表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dead end world.  作者: NPTNs
第二章
27/34

殺意の消失・冷める身体

「区宮志悠――――」


「――――ああ」


 今に至るまで斎川恭香を殺し続けた区宮志悠の目には、流れ出るはずのないものが頬を伝った。区宮志悠にとってそれは、“悲しみ”からきたに違いない。

 ところが斎川恭香はそれを理解するどころか、区宮志悠という人間を理解することができなかった。なぜなら斎川恭香が思い出したすべての記憶の中には、三十以上も殺されたリアルな映像も鮮明に残っているのだから。

 斎川恭香は拳を構えた。


「だいたいはっきりと思い出したわ。ここがどんな世界で、貴方が誰で、未来で何が起こるのか」


「っ……」


 反論はしなかった。ただ唇を噛みしめ、悔しそうな顔つきをする。

 斎川恭香にとっての未来は、例え数十億通りの選択肢があったとしても変わることがない。必ず、区宮志悠という男……否、区宮志悠という人間にゲームオーバーを告げられていた。


「ふぅ、私は今から未来を変えるわ。この手で」


「ま、待ってください!」


 皆が黙って見ている中、一人の少女は斎川恭香の前に立ちふさがる。


「桜――――じゃないんだったわね。これは私と区宮の問題よ。口出しするなら、容赦はしない」


 少女の目の前に立っている人間は、殺意とかそんな言葉では言い表せないオーラをまとっていた。

 少女は震えた。目の前の人間の皮をかぶった化物に。


「確かに私には、貴方の言っている言葉はちっとも理解できません。けれど今はここから脱出する方法を、考えなければならない時ではないのでしょうか!」


「――――だからそのために、私は区宮志悠という人間を殺さなきゃならないのよ」


 その発言に誰も口をはさめない。しかし唯一それに対して、殺意を向けられた区宮は……笑った。


「な、なんで笑っているのよ!」


「俺が斎川を殺し続けて得られたのが後悔で、斎川が得たものは憎しみや殺意。でも、斎川に死が訪れた数秒後にはすべてが消えた」


「何が言いたいのよ……?」


「別に何も。俺を殺したいなら好きにすればいい。それで未来が変わるなら」


 何も返事をせず、構えた拳を力強く握った。

 心臓の鼓動が早くなり、呼吸は荒げ、頭痛が起こる。


「(くそっ……いざ殺そうと思うと、苦しくなるわ)」


 三十以上も繰り返してきた斎川恭香に、斎川恭香は苛まれた。

 彼女たちは区宮志悠によって殺されたが、全員が全員死ぬ前に思ったことがある。

 『必ず仲間を助ける』、と。

 斎川恭香の足は徐々に軽くなり、一歩ずつ区宮志悠へと向かっていく。その時、一人の中学生男子が叫んだ。


「おいお前! 後ろに屍がいるぞ!」


 咄嗟に区宮は振り向いた。

 目の前には血色の悪い顔、そして区宮の記憶の中で再生される現実的な悲劇。その悲劇が残り数秒で始まりを迎える。


「(記憶が戻ったのに! またあの悲劇を繰り返さないといけないのか!!)」


「区宮っ、避けろ!」


 今起こっている出来事は、傍観者たちからはたった数秒のことだ。だが、斎川恭香と区宮志悠が見る世界は違った。

 つまり、終わりエンディングの選択肢を選んだということである。

 屍の顔は陥没し、顎の骨は外れた。それでもまだ向かってくる屍に対し、拳で風を切りながらこう言い放った。


「このモヤモヤ、どうにかしなさいよっ!!」


 首が九十度曲がるとその場で倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。

 斎川恭香が振り返り区宮の元へ歩くと、肩に軽く手を置き耳元でささやくように、


「変なモヤモヤが解消するまで、生かしておいてあげるわよ」


 そんな優しい透き通った声を聞かせて、肩から手を離し、歩いていく。


「斎川……」


 区宮は再び目から一粒の感情を落すと、皆が心配そうに駆け寄った。


****


『――――っ! 何で、何で変わっていくのよ!』


 耳に手を当てた美女は、何かに対して怒りの感情をあらわにした。

 近くには無数の屍、まるで屍たちを操作コントロールしているかのようにも見える。


『まあ、でもいいか』


 軽く開き直ると屍たちに指示をおくる。


『間違っても、私を攻撃するなよ。早く散れ』


 ポケットからハサミを取り出すと、美女は長く美しい髪を一気に切りはじめる。

 美しい髪は地面に落ち、彼女は口を歪ませると綺麗に並べられた白い歯が見えた。


『グッドエンドましてやハッピーエンドなんて最高に虫唾が走る終わり方、絶対にさせてたまるか……奈落の底に突き落としてやる』


 先程まで快晴だった空に何の前触れもなくどす黒い雲が重なり、太陽の光は遮られた。

 空が薄黒く染まると、今年一番の冷たい雨が降り始める。


****


 雑音のように雨が激しくなると、それに混じって轟音とともに一つの閃光が空から降りそそいだ。


「ひゃっ!」


「きゃあっ!」


 近くにあった区宮の自宅に避難していた斎川たち。そのうち、中学生の少女たちは轟音に声をあげた。


「だ、大丈夫だよ紗依ちゃん! 俺がついてるから!」


 慰める男子もいれば、困惑しながら突っ立っているだけの男子もいる。

 意外にも、シェフ二人は全く動じていなかった。


「こりゃ酷い雨だな。あ、風呂沸かしてあるから入りたい人入って……って、着替えないんだっけ」


 突然の雨に、不幸にも全員がびしょ濡れである。

 男子だけなら区宮の着替えを借りるということもできるが、女子たちにはあまり勧められない。


「んー、どうするか。男は俺の着替えで十分だろうけど」


「皆が風邪を引くより、区宮の着替えを着たほうがいいと私は思うわ」


 斎川恭香が喋るとシェフ二人から冷たい視線が浴びせられる。

 そのことに斎川恭香は鼻をフンッと鳴らし、嫌そうな顔をして二人に言う。


「いつまで私を遠ざけるつもり?」


「お前は人殺しだ! 平気で人を殺す奴と一緒にはいたくない!」


 屍について事情を知らないのは、シェフ二人と区宮の親友だけである。

 まずはそのことを話さない限り斎川恭香を遠ざけるだろう。


「そう、ならそうすればいいじゃない。貴方たち二人が屍に襲われても、私は助けなんてしないわよ」


「おい斎川」


「……わかってるわよ。こういう人間ってあまり相手にしないから苦手なのよね」


 一つため息をつく。

 すると、シェフと斎川恭香が口を開けたと思ったら、


「ハックションッ!」「ヘックチッ!」


 同時にくしゃみをだし、二人とも沈黙する。


「ま、まあ、とりあえず風呂に入ってきたらどうだ? 二人で――――」


「な! バカじゃないの!?」「なんでですかっ!?」


「じょ、冗談に決まってるじゃないか!」


 シェフは赤面しながら、再び沈黙して風呂場へと足早に向かう。

 近くでは先程の中学生の女子が「一緒にお風呂入る?」、と言うと男子は赤面しながら気絶した。


****


 一人のシェフを除き、男子グループと女子グループと分かれて風呂に入って、約一時間ほど経過した。

 雨は未だおさまらないまま、屍についてを含め、斎川恭香と区宮志悠の記憶について話し始める。


「私と区宮はこの世界に来る前っていうのかな? とにかく、三十以上の世界でここから脱出しようと生き延びてきたの……って、もう質問?」


「あの、この世界に来る前っていうことは、貴方がた二人は別世界からやってきたということですか?」


「違うわよ」


「――――??」


 出だしから少女の頭は混乱し、理解することができなかった。それは少女だけでなく、他の皆もまた同じことである。


「そうね……私と区宮は、別世界の私たちの記憶データを共有しているの。まあ、ある意味別世界から来たって言ってもいいのかしら?」


「おいおい、どっちだよ」


「どっちでもいいわよ! で、屍についてだけど――――」


「あの、屍についてでしたら私たちも知っています。と言いますか、屍を知っているのは私たちしかいないと思っていたのですが……」


「あ。そういえば、俺が紗依さんに教えてもらった言葉だっけ?」


 それは以前からの記憶、区宮が住宅密集地で屍に噛まれ時に助けてくれた少女。しかし助けられたにも関わらず、区宮は見殺しにしてしまった。

 あの時の胸の痛みが微かに起こる。


「あ、いえ、あの、私たち初対面のはずですが――――」


「おい区宮とか言うお前! 紗依ちゃんを困らす――――なっぁ……」


「お前は相変わらず変わらないな、拓斗」


 区宮が優しく頭を撫でると、拓斗という男子は目をパチクリさせ、声を漏らした。

 うにゅ~、という感じに気持ちよさそうにすると、区宮は頬が赤くなる。こうして区宮は『ショタコン』に目覚めてしまった。


「って、いつまでやっているんですかー!」


 紗依さんという少女が止めに入ると、我を忘れていた拓斗と区宮が目を覚ます。


「ふ、不覚をとった!」


「な、なあ。もう一回撫でさせてくれないか?」


「区宮、話が脱線どころか、変態の線にいっちゃってるわよ?」


 紗依さんが「大丈夫!?」、と拓斗をボディタッチしまくっている。


「はぁ……まあいいわ。屍というのは、屍ウィルスに感染した人間のことを言うの。一度感染したら、はっきり言って助からないし、屍になった人間は、生存者を喰って仲間を増やす」


「あの、助かる方法が一つだけあります……拓斗、大丈夫?」


「あ、ああ……助かる方法ってのは、二時間以内に抗ウィルス剤を打てば――――って近づくなお前っ! その手は何だ!?」


「うひひ、あと一回だけでいいからさぁ!」


 区宮と拓斗がじゃれている光景を見ると気色悪いが、なぜだか全員(紗依さんを除き)和んでしまう。

 シェフ二人も顔が引きつってはいるが、嫌そうな顔はしていなかった。


「ま、そういうことらしいわよ? ここまで聞いて質問、ある?」


「――――仮にその話を信じて、どうしろってんだ」


「勿論、殺られる前に殺るしかないわよ」


「人を殺せっていうのか!?」


 その一言で場の空気は一気に冷めた。

 シェフは少し目を背けどうしようもなく、ただ泣くことしかできない。

 もう一人の弱々しいシェフはそのシェフの手を握る。


「貴方たちにとって屍の見た目は人間かもしれない。でもあいつらは化物よ。例え骨を折られても、心臓を撃たれても、微かに痛みを感じるだけ。死にたいのなら叫べばいい、死にたくないのなら殺しなさい」


 斎川恭香自身が体験した理性のある屍。それは心地の良いものではなかった。いつ自分が屍になるのかもわからず、痛みもないまま歩き続け、死んでいった記憶。

 彼は再び泣いた。それがどんな涙なのかもわからないまま、時間だけが過ぎていく。


To be continued....

長い……地味に長い。

いやー、あれですね。バイハザなのにゾーンビがでないって感じの作品ですよね。

なんででしょうね~

しかも笑いを取り入れちゃってるし……。感動シーンが感動できないというくだらない作品です。


というわけで次回予告???


たぶん仲直りしたかもしれないシェフと斎川。十三人の生存者はこのまま脱出できるか?

というかこの作品まだ続くのか!?

では~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ