H&I.Y……?
恭香はサブマシンガン,ショットガン,スナイパーライフルに一切興味を示さず、まるで獲物を狩る虎の如く一直線にハンドガンへと足を運ぶ。
「こ、これが……あノ有名なハンドガンたちナのね!!」
鬼ですら逃げ出しそうな巧み笑いが、周りの空気を一気に冷ました。特に守太に至っては、若干怯えている。
浜島はというと、銃について何も知らない守太に自分の持っている知識を分け与えていた。
「守太と言ったか、お前さんは銃についてどこまで知っておるのじゃ? そうじゃの……お前さんが知っている銃の名称を言ってみろ」
「え……名称、ですか? AK47と……ガ、ガバガバタント?」
「阿呆んだらああああああああああ!! なんじゃガバガバタントってのは!? お前さんはナメておるのかあああああああああああああ!!?」
怒声を上げ、冗談二割で叫ぶ浜島。しかし怒鳴られることに慣れていない守太は、既に泣きそうだった。
「……お前さん、そんな弱々しいのによく生きられたものじゃの」
んんっ、と一つ咳払いをし、今の言葉を取り消すように話し出す。
「簡単に説明しておくが……ハンドガンは扱いに慣れていない初心者でも扱い構造の武器、サブマシンガンはアサルトライフルよりは劣るが連射性は優れておる。ショットガンは射程は短いものの破壊力が桁外れに高い。スナイパーライフルは連射性はないが、精度を求めたい場合はこの銃を選ぶとよい」
「あ、あの。今更思ったことがあるのですが、こんなに沢山の武器を手に入れられるのに、僕も知っているAK47などの武器はないのですか?」
その言葉を聞いた浜島が固まった。
背中を向けていた浜島は、首だけ守太に振り向くと、
「そうじゃよ。わしはAK47を手に入れられない老いぼれ爺じゃ! 何か文句があるのか!? 『AK47は来年手に入れよう』と言い続けた結果、この年になってまだ手に入れられんのじゃ!!」
一体何年間言い続けた結果ですか、と守太は思ったという。
一方、恭香は舐めまわすようにハンドガンをじっくり見ていたが、途中で何かを見つけ、眉間にシワを寄せていた。
「(何コれ……H&I.Y97A07? こんな名称の銃ハ見たことないわ)」
ベレッタ,シグ,グロッグなどさまざまな有名の武器の中から、見たことのないハンドガンが出てきた。他にもいくつかあり、H&I.Y02A02,H&I.Y08A12,H&I.Y11A19,H&I.Y15A28とすべて『H&I.Y』の名称がつけられている。
「(全く見たこともなイ銃だわ。この銃を浜島はどこデ?)」
ドイツの銃器メーカーであるH&K(ヘッケラー&コッホ社)の名称は知っている。しかし『H&I.Y』については、名称どころかそんな会社があることすら知らない。
ハンドガンをこよなく愛す(?)恭香としては、『H&I.Y』を知らずにはいられなかった。そのハンドガンを一丁持ち、浜島へと詰めかける。
「浜島。この『H&I.Y』ってなんナノ」
「なんじゃ? ぶしつけじゃの。いや、元々ぶしつけじゃったか」
「そンな無駄話はいいの。これハなんなの?」
浜島流にギャグを言ったつもりであったが、かなり真剣に返され、仕方なく答える。
「お前さんは知らないのか。それはハマージルマ&イチーロック・イエ兄弟が研究に研究を重ね、作りあげた五丁のハンドガンじゃ。『H&I.Y』に続く名称は、何年何月何日となっている。その97A07は、一九九七年August(八月)七日ということじゃな」
ふぅん、と鼻で返事する恭香。しかし何か引っかかることがあるらしく、顎に手を当てながら浜島を睨む。
「なら、ソのハマージルマ・イエさんとイチーロック・イエさんとはどこノ国の人? あト、その二人とはどこデ出会って、五丁のハンドガンを買ったもしくは貰っタの?」
「そ、それはの~」
恭香からの視点から浜島を見ると浜島の目は左上を向いていた。つまり浜島からの視点から見ると、浜島は右上を向いているということである。
「(心理学って面白いワネ……フフフ……)」
浜島が必死に考えている間、恭香は心の中で悪魔のように笑っていた。
「イエ兄弟は、アメリカのコロラド州に住んでおるのじゃ! そこで、えーと、なんじゃったかの~銃器? そう、銃器を専門とする研究をしているのじゃ。わしはそこで二人と出会い、会話をしていたら気があっての~五丁全部貰ったんじゃ!」
「へー。アメリカに行ってイタのよね? なら、英語は余裕デ話せるでしょう? What is your favorite gun?(あなたのお気に入りの銃は何ですか)」
「ぬるいわい! Handgun!(ハンドガン!)」
恭香は英語はそこまで得意ではないらしく発音はあまり良くなかった。
浜島は恭香の質問を理解したようできちんと答えた。まだ会話としては成り立っている。
「Do you hate guns?(銃は嫌いですか)」
「う……Gun!(銃!)」
恭香の問いかけに浜島は『Gun』としか答えていない。
恭香はさらに追い討ちをかける。
「Can you speak English?(英語を話せますか)」
「い、YES!(はい!)」
「Are you idiot?(あなたは馬鹿ですか)」
「No……YES!(いいえ……はい!)」
「そウ。次から浜島は馬鹿って呼ぶことにスルわ」
「What!?(なに!?) I understand!(理解する!) Be Quiet!(静かにしなさい!)」
「Be quiet(静かにしなさい)か。わかっタそうする」
恭香が静かにすると浜島はいきなり怒声を上げ、
「Be quiet(静かにしなさい)ってなんじゃあああああああああああああああ!! わしは英語できないんじゃあああああああああああああああ!! アイ キャンノット スピーク イングリイイイイイッシュ!!(I can not speak English. 英語が話せない)」
「なラ最初から嘘つかなければいいジャない」
しまった、という表情で冷や汗を額に光らせながら固まる浜島。そのまま頭を抱えて座り込んでしまった。
「マあ、私の英語は間違っていると思うから、外国人の方ガ聞いたら『Pardon?』って何度も聞くワよ」
「そこではないと思うのですが……」
いつの間にか近くにいた守太に驚く恭香。それに何故かよしっ、とガッツポーズをとる守太であった。
腰の関節を鳴らして立ち上がり、一つため息をついて浜島は話す。
「はぁ……『H&I.Y』というのは、わしの名前じゃ。H&Iとなっておる。Yというのは……Yは……『YES』のYじゃ……わ、笑うんじゃったら笑うがいい! わしは恥ずかしくなんてないぞ!」
「エ? つマり、これは浜島が、作ったの……?」
「す、すごいですよ浜島さん! 拳銃を作ってしまうなんて!!」
恭香は開いた口が塞がらない。何故かというと、浜島が作った拳銃は、いままでの銃とは違い握った時のフィット感がごく自然で、軽いにも関わらず反動が小さかった。装填数も十二発と申し分なく、現実では『ありえない』拳銃になっている。
「笑わないのか? わし、褒められているのか?」
「くっ……今回は私の負ケよ。このハンドガンは素晴らしすぎルわ」
恭香は何かに負けたようで悔しそうな表情を浮かべた。
子供心を忘れさせない満面な笑顔で浜島は喜ぶ。
「イエーイ! わしの拳銃はすんばらしい! イッシッシ!」
「「(うわ……凄く殴りたいワ(です))」」
二人にはストレスという名の重石が身体にへばりついたのだった。
****
「さて、もう決まったかの?」
呆れるほどテンションが高かった浜島は、すっかり元に戻っている。恭香と守太も真剣に選ぶ。
「僕は、このスナイパーライフルを選びます」
守太が手に持ったのは、レミントン M700。理由は、『精度が良いって言ってたから』らしい。
「ほほう。お前さんは『ワンショット・ワンキル』が好みなのか?」
「『ワンショット・ワンキル』って何ですか?」
「まあ、一撃必殺とでも言ったほうがいいかの」
守太はとうとう浜島の話を無視し、もう一つの武器を選びだした。少し悩んだ結果、ハンドガンのベレッタ M92を選ぶ。理由は、『格好良いから』らしい。
「流石は守太! ベレッタを選ぶなんて才能がアルわ!」
凄く嬉しそうに守太の手を掴む恭香。掴まれた守太は何の照れ隠しなのか顔を下に向ける。
一方、浜島は羨ましそうに指をくわえて見ているだけだった。
「あ、私が選ぶ番ネ。んー……シグザウエル P226と浜島のH&I.Y15A28ヲ選ぶわ。元々私はグロッグ17とコルトガバメントを持っていルから二つにしておくわ」
有名な拳銃のシグと浜島オリジナル拳銃H&I.Yを選び、グロック,ガバメントを合わせ計四丁を拳銃嚢へとしまう。
「お前さんはハンドガン縛りでもやっているのか?」
小声で言った声は恭香の耳によく響き、少し笑った。その笑みが何の笑みかはわからない。
「わしは、H&K MP5を二丁とやはりベネリ M3じゃな」
サブマシンガンであるH&K MP5とショットガンのベネリ M3を選択した浜島。
実は浜島が入手したベネリ M3は、唯一所持許可を申請した銃である。(※勿論違法所持は法律に引っかかり、罪にもなるため所持許可証は必ず必要である。)しかし何故、浜島がベネリ M3だけ所持許可を申請したかというと、初めて実物を見たときに魅せられ、『どうしてもこれだけは合法のもとで所持したかった』らしい。
「わしはこのベネリ M3だけあれば生きていけると言っても過言ではない!」
イッシッシ、と嘘も何もない真面目な笑顔でそう言った。
「(これデ準備は整ったワ。最初は桜の救出らしいけど……いえ、桜が生きテルって信じないでどうするのよ私!)」
もう一人の恭香に言われた言葉、『武藤桜華の救出』。嘘か本当かわからない未来で起こるかもしれない選択肢。未だ半信半疑のまま、桜を探すために校長室を出る。
「浜島、守太。最初は桜の救出を最優先スルわ」
「武藤さんは生きているんですか!? 救出って……まさか屍に襲われているということですか?! すぐに行きましょう!」
「ふむ。大切な仲間、ということかの。わしはお前さんたちについて行くだけじゃ。老いぼれ爺には行くところがないからの」
「アリガとう、浜島、守太。とりあえず、隣町に続く橋へと行クワよ」
二人は「なんで?」と言いたげに首を傾げそうになったが、首を頷かせた。
この時、恭香の心の中では、取れそうもない何かが心の奥で引っかかっていた。
To be continued....
英語ワカリマセン。間違っていたらすみません;
この回で多くの武器が出始めましたね~
さて、次回予告?
とうとう武藤桜華の救出へと向かう恭香一行。しかし、本当に桜は生きているのか!? もう一人の恭香は何を知っているのか!?
ではでは~




