見つめる瞳
第2章です。
閑話があんまり閑話になっていなかったので悩み中・・・
如何したものか。
今日は日差しがあって風が無いの。とっても温かくて良い気持ち。
お家の軒先に座ってるの。
「大丈夫か?」
影になったと思ったら目の前に男の人がいたの。
黒い服を着た黒髪のあんまり大きくない人と、同じ様な服を着た赤毛の大きな人。影になってちょっと悲しいの。
「大丈夫か?」
「如何しましょう?師匠」
「仕方が無い。一旦城につれて帰ろう。このままではどうなるか分からん」
「分かりました。ですが、町医者などに運んだ方が」
「さっきから誰も出てこない、声をかけても反応が無い。何か事情があるんだろう。関わりたくない様な、そんな事がな」
急に持ち上げられたの。少し痛いの。
痛かったけど、そのまま寝ちゃったの。
「どう言う事だ」
「王都の騎士団に所属している者と関係があるようです。申し訳ありませんが近所からの聞き込みではそれ以上は分かりませんでした」
「兵も騎士も使えないからか」
「俺だけですからね。まさか、メイリン達に手伝わせる訳にも行きません。フレッドの活動についていた者達にも今手伝ってもらっていますが・・・はかばかしくはありませんね」
「頭がいたい話だ。士気は最低だな」
「王宮警備隊を解体して一部を騎士に組み込んだのも影響しているようです」
「馬鹿の頭を幾つも作るように、命令系統を幾つも温存して如何する。他に方法なんて無いだろ」
「現在、王都の騎士団を束ねているリッパー・シャンプール団長も苦慮しているようです。何しろ、今までまったく交流が無く、訓練なども別物ですから」
リッパー・シャンプールか。能力はあるが、あくまでも命令に忠実で、王子を抑えることもできたはずだが、王からの命令が無いので動かなかった人間だ。悪くは無い、悪くは無いが、信頼して動くのは難しいだろう。
「現状騎士の数はおよそ300。しかし、警備兵は別で用意しなければならない。自治や騎士に全て任せるわけにも行かないからな、警備組織の発足は急務なんだが。そいつら自身の士気が低く腐敗していてはな」
机の上に書類の束を投げ出してため息を着く。
「何時までこんな書類にまみれた生活をしなくちゃならんのだ。将軍の言う有能な連中はまだ来ないのか?」
「見たいですね」
「お前が、投げ出した分も俺がやってるんだぞ。この馬鹿弟子が」
「俺がやったら8倍の時間が掛かりますよ」
「事実だから余計に腹立たしい。破門にするぞ馬鹿弟子」
深く深くため息をつく。
「しかし、将軍は俺の3倍、爺さんに至っては軽く10倍の仕事をこなしているからな。文句も言えん」
「フレッド様も、リヒテンシュタイン宰相の下で仕事を覚えているとの事です」
「爺さんの事だ、嬉々として教えているだろうよ」
「じゃったら、面倒な話を持ち込まず専念させて欲しいもんじゃの」
扉が開いて爺さんが部屋に入ってきた。
「ご教授の邪魔をして悪かった。が、爺さんの所の人員が使いたかったのでな。それで、どうだった?」
「お前さんの思った通りじゃよ。貴族の馬鹿息子、しかも嫡男でありながら、お家騒動にもなっておる。心痛は分からんでもないが、それで暴れるようでは先は見えておるの」
「では、こちらで如何にかしておこう。その馬鹿の名前は・・・」
「ここに全て情報を纏めておるよ。まぁ、後は任せたでの」
「爺さん」
背を向けて帰る宰相に、後ろからアルトの声がかかる。
「そんな事だけを言いに、態々来たわけでもないだろう?」
「ジギスムントに送った使者が帰ってきおった。しかし、様子がおかしい。後で見ておいてくれんかの?」
「分かった」
「うむ」
扉を閉めて、部屋から出た途端にリヒテンシュタイン宰相はため息をついた。
「さて、どうなるかの」
目が覚めたの、目の前に知らないお姉さんと綺麗な女の子がいたの。
お人形さんみたいに綺麗なの。
でも、本当のお人形さんみたいなの。
「お名前は?」
お姉さんが聞いてきたの。
「?」
「貴方のお名前は?」
「リルなの」
「そう、リルちゃんは痛い所とかある?」
「?」
「大丈夫?」
「痛くないの」
「そう、大丈夫なのね。良かったわ」
どうにも質問に対しての応答が遅れるというか。会話のテンポがずれている。
「私はメイリン、そしてこの子はシーラよ。よろしくね」
そう言った事に、特に反応は示さずメイリンは会話を続ける。
やはり、しばらく間をおいてから、リルはコクリと首を縦に振った。
ただ何もせず、まったく動かないまま日向に座っている二人を見つめるメイリンからは、ため息がこぼれる。
子供は、5歳か6歳の子供は、もっと活発に動き回って遊ぶ物だし、笑う物だ。何が楽しいのかも分からないまま、顔が笑みを作るのが子供だと言うのに。
この2人の少女、いや幼女には笑みが無い、動きが無い、感情が見えない。
再び深くため息をつく。
見守るメイリンの後ろから、部屋へ入ってきたバイエルラインが声をかけた。
「メイリン」
「バイエルライン…どうでしたか?」
バイエルラインは静かに首を振る。ゆっくりと大きく横に首を振った。
「では」
メイリンは息を呑み、静かに頭を垂れる。
「あの子にも両親はいない、今はとりあえずシーラと共に面倒を見ていて欲しいそうだ」
「分かりました。ですが…」
「師匠もフレッド様も宰相閣下も、そしてシュトラウス将軍も皆考えて下さっている。報いは必ず、報いは必ず下衆の上に落ちる」
ゆっくりと躊躇いがちに肩に手を置くバイエルラインは、それでもしっかりと肩を抱き、メイリンをなぐさめた。
「大丈夫さ」
それでも、辛そうに目を伏せるメイリンに、バイエルラインは如何したものかと頭を悩ませた。
元々、精神の機微とかその場の空気などについては鈍感な人間だ。当人もそれを自覚しているが、こんな際には一層それが悩ましかった。
それでも、自分の悩みも振り切るかのように、もう一度声に出した。
「大丈夫さ」
読んでいただきありがとうございます。
御意見御感想などお待ちしております。
誤字脱字の報告も、いつも何時もお世話になっています。自分でも頑張りますが、見つけられた方は教えていただければ幸いです。
追記・活動報告にも色々書き込んであったりします。見ていただければ幸いです。