閑話
「(ん? 何だか凄く長い時間誰かを待たせたような気がする……)」
冷えていると思われる手を少しさすった。この行為が意味があるか、と聞かれれば特にはない。
「(というか今更だけど、私と桜の口調が似すぎて区別つかないわ……)」
桜(短髪美女)を微かに見ながら、私は思った。
「そういえば、ここって意外に寒いわよね」
そう、桜が急に話す。
「まあ、季節はまだ冬だし、寒いのは無理ないと思うが」
区宮の言葉に桜は「どうにかしなさいよ」、と無理なことを言い出す。
「いや、無理」
即答。近くでは守太もちょこちょこ頷く。
「はぁ、私って寒いの苦手なのよね……。沖縄とか南国の国に行きたいくらいよ!」
まるで子供のように駄々をこねる。
ここが……否、この世界が現在屍と呼ばれる未知の化物の世界になりつつあるにも関わらず、のんきに沖縄に行きたいなど話している場合ではない。
「あのね――――」
言葉を続けようと思った時、私は昔の体験談について思い出した。あれは、たしか家族旅行で沖縄に行った時の話だ。
「何? 話でもあるの?」
「桜、私の沖縄での体験、聞きたい?」
「へぇ~、恭香は沖縄に行ったことあるんだ。教えて!」
ちなみに、桜が私のことを恭香と呼ぶのは、成り行きだ。
「わかった。区宮と守太も聞いておきなさい」
二人はただ頷いた。そして私は噛まない程度に、遅くもなく早くもなく、話し始める。
****
私が二十歳になった記念に、家族で沖縄旅行に行くことになった。
私は暑いところは好きではなかったけれど、記念だし、と軽い気持ちで旅行に行くことにした。
東京の空港から、二時間くらいほどで沖縄の空港へと辿り着く。沖縄は思っていたよりも暑くて、ジメジメしていて、とにかく暑かった(二回目)。
「あづ……」
「ここが沖縄か~」
私の言葉を無視して、お父さんが爽やかにステップをする。
「ちょっとお父さん(笑)背中びしょびしょ」
お母さんは汗で模様が出来たお父さんの背中を見ながら苦笑。
私だけうちわで仰ぎながら、予約しておいたホテルへと向かうことにした。
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空港からホテルまで意外と遠く、バスを乗り継いで一時間半ほどかかった。
ホテルに着いて、まずクーラーをつけて一休み。
「いやー、とうとう沖縄に来たって感じだな~」
「そうね~。早速、海に飛び込んじゃおうかしら(笑)」
両親は上機嫌で、お父さんはいきなり私服を脱ぎ始める。
「ちょっ、お父さんっ!」
咄嗟に目を隠そうとしたが、お父さんは私服の下に海パンをはいていた……。
「(子供かっ!?)」
そう、ツッコんでしまった。
「お父さん、子供じゃあるまいし……」
お父さんの行動にお母さんは若干呆れる。
しかし、お母さんも私服の下に既に着ていた。
「(子供かっ!?)」
思わず同じセリフを言ってしまった。
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両親のはしゃぎっぷりに負けて、私は休めないまま浜辺へと足を運ぶ。
「ほら見て、海綺麗ね」
「すっごいな~。流石は沖縄って感じだ」
私の目の前には、鏡のように光を反射させて、美しく輝く海面。そして、透き通る青い海水。果てしなく続く広大な空。それは「美」という言葉しか思いつかないほどだった。
「……綺麗だ」
思わず言葉がこぼれてしまうほど、私はその美しい青い海にみとれた。
「あら、恭香。顔がおかしいわよ」
「はっはっは、お先!!」
お母さんは私をからかい、お父さんの後をついて行く。他にも人はいたが、両親は気にせず無邪気に走り回る。
私はというと、五分くらい同じ景色を眺めていた。
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気がついたときには、既に両親は泳いでいる。
私は呆れながらも内心は凄く楽しく、沖縄に来てよかったと感じた。
急ぎ足で両親の元へと駆け寄り、私も子供のように無邪気に遊んだ。しかし、二十~三十分経過して、私は眠気に襲われる。
「ふわぁあ~あ……」
「あら、せっかく沖縄来たのにお昼寝タイム?」
「まあ、無理はないだろう。ここに来る前まで疲れてるようだったしな」
あっはっは、と豪快に笑い、お父さんは「少し休憩するといい」と言い残しお母さんと去っていく。
「(いや、そこはホテルに戻ろうよ……)」
それでも、若干暑いがポカポカする気温に、私は睡魔に勝てなかった。
浜辺に寝っ転がって、数分して寝てしまう。それが、どんなに悲惨な結果を生んだのか、知る由もない……。
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気がつくと、私は室内(?)にいた。
「(お父さんかお母さんが運んでくれたのかな? 重かったかな?)」
私はのんきにそう考える。その次の瞬間、私が横に動こうとした時、
「イッタァァ!?」
あまりの痛さに、叫んだ。
ガラガラ、とどこかの扉が開くと、
「恭香? だ、大丈夫か?」
「痛いの?」
両親がすぐに駆け寄ってくれた。
「(って……なんですぐ近くにいないかな……痛っぁぁぁぁ!?)」
再び背中と、今度は右手にも激痛が。
「痛いっ! お父さんっ!!」
「おお、す、すまん」
咄嗟に謝るお父さん。
「どういうことなの!? ってか、ここどこ!?」
それから私は、お父さんとお母さんから状況を説明してもらった。
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私が眠りにつき、二時間ほど経った頃。
両親は飽きたらしく、私のところに戻って、私を起こそうとしたが起きなかったらしい。恐らく熱中症であろう。
私はぐったりしていて(寝ていたのもあるが)、ずっと太陽の下にいたため、日焼けどころかやけどしていた。
両親はすぐ救急車を呼んで、今に至るらしい。
背中のやけどは砂浜の熱だと。
それから私は夏も沖縄も苦手になった。
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「――――ということなんだけど、どう? 沖縄なんて行きたくなくなったでしょう?」
「……いや、恭香、アンタ馬鹿ね」
「阿呆かもな」
「すみませんが、僕もそう思います」
「守太が初めて喋った!?」
私に変な視線が向けられた気がした。
「馬鹿だ」「阿呆だ」「ひどい……」
守太が一人、微かに泣いていた気がするが、私は無視をする。
「あ、ごめん。とりあえず、行きましょ」
この日、私の称号が「馬鹿で阿呆で変人な変な人」、と二回も変な人と呼ばれるようになった。
無駄話すぎてすみません;;
しかもこれが第一章の1話という(笑
更新亀みたいに遅くてすみませんっっ!
12/02 『青々とした』を『広大な』に修正。間違った言葉を用いてしまいすみませんでした。また、他にも一部修正。




