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Dead end world.  作者: NPTNs
区宮志悠編
3/34

生存者

男、区宮くみや志悠編。

プロローグ2の主人公。

 わけのわからない人間たちから逃げ切り、家に帰る為に街の中心へとにかく走った。しかし街の中心に行くほど、さっきの人間のような奴らが多く見かける。


「(俺が家を出た時はまだ賑やかだった商店街も、あの人間たちで溢れてやがる……)」


 今この状況がどんなに危険かわかっておらず、大切な荷物を持って逃げたかった。別の言い方をすれば、自分の命は物と同じ価値になっている。

 気がつけば、非常に狭い路地へと足を踏み入れていた。ここら辺は住宅密集地で曲がり角が多く、それはつまり、アイツらに出くわす可能性が高くなるということ。が、その時、後ろから猛スピードで此方に向かってくる暴走車が一台。こんな密集地帯で逃げる場所などほとんどない。


「(おいおい! 嘘だろ!?)」


 ここで死んでたまるか、と瞬時に周辺を見渡す。

 やはり住宅密集地では逃げられそうな場所は見つからず、徐々に鼓動が早まる。すると幸運にも、家と家の隙間に入れるスペースを見つけた。

 ちょうど光が差し込まない薄暗い場所で奥は全く見えない。しかしここで立ち止まれば、命はないだろう。

 迷った末、咄嗟に走り薄暗い隙間へと体を埋もらす。それからすぐに暴走車は、奥の一軒家に衝突した。車の前方は衝突により潰れただろう。それと一緒に、運転手も無残に原型を留めてないはずだ。


「危なっ! まさか、あの車の運転手がアレになってないだろうな?」


 ひとまず危険は回避し、再び歩きだそうかと思った時。後ろから唸り声が聞こえた。

 背中は一気に冷えはじめ、額から汗が落ちる。

 後ろに振り返ると、血が巡っていない顔が真正面に現れた瞬間、両肩を掴まれて襲われた。


「っ!」


 突然のことで足元のバランスを崩し、上に奴が乗る形になってしまう。

 すぐさま顎と首元を掴み顔を遠ざけるが、力が強すぎる。ところが今は顔を遠ざけるのが手一杯で、身動きは取れない。


「誰か! 助けてくれ!」


 いるかもわからない生存者に必死で助けを求める。しかしその声を聞き、ぞろぞろとアイツらが集まり始めた。


「(マジかよ……)」


 そこでとうとう、死を覚悟してしまう。まだ死にたくないのに、助かる保証がない。


「誰か! 誰か助けてくれ!!」


 それでも諦めは悪く、危険を承知で叫び続けた。だが次第に手は疲れ始め、徐々に顔が近づく。


「や、めろ!」


 抵抗虚しく、耳の上部分を奴にもっていかれた。


「ぅ!!」


 耳からの出血はさほどではないが、激痛をともなう。その時、近くで何かを叩きつける音――――否、叩き割るような音が聞こえる。


「大丈夫ですか!?」


 視界には中学生ほどの少女が鉄の棒を両手に、アイツらの頭を叩いていた。

 制服は既に血まみれになっている。この光景を見た人間は普通、恐怖を覚える。しかし、少女が凛々しく見えた。

 周囲の奴らを殺して、すぐ此方に駆け寄り上の奴も殺した。


「大丈夫ですか?」


 再び同じ言葉を至極冷静に投げかける少女。


「ああ、今は大丈夫だ。ありがとう助かったよ」


 小柄の少女に感謝すると同時に、幼い女の子に助けられたことに恥じた。


「いえ、お構いなく」


 礼儀をまきわえ、しっかりした少女だ、と感心してしまった。

 それから程なくして少女の友人と思わしき女子四人と男子三人が現れる。一人の男子は俺の耳を見てから、突如こんなことを言い出す。


「お前さ、(ゾンビ)に噛まれてないよな?」


 先程の少女と比べ、年上を敬う気がない言葉はいいとして、『屍』という言葉。状況から察するに地面に倒れている奴らのことだろう。

 そのことを理解して質問には答えた。


「まぁ、さっき耳を食われたな。んで、それがなんだ」


 言葉を聞いた瞬間、全員が険しい表情を浮かべ始める。顔は明らかに嘘をついていない。つまり、食われたことに意味があるということだろう。

 険しい表情のまま先程の少女の口が動いた。


「私たちが言う屍とは、肉だけを求める死者のことを言うのですが。屍に噛まれた人は体内に、あるウィルスが回り始め数時間後には感染してしまいます。つまり貴方は、そのウィルスを殺す注射を打たないと屍になります」


 最後まで聞いたが、少女の説明は理解し難い。説明が下手ということもあるが、何を言いたいのかはっきりしてないことが原因だろう。


「えっと……すまないけれど簡単に説明してくれないかな? 流石によくわからないんだ」


 俺の言葉に困惑する少女。

 何かを話し合った結果、年上を敬わないあの男子が代表に。


「いちいち説明してられねーんだよ! お前はそこの奴らと同じになるってことだ。いいか? 奴ら屍に噛まれると感染する。感染して数時間経つと体に異常がではじめ、やがて奴らと同じ屍になるんだよ!」


 説明してられない、と言った割には詳しく教えてくれた。しかし話が本当だとすると俺は今、大変な状況にある。


「ちょっと待ってくれ……さっき言ってた『ウィルスを殺す注射』を打てば治るんだろう? なら、それはどこにあるんだ?」


 冷静に言ったつもりでいたが、明らかに声は震えていた。そこで男子は単刀直入に「知らねーよ」、と言葉を放った。

 口が半開きになる俺を見て、男子はそっぽを向く。それを見て、先程の女子が、


「あの、それなら在処を知っています。私の父の会社にいくつかありますので、そこに行きましょう」


 その会話を聞いた男子は、何故か舌打ちをする。何かを企んでいたのだろうか? そんなことよりも『ウィルスを殺す注射』、を手に入れる為に行かなければならない。

 俺は首を頷かせた。

 噛まれてからおよそ五分、今のままなら余裕で間に合う。


「わかりました。では案内します」


「……ぺっ」


 男子は俺を睨んで唾を捨てた。

 なんとなくだが、この男子は少女のことが好きなのだろう。

 少女が先頭で歩き出し、俺たち八人も歩き出す。

主人公いきなり噛まれました。

これからの展開をお楽しみに。


10/17 修正

12/02 修正

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