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Dead end world.  作者: NPTNs
第二章
31/34

解かれはじめる世界

 区宮がエスを殺して紗依さんと拓斗のところへ向かっている間、斎川恭香たちは辺りを気にしながら歩き続けていた。

 屍に注意をしながらも斎川恭香たちは無駄話で盛り上がっている――――


「――――あまり聞かない店ね。ここから出られたら行ってみようかしら」


「いいと思う」


「……さっきから一行も満たない返事ね、メグさんは」


 ――――と思っていたがメグはいつも通りの口調であり、盛り上がっているとは思えない。

 斎川恭香は若干面倒になってきたのか話題を変える。


「話題を変えるけど、メグさんの両親ってどんな人なの?」


「いきなり何?」


「ただ気になっただけ、無理に答えなくてもいいけど」


 メグは一瞬空を見上げ、何をしたかったのかわからないまま話し始める。


「私に両親はいない。小さい頃だったから、両親のことは何も知らないわ。今の私にとって親代わりの存在はエスだけよ」


「そうだったの……いきなりごめんなさい、聞いたりして」


 メグが何故あんなにもエスに忠誠を誓うようについて行き従ってきたのか、別に今でも親しくはないがメグのことがわかった気がした。

 その後、メグは聞いてもいない話を独り言のように話しはじめた。

 メグの話によると、メグは赤ん坊のまま捨てられており拾ってくれたのがエスの家族らしい。

 しかし家族といっても血は繋がっておらず、エスはその仮の家族に奴隷として扱われていたという。

 その家族に拾われたメグもある程度育てられたあと、奴隷として働かされたのだ。

 ある日、エスはこれまで自分を奴隷として扱っていた家族を殺し、同じ境遇にあったメグをエスは助け、メグとエスはともに暮らしていくうちに今のようになったという。

 ちなみにエスが女嫌いになったのもその家族による。


「――――そんなことが……」


「それももう昔の話。私は今、幸せ」


 エスとメグにそんなことがあったなんて、想像もつかなかった。

 けれどそれを聞いたところでエスの性格は理解できない。

 あの時のエスは、奴隷として扱われてきた自分の苦しみを他人に押し付け、必要がなくなったら処分するといった歪んだ性格になっている。

 それではあの家族と同じではないのか?

 いろいろ考えようと思った斎川恭香だが、これ以上考えるのはやめた。

 と、今更自分の昔を思い出そうとした斎川恭香だったが、あのレストランから昔の記憶が薄れて思い出せない。


「(思い出せない……? でも、以前はお母さんとお父さんと沖縄に行ったって記憶を――――)」


 いくら思い出そうとしても、斎川恭香の父親の顔も母親の顔さえも思い出せなかった。

 それどころかレストランから出た以前の記憶が、すべて薄れて思い出せないのだ。

 何かがおかしい。

 何度も世界をやり直して昔を思い出せなくなったのか?


「(そういえば、なんで私と区宮だけが記憶共有をしているんだっけ?)」


 そもそも死んだあと記憶が喪失して、世界をやり直すなんてことはどういうことであろうか。

 死んだ者が記憶共有するといった仮説をたてたとして、そうなった場合区宮は今までに死んだことがあっただろうか。

 斎川恭香の目の前で息絶えた姿は見ていない。

 それに死んだ者といった場合、数多くの人が記憶共有しているはずであるがそんな様子はなかった。

 昔の記憶の消失、記憶共有、一度も死んでいない区宮、死の世界、脱出。


「(もしかして……)」


 まさか、と斎川恭香は顔を青ざめた。

 “それ”は斎川恭香が生きてここから出ることができない、という答えと似たようなものであったのだ。


「どうしたの?」


「え? なんでも、ないわ」


 斎川恭香の声は明らかに震えていたがメグは追求しなかった。

 それからは黙ったままただひたすらに歩く斎川恭香。


「(そ、そうだ。唐木(かつらぎ)――――唐木啓悟さんの弟って)」


 現実から逃れるように、斎川恭香は三十以上の記憶を思い出し忘れようとしていた。

 記憶を探っているうちに唐木さんの弟に『ショウ』という高校生がいることを斎川恭香は思い出したのである。

 唐木さんの弟が今いる高校生なのかは、本人と直接会わなければどちらもわからない。


「さっき思い出したことだけど、唐木啓悟さんっていう私の知人が――――」


「そ、それ、俺の兄です!」


「――――え、本当にお兄さんなの!?」


「俺の名前は唐木将(しょう)って言うんです!」


 まさかの唐木さんの弟であった将。

 斎川恭香はそれを聞くと、すぐに足を走らせた。


****


 腕を負傷した区宮は紗依さんたちのところへと向かう途中、突然頭の中に聞き覚えのない声が聞こえ立ち止まっていた。


「――――お前は誰だ」


『俺はお前、そしてこの世界の創造者』


「どこから話しかけている!」


『まさか自分自身を忘れているのか?』


 全く聞き覚えのない声は脳に響き、『俺はお前』と区宮のことを自分だと話す。

 さらにこいつはこの世界の創造者とまで言っている。


『まあいい、お前に秘密を教えよう。この世界を創造したのは俺であり、お前だ。世界の創造者であるなら、人間の一人や二人くらい生き返すことは可能だろう? いや、つくることですら簡単だ』


「お前は何だ、創造したってどういうことだ! 意味わからねぇーよ!」


『……一日、あと一日後にこの街だけが消滅しはじめる。脱出できなければ、俺もお前も死ぬ』


「は!? どういう――――」


 質問を投げかける前に脳に響く声は消えていた。

 脳に響いた声が自分は区宮で区宮は自分だと言い、さらには一日後に街が消滅しはじめると予知のような言葉、脱出できなければ死ぬなどとわけのわからないことを言い残したが、はっきりいって疑問しか残らない。

 区宮はその場で眉間にシワを寄せるしかなかった。


「(創造者……俺が、か?)」


 不意に腕を見てみると痛みは消え、傷はすっかり治っている。

 それを見た区宮は恐怖からすぐにその場から立ち去った。


****


 斎川恭香は見覚えのある警察署前まで来ると、後ろからぞろぞろと仲間が走ってくる。

 相変わらず拳銃などが散らばっているが、そこは無視して警察署内へと入っていく。

 迷うことなくあの場所へ足を運ぶと彼の後ろ姿が見えた。

 将がその警察官の後ろ姿を見ると彼に駆け寄り、


「兄さん!」


 兄弟の感動的再会シーン。

 彼も将の声を聞き、驚きながらも厳格そうな顔が崩れていった。


「しょう、将! よかった……生きていたのか……」


「兄さん……兄さん!」


 感動的な再会シーンであるが、斎川恭香は一つ重要なことを忘れている。

 斎川恭香が唐木さんと出会った時、屍が後ろから襲いかかってきたことを。

 一歩一歩近づく不気味な足音。

 それも不規則で、止まっては歩いて止まっては歩いて……の繰り返しである。

 扉の近くまで迫った足音に気づいた斎川恭香は、人差し指を口にあてながら小声で「静かに」と言い、拳を構える。

 冷や汗が頬をつたい、落ちたと同時に部屋から出て殴りかかろうと腕を上げた時、見覚えのある顔が視界に入った。

 瞬時の判断で拳を止めると、コンビニ制服を着た目の前の男性が尻餅をついて目に涙を浮かべ、過呼吸になりながら斎川恭香を見ていた。


「あ、あああああ……ぁ」


「ま、守太!?」


「い、命は、命はとらないでください!」


 仲間の全員が部屋から顔を出し、安全だとわかったのか一人ずつ出てくる。


「安心して、私は殺したりはしないから」


「そ、そうですか……よかったです」


 どうしてここに、と斎川恭香は首を傾げてしまう。

 選択肢が変わった今、運命が変わることなど気にはしないが、どうして守太がここにいるのか気になっている斎川恭香。

 守太のことであるから、屍には出会わずに警察署まで来てしまったのだろうが、一体なんのために来たのだろうか。


「ところで、何故僕の名前を……?」


「守太を知っているからよ」


「え、まあ、確かに知らなければ知らないですよね……?」


 その後、守太にも説明だけはしておいた斎川恭香。

 守太が少し阿呆だと知っている斎川恭香はなるべくわかりやすく話したが、どう理解したかは本人の理解力による。

 以前のメンバーを集めるとなると残りは浜島一六と武藤桜華の二人。

 区宮に何が起きているか知らない斎川恭香たちは、警察署をあとにし次の場所へと移動する。


To be continued....

守太「解せぬ」



さて、再び作者の「予想より斜め上をいく」という内容となりましたが……。


多分次回予告~


区宮の脳に響く謎の声、何故か治った傷、区宮=自分と言った創造者、それは一体!? 超カットしまくっている物語に最終話はおとずれるのか!?


ではー

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