めをして俺はリロードを繰り返し、なんとか危機は去った。
「倒したのか、ふぅ」
「はぁ、はぁ……疲れた」
安心して俺は座り込んでしまう。一方、美女は手に持っていた水を一気飲みする。
「ちょ、それ俺のじゃないか」
「なーにが『俺の』よ、私のコンビニから奪っておいてよく言えるわね」
「ここ、お前が店長なのか?」
それを聞くと美女は「何言ってんの?」、と言わんばかりに呆れた。
「私のコンビニって言うのは、私専用のコンビニって意味よ。私が店長だったら蹴るじゃ済まさないし」
「ああ……そうか、行きつけのコンビニなんだな」
ほとんど棒読みで返事を返してしまった。正直、馬鹿すぎてこっちが呆れている。
「(なんか……言動が残念すぎる。しかし、一体こいつは何者なんだ)」
銃の扱いに長けてるし身体能力も並外れている。それにさっきの屍たちのヘッドショットが百発百中だった。
美女はプハー、と美味しそうに水を飲み干す。この時、区宮志悠は気づかなかった。彼女が感染者だと。
To be continued....
これで区宮志悠編は終わりとなります。
え? あのコンビニ店員?
あの人は…これからのお楽しみですよ(笑
10/17 修正




