表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリフト―TrifT―  作者: kishegh
第2章
61/85

そそり立つ岩壁

「見えたわよ」


先を行くマリッカが声をかけるので、その視線の先を見ると、不思議な光景が広がっていた。


「しかし、変わった地形だな」


「まぁ、幾つか理由があってね」


広い広い平原に、いきなり急角度の山がそびえる。いや、山と言うよりは巨大で鋭い頂を持った岩塊、それが平地の真ん中に鎮座している。


更に遠くには同じような山並みもあるが、明らかに仲間はずれの様に、山の頂だけを平地に移動させたような、違和感を覚える風景が広がっていた。


「思っていたよりも、小さいんだな」


「そうねぇ、ドワーフの数自体も少ないからね、あんなものよ」


「そうなのか、鍛冶をするには鉱石なども必要だと思うが…それもあそこで採れると言う事ですかね?」


「まぁ、その辺りも行って見ればよく分かるわよ。ちょっとしたお楽しみって所ね」


「そうしますか」


「それにしても、結局バイエルラインちゃんは保たなかったわね」


オーザムの町で依頼は取れなかったが、その次に寄った村でも依頼らしき物は無かった。やはり、先に通った人間が厄介事を片付けて行ったらしい。


その結果、直接のアルトの訓練を休み無く受けたバイエルラインは、今朝完全な限界を迎えた。今は、マリッカの荷物と共に馬に掛けられた状態になっている。


「よくもった方です。元から無理だとは思っていました」


「あら?そうだったの」


「ええ、よくやっています。俺などよりよほど才能がありますね。楽しみですよ」


「うふふ、いいお師匠さんね」


アルトは、やや気恥ずかしげに目をそらすと足を止めた。


「あら?どうしたの」


「少し時間をください」


「ええ、良いわよ」


アルトはその場に座り込むと、瞬時に寝息を立て始めた。少し戸惑ったマリッカだったが、馬から下りて休憩をしようと用意を始めた。固形燃料と薬缶で湯を沸かし始める。


しかし、その用意も終わらぬ内にアルトは目を覚ました。


「お待たせしました」


「あら?もう良いの」


「ええ、少なくとも集中力は回復しますしね」


「それじゃあ、お茶だけでも飲む?もう入れ始めているから」


「そうですね、頂きましょう」


2人はお茶を飲むと、出発しようとした。僅かながら残っていたお湯を、マリッカが捨てようとすると、アルトが呼び止めた。


「ああ、それちょっとください」


言われるままにアルトに薬缶を渡すと、寝ているバイエルラインにその湯は注がれた。


「起きろ。目的地までは直ぐだぞ」


熱湯にのた打ち回るバイエルラインを見て、マリッカは呟いた。


「いいお師匠?」



「顔だけでも拭いておけ、ついでに水分も補給しておけよ。非常食も適当に腹に入れておけ」


バイエルラインに手ぬぐいを投げてよこすと、アルトも水分と糖分の補給を終わらせる。既に、お茶を飲み幾分かの水分補給は済んでいるので、水飴を卵膜で覆った物を食べ、残っていたスープを飲み干す。


水筒の水で顔を洗い、軽く刀を見ると、アルトは歩き出した。


「あそこまでなら、後四半刻。さっさと行きますか」


「そうですね」


「バイエルラインちゃん、動じないのね。慣れてるの?」


「ちゃん付けは止めてください。師匠になるべく心は平静に保つようにと言われていますので」


「そう、それは良い事よね。ただ、まぁその動揺を与えているのもその師匠だけど」


「試練だと思っています」


「あらあら、まるで惚気ね」


「俺が好きなのは女性ですが?」


「師弟揃って冗談は通じないのね…」


少なくともアルト本人は、軽口を良く叩いている自覚があるのだが、それが他人に伝わりにくいのは、本人の自覚とは別問題である。



「天然の要塞ですか」


てっきり山の周りにあると思っていたドワーフの里は、その岩の中にある様だ。岩肌には洞窟が開いており、中で曲がっている様で、その先は見えていない。しかし、奥からの風の流れがあると言う事は、奥が開いているか、どこかに抜けていると言う事だろう。


「損な物騒な物じゃないわよ。入里制限はあるけどね」


「制限?」


「1回に5人まで。それ以上は入れないし、入れないわ」


「なにやら面倒な事ですか?」


「まぁ、そのあたりも説明してあげるわ。でも、まずはいらっしゃいね。ドワーフの里へ」


洞窟に入り、2つ角を曲がると中は大きく吹き抜けた空間が広がっていた。




読んでいただきありがとうございます。


御意見御感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ