私と感染者と生存者
いつもより力がみなぎっている状態で……私は目覚めた。とても今の状況を把握できない。心臓を撃たれたはず、私は、死んだはず――――――――助かった? 心臓を撃たれて?
私は何とも感じない身体を起こし、少しふらつきながらも立ち上がる。しかし、生まれたての小鹿のように足元がふらふらして、どうにも思うようにうまく立てない。
不意に左胸を見たが、流れ出ていた血はもう固まって、痛々しい傷(胸を貫通)が残っている。ところが、いくら触っても痛くない。いや、それ以前に、心臓が動いていない。
「(待って、ちょっと待って。心臓が動いていない?)」
そんな時、私の視界の下に唐木さんの死体が見えた。頭に三発も銃弾を撃ち込まれ、即死に近い。
目が開きっぱなしの唐木さんの瞼を閉じ、手を合わせた。
「(私は一体……どうなってるの……?)」
心臓が機能していない点を考えると、奇跡的に生き延びた、なんてのはありえない。そして、脳に全く傷害がないことも考えると、答えは一つしか思いつかない。
私は、化物(屍)になってしまった、ということ。
しかし、おかしい。化物には理性がなく、肉を求める死者である。それが何故、私だけが理性を保ち、こうしていられる?
色々なことを考えているが、全くわからない。ふと、何かが近づく音が聞こえてくる。そこに現れたのは、唐木さんと私を殺した張本人の白衣の男だった。
「なっ!?」
驚いている、というレベルではないほど驚愕していた。それは後ろからついてきたオカマ(メグ)も口が半開きになっている。そして、近くにはコンビニ店員のような男性ともう一人男性がおり、美女と呼ぶに相応しい短髪の女性がいた。
「き、気をつけろ! あ、あれは屍だ! メグ、志悠、女、全員で――――」
「遅いわよ?」
「ぅぐっ!?」
七mほど余裕で離れていたにも関わらず、その一瞬で、私は白衣の男の場所に行き首を掴んだ。苦しそうにもがく白衣の男。
「ぅがぁぁぅ!」
「エ、エス!」
一人の男性(コンビニ店員じゃない方)が拳銃を構えた。しかし、発砲するも、私はそれを避ける。
「避けた!? ありえな――――」
エスと呼ばれた白衣の男の首を片手で掴みながら、その男性の腹を蹴り飛ばす。足加減はしたが、優に一mは飛んだ。
首を掴まれたエスは、必死に助けを求める。
「ぇ……メ……グェ……がすけ……てぐ……ぇ」
そこでようやくメグが動き出す。拳銃では効果がないと察したのか、体術で攻めてくる。だが、拳銃でさえ当てられなかった私に、体術ごときで当たるはずもなく、先程の男性と足加減以外は同じく蹴り飛ばした。ところがメグは諦めずに蹴り飛ばされた後、すぐに体勢を立て直して、その位置から拳銃を発砲した。だが、当たったのはエスの身体である。
「ぐぅぁぅ!! メゥ……グ……!」
そう言い、エスは恐らく窒息により死亡した。メグは、何故かその場で自殺を図った。
残るはコンビニ男性、短髪美女、幸薄そうな男性の三人だけだ。コンビニ男性は持っていた武器を落としていて、震えるだけなので害はない。残り二人は諦めていないのか、その場で拳銃を手放さない。
「二人がかりで攻めるわよ、区宮!」
「わかった!」
その合図で、短髪美女は私の左側に、区宮と呼ばれた男性は私の右側についた。俗に言う『挟み撃ち』だろう。
「(武器の構え方を見ると、美女の方はそこそこ扱いに慣れているわね。けど、男性の方は素人。そうなれば……)」
狙いは男性の方だ。そう決め、二人の気の緩まる機会をうかがう。傍から見れば、私を挟んだにらみ合いだ。
「(それはそうと、さっきからずっと私を見るコンビニ男性の目が気になる。けど、今はこっちに集中しなきゃ)」
私が一瞬気をそらす。その瞬間、短髪美女が発砲してきた。間一髪、頭部への命中は避けられたが、私の体勢が崩れ、二人が一気に攻める。
「区宮っ、足を狙いなさい、行動を止めろっ!」
その言葉を聞き、区宮という男性は集中的に私の足を狙い始める。しかし、素人が撃った弾は一発も当たらず、地面へめりこむだけだった。それをチャンスに私は一気に距離を縮め、今度は足加減せずに横っ腹を強打した。
「うぐっ!!」
肋骨の一本くらいは折れただろう。さほど苦痛はないと思われるが、うずくまっている。
私はトドメをさそうと足を振り上げるが、後ろにいた美女に攻撃を阻まれる。
「守太! 区宮を安全な場所に!」
ずっと震えていたコンビニ男性が、区宮のところへ駆け寄り、肩を貸して安全な場所に避難する。
私と短髪美女のにらみ合いとなった。
「私と一対一で勝負するつもり? 貴方なら私のことわかるでしょ」
「あんまり信じたくはないけど。アナタは私と同じ感染者。いや、アナタは完全に屍ね」
短髪美女は断言した。躊躇いもなく、私が屍だと。
私は既に死んでおり、今や理性だけで動いている化物(屍)である。
「でも、私は今でも理性があるわ。例え身体が死んでいても、脳は生きているって状態かしら? そこで提案だけど、今後生きていく上で契約を交わさない? 私は貴方たちを守る、貴方たちは私を殺さないって条件で」
その言葉に一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻したのか、
「あくまでもそれは、アナタが理性を保っているからって事じゃない。アナタが理性のない屍にならない保証もないし、色々怖いわ」
今まで気がつかなかった私の欠けた考えが、彼女の一言で補われた。なぜなら、私は化物だ。生存者でなく、死してなお肉を求め続けるあの化物だと。ようやく本当に理解した。
「そういえば、そうだったわね。私は化物だったわね」
「――――? いきなり何を言っているの。アナタ自身、自分で自覚してたんじゃなかったの?」
構えていた拳銃を下ろした短髪美女。遠くから見ていた守太と区宮は短髪美女を心配そうに見ている。
「それ、構えなくていいの? 私を殺すには絶好のチャンスだと思ったけど」
「契約云々言っていたわりには、死にたそうな発言ね。ま、アナタは元々死んでいるのだけど」
拳銃を構える様子はない。短髪美女も殺す勢いできていたわりには、全く殺そうとする気配が感じられなかった。契約のことを話したことが要因かもしれないが。
「攻撃する気配がないってことは、契約成立ってことでいいのかしら?」
「ま、結果は大体予想つくし、ここで死にたくないからね。でも、アナタが屍になった時は、躊躇いなく撃ち殺すからね」
美しすぎる女性はとても言動が残念だ。と私は心の中で思った。
少々ビビリながらも、残念系美女は握手を求めた。
「武藤桜華。コンビニの制服着てるのが守太恭助、もう一人が区宮志悠。桜華って名前すきじゃないから、桜って呼んで」
「わかったわ桜。私は斎川恭香。私が死ぬか、貴方たちが死ぬまでよろしく」
「ま、その前に私が屍になるかもしれないから、何とも言えないけどね。コチラこそよろしく」
十六時二十分を回った頃、私と感染者(桜)と生存者(守太、区宮)の契約が成立した。しかし、二人を納得させるのに十分以上は経過した。
アイディアはもらいましたが、書き手が最悪だとこうなりますね。
なんか、申し訳ありません;;
10/17 修正
12/02 修正




