仲間
俺の間違った選択で紗依さんを殺してしまった。そのことが頭から離れず、さっきからずっとモヤモヤし続けている。
街にいる屍は、時間が経つごとに増している。こんな中、武器も持たずに歩くのは危険だ。しかし精神が壊れかけている拓斗は、ズカズカとお構いなしに突っ走った。
「お、おい! 街中は屍で溢れているから危険だ。屍に噛まれて抗ウィルス剤を使用するのは勿体無いぞ」
「俺に構うんじゃねぇ、お前はいつまで俺の後を追いかけるつもりだ!? お前といると、俺まで殺されかねないんだよ!」
紗依さんのことを後悔している俺に、その言葉はひどく痛い。心に傷を負いながらも、とにかく説得を試みる。
「紗依さんの言葉を思い出せ! 紗依さんは、お前に生き続けてほしいって言った。そして、皆に生き続けてほしいと――――」
言葉を聞き目をカッ、と見開いた。
「は、はは……生き続けろ? 何言ってんだお前、こんな世界で生き続けろなんて、無理があるだろ! せめて……せめて紗依ちゃんと一緒に死にたかったのに、お前が!」
拓斗は首にさげていたポーチをゆっくりと取り、中身の抗ウィルス剤を取り出す。全部で六本ある抗ウィルス剤の一本を、地面に叩きつけた。
「拓斗、何してやがる!?」
ただでさえ大きい音を出していた俺たちのところに、屍たちが集まり始める。
四方八方から迫る屍に対処できる武器はない。
「これが欲しいならそこを動くな、ずっとだぞ? まぁ、どちらにしてもお前には渡さねぇけどな」
精神が壊れていて発狂している。いや、俺だからそういう態度をとっているのかもいれないが、とにかく今は抗ウィルス剤を取り上げることが優先だ。しかし下手に動けない。
「拓斗、その抗ウィルス剤を渡してくれ。五本あればこの先、まだ生き残れるはずだ」
俺たちの周りは屍が囲んでいる。逃げ場はもうなくなった。
「これでもう俺のものだ、一歩たりとも動くんじゃねぇぞ!?」
その次の瞬間に銃声が聞こえた。
「(銃を所持してるのか!)」
しかし倒れたのは拓斗と右側にいる屍で、拓斗が受けた銃弾は、急所は外れたが肩から出血している。そして立て続けに発砲が繰り返され、周りの屍は一掃された。
「拓斗、大丈夫か!?」
地面には抗ウィルス剤が先程のと加え三本壊れており、残り三本は無事であった。
俺は拓斗よりも先に抗ウィルス剤を確保する。
「そこの君、大丈夫か?」
そこに見知らぬ女性と、白衣を着た三十代ほどの男性と、男子高校生が近づく。三人は物騒な物を所持している。
俺の耳元では「痛い、痛い!」、と拓斗が苦しそうにしていた。
「貴方達三人は……何者ですか?」
その質問に一番年上らしき女性が答えた。
「質問には答えるわ。私たちは違っていなければ、君たちと同じ感染者だ」
唐突にそんなことを言いだす。俺たちと同じ感染者?!
「噛まれたのか! それは何時間前の話だ!?」
その質問に今度は三十代ほどの白衣の男性が答える。
「俺は五十分、メグは十分、んでショウが二時間二十分くらいか」
彼は男子高校生の頭に軽く手を置いた。
男子高校生の顔色は真っ青で既に、理性があるかわからない。
俺は男性へ簡単に説明する。
「感染してから二時間経った人間は、理性があっても抗ウィルス剤は効かない。だからもう助からない」
「ふーん。青年、君は研究者か何かかい? よく知っているみたいだけど」
表情一つ変えずに男性は話す。そんな中で女性は地面の壊れた抗ウィルス剤を見つけ「あれは何?」、と頭の回転が早いのか、この二人は的確に言葉を出してくる。
今ここで『抗ウィルス剤』のことがバレれば、残り三つがなくなってしまう。
俺はとにかく頑なに口を閉ざした。
「メグ、恐らくあれが抗ウィルス剤だろう。わざわざ注射器を持ってくる意味はそれ以外考えられない。こんな貴重なものだ、まだ持ってる」
抗ウィルス剤のことは全く話していないにも関わらず、持っていると断言した。しかしここで差し出すわけにはいかない。
「ふむ、本数は……一~五本くらいだな。いや、三本と言ったところか」
頭の回転が早すぎる! この状況だけで本数まで見破るなんて、流石に隠し通すことができない。そう思った時、後ろから拓斗が俺の持っていた抗ウィルス剤を取り上げた。
「てめぇには渡さねぇ!」
「しまっ――――」
だが数秒後に二発の銃声が鳴り響いた。そして、拓斗は心臓を撃ち抜かれ即死。
「な――――」
「君が言いたいのは、自分の予備が無くなることが嫌なのだろう? なら、こうすればいいだろう」
男性は男子高校生へ銃口を向け、躊躇いもなく引き金を引いた。
銃口の先から銃弾が飛び出して頭を突き抜け、男性の白衣には真新しい血痕が付着する。
「さあ、これで交渉は成立のはずだ。それとも次は青年の番か?」
女性の方へ視線を移すと、小さく笑っている。
「まあ安心しろ、青年からは俺たちと同じ臭いがする。同朋として、これからの仲間として仲良くしようじゃないか」
「 」
言葉は出なかった。けれど俺は抗ウィルス剤を差し出していた。
男は二つの抗ウィルス剤を取り、その場で打つ。
「ふぅ、青年、俺の名前は……エスとでも名乗っておく」
「私はメグ、よろしくね」
メグの差し出した手には男子高校生が持っていた拳銃が握られている。
この拳銃はニューナンブM60という38口径のリボルバー。
装弾数は五発。.38スペシャル弾という弾丸が装弾されている。
主に警官が所持している武器であるから、盗んだのだろう。
それを俺に持て、と言わんばかりにグリップを俺に向けた。そう、契約のようなものだ。
俺は躊躇いながらも、グリップを握った。
「俺は……区宮、志悠」
エスは口元を軽くあげ、笑う。
「よし、志悠。ここから脱出するぞ」
「……わかった」
エスとメグが走り出し、俺も拳銃を片手に走り出す。
そろそろ、区宮志悠編の完結をさせないと…
ストーリーがダメダーー。
10/17 修正
12/02 修正




