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ドリフト―TrifT―  作者: kishegh
第1章
26/85

会議その一(二はまだ未定)

一寸長めです。


翌日、早朝から人を集めて、会議を始めた。とりあえずは、方策を決めるため、今回の義挙に参加した人間の、幹部だけで開催している。


「さて、昨日も話したが、まだジギスムント側からの動きはない。親書は送っておいたが、返事には早くても三日はかかるじゃろ。それまでに、できる事をしておこうではないか。」


議長を務める爺さんが話を切り出す。昨日、いや、もう今日既に、爺さんとは軽く話しをしておいた。俺は手を上げて、発言権を申請する。


「うむ、アルトから話があるようじゃの、では」


全員を見回すと、みなが頷くので話をする。


「さて、発言をさせていただく。今回の義挙で思ったが、兵士の錬度、構成、命令系統が、ダメだ。話を聞いただけでも、騎士団、近衛、各自警団等が入り混じり、命令系統がはっきりしない。自警団はともかくとして、騎士団と近衛は、一括して国王が管理すべきだ。統括者が居ない軍隊なんぞは、何の役にも立たないぞ。唯一見込みがあるのは、貴族が私の軍兵を持っていないことだな。そこだけは評価できる。そこで一応今居る、およそ1000人の騎士と近衛を、まとめて編成しなおす。概容はこれだ」


俺は、既に紙に書き起こして置いた文章を出す。



常備軍としての騎士軍を編成する。


騎士軍・常に武装し常備軍として研鑽を積む。


階級制度を一新、新規の体制下においては、階級の上下は、家柄等の一切の影響を受けない。そして階級の上下による命令は絶対である。


階級


騎士総将

騎士将

騎士団長

騎士隊長

騎士


騎士総将は総合作戦指揮、騎士団を総監する。騎士総長は、任意に副将を3名まで置く事が出来る。副将と、騎士将は兼責出来ない。副将の内1名を、兵站管理者として任命する。


指揮下に騎士将が6名 それぞれの騎士将に、騎士団長が2名から3名付く。騎士将は、任意に、1名を副官に任命する。騎士団長と副官職は兼責出来ない。


騎士団長の配下には、6名から7名の騎士隊長が付く騎士団長は、任意に副官を一名任命する。騎士隊長と副官は兼責出来ない。


騎士隊長は、自身も含めて10名で騎士隊を編成。隊員の中から副官を一名任命する。これを最小の作戦単位とする。


騎士隊は、1名の騎士隊長と、9名の騎士で構成されこれを原則とする。


騎士隊の中から、引退者もしくは、昇進、異動するものがある騎士隊は、該当者が移動する3ヶ月以前より訓練生を置く。訓練生を置き、一時的に11名で隊を構成する。訓練生は、先任者が脱退した時点を持って騎士となる。


引退した騎士は、引退前の階級を有し予備役になる。予備役の期間は10年。騎士総将が退役し、戦時召集された場合、現役の騎士総将の軍師、もしくは副将として就任する。その他の階級のものに関しては、随時差配する。


以上が騎士軍構成。総数はおよそ1000人。地方都市の警備の監督も彼らが行う。小さな村などは、青年団などで自警隊を組織しこれも騎士が監督する。


「これが、平時の編成だ。はっきり言えば、この国では国力の関係上、1000人規模の常備軍が限界だ。ちなみに、現在騎士や近衛に属している者にも試験は行うぞ。縁故などで入っている者も居るようだからな。何かここまで出質問は?」


バイエルラインが手を上げる。


「師匠、その階級は、どうやって決めるんですか?やっぱりそこも試験で?」


「師匠ではないが答えよう。騎士総長を、国王に決めてもらう。これは今後も、常に国王の権利として存在する。その後、騎士将までは、騎士総将が任命。騎士団長は、騎士将が任命する。そこから下は試験で決める。そういった具合だな」


本当は、下から決めていく方が好ましいのだが、現状そうは言っていられない。一番上のクラスはともかく、現場で動く人間は、きちんとしたから選んだ方が良いのだが。


「分かりました師匠」


「師匠ではないと言っている。まぁ、それは良い。次からは、実際の国家間戦争などが起こった際、戦時についての編成だ」



王を、軍元帥に任命。


騎士総将を、総大将に任命、大将とする。


騎士総将付随の副将を中将に任命。兵站管理者も同様。


騎士将各位を少将に任命。師団を指揮する。副官は大佐に任命される。


騎士団長を中佐に任命。大隊を指揮する。副官は少佐に任命される。


騎士隊長を大尉に任命。中隊を指揮する。副官は中尉に、それ以外の隊員は少尉に任命される。


各少尉の下に一般から徴募された兵士10名を配置小隊となす。



小隊11名


中隊90名


大隊600名~700名


師団1400名~2000名


予備役も含め、総軍1万名から1万3000名



「というのが、戦時の編成だな。このほかにも、規模に準じて、まぁ最大数では、3000人規模の兵站部隊も配置する。こちらのまとめは、騎士総将の副将の兵站管理者が、兵站部隊総指揮として任命される。最大で1万6000、これ以上だと国が傾く。国家の存亡というのなら後5000。その位なら搾り出すことは出来るだろうが、その後30年国に悪影響を残すと思え。以上だ、何か質問は」


フレッドが聞いてくる。


「それらの策を行うとして、どれほどの時間が掛かるでしょう」


「騎士総将さえさっさと決めれば、選別して編成までに1ヶ月。一通りの訓練をするならもう2ヶ月、そんな所だな」


「それでは貴方を、騎士総将に」


「ダメだ」


俺はフレッドの言葉を切る。


「それはダメだ、少なくとも、軍の大将には求心力、人格的な統率力が必要だ。何処の馬の骨かも分からない若造が、やれるものではない。士気が下がってしまう。士気の低い軍隊なんて、何の役にも立たない。仮にぼんくらでも良いから、国民の人気を集める様な者を使うべきだ」


「それでは貴方はどうするのです。少なくとも指揮官として動くんでしょう」


どうするべきか?教導はするつもりだったが。ある程度フリーで動ける人間がいたほうが良い場合もある。せめて、ある程度動ける人間が、後2人は欲しい。


「今のところ、保留だ。騎士将クラスか、騎士総将の副官クラスに入っていれば楽なんだが、自由に動ける人間がいたほうがいい場合もある。騎士総将を決めてから考える。誰か心当たりは居ないか?」


皆が考え込む。いや、爺さんは、何かを思いついているのだろう、静かに微笑んでいる。


「今回の骨子として、一般の兵士に渡す武器や防具なども、一括して国が管理するというのがある。今まで見たいに、貴族経由でやっていたら、何時まで経っても、横領と癒着がなくならない。だから、貴族に対して強く出れる、と言う条件にも合ってなければならないな」


自分で言っていても、難しい人材だな。封建社会にいるのか?そんな人材。


「シュトラウスはどうじゃね」


「「「おお」」」


皆が一様に手を叩いた。


有名なのか?



ヴェルギエール・シュトラウス、御年58歳、勇戦の猛将と言うよりは、鉄壁の智将、長い戦乱期において、幾度と無く国を防衛。ヴェスター宰相の友人であり、彼の死後表には出てきていない。国の重鎮、国家の将と言うよりは、ヴェスター宰相の守りであった。同じく友人であった先代の王が、何度と無く後進の指導を頼んだが、これを固辞、現在に至る。将軍任命中に、数度軍制改革を説くものの、受け入れられず。


「すごい人じゃないか。何でそんなのが在野で燻ってるんだ、ちゃんと国で囲っておけよ」


「まぁ以前は、かなり貴族の権利があったからな、疎まれていたんじゃよ。軍制改革についても、まぁそのあたりのことで頓挫してな。あの馬鹿王子が小心者で、貴族の権利を剥奪していたのが、今は幸いじゃな。それに」


それに?


「色々と有名な一族なのです」


言葉の尻をミリアが続ける。


「有名。どう言う事だ。歴史のある名家などでは無さそうだな、貴族と敵対していたと言う事は、成り上がりということか?」


「いや、八大家ほどではないが、シュトラウス家はかなりの家じゃよ。あくまでも、この国としてはじゃがな。そもそも、国が出来てから300年足らず。この国が出来てからの家ならば、歴史ある家等ではないの」


「まぁ、爺さんの歴史解釈は置いておいて。じゃあ、何が問題で有名なんだ、その家は」


「恋愛です」


はぁ?恋愛。


「なんと言うか、愛に生きる一族での。特に先々代などは、逸話が歌曲になっておるほどでの。大衆的には人気があるんじゃが」


「家柄や思惑、政略結婚や婚約などを乗り越えて、愛に生きるので、面子をつぶされた家が多くいるのです。しかも、代々優秀なものが多く、しかも、私心を持たずに国に尽くすと」


「つまり、あまりにも完璧がそろってる上に、打算で動かないから篭絡も出来ない。忠誠心はある上に民の人気も高い。しかも、面子はつぶすし、予定は崩すし、そういうことで疎まれていると」


静かに頷く。どうやら、有名な話のようだ。メイリンなどは、羨ましそうに目をきらめかせている。隣でバイエルラインが、やたらと身体を揺すっているが何なんだ?こういった話が苦手なのか?


「さらに言えば、さっきの歌曲にもなった先々代。こやつは、王族の姫、つまりは先王の姉君にあたる方を、降嫁しての。本来の婚約者じゃったのが、さっきも言った、貴族派閥の頭首の家、リューベック家の先々代。その後の嫌がらせは、今でも語り継がれるほどじゃったらしいぞい」


なにやら、いきなり下世話な話でため息しか出ないな。


「まったく、何処に行っても、腐れた貴族ってのは、かなわんな。それはまぁ、この際は置いとこう。爺さん、何か伝手はあるか、そのシュトラウス将軍に。いや、騎士総将候補筆頭に」


あごを撫で撫で、爺さんが答える。


「無い訳ではないのぅ。だが、どうやって口説く、王がやってもダメだったのじゃぞ。頼りのヴェスター宰相は、すでに神の御前じゃ、わしは、知ってはおるが、そこまで親しくしておった訳ではないしの」


「フレッド、どう思う?口説き落とせそうか?」


フレッドも他の者も考え込む。見込みは薄いのか。


「私も、シュトラウス将軍とは会った事があるが、優しそうな人だったからな、そんな風に、先王の頼みも断っていたとは知らなかった。とりあえず、話して見るしかないのではないかな?」


「いや、そんな弱気では、最初になめられたらお終いだ。少なくとも、初撃を決めない事には話にならん。爺さん、シュトラウス将軍の改革案ってのは、どんな物だったか知ってるか。それと、先王はどうやって頼んでた」


「改革案は、貴族軍の廃止、それと階級の徹底じゃ。お前さんの案に近いの、もう少し階級が雑じゃったが、それは多分妥協案じゃろ。王が、どうやって頼んでたかなんぞは、知らんわい」


こっちの世界での、マキャベリかグスタフ2世みたいな人物か、そんな人間がいたのはついてるな。俺の知識を、丸々こちらには適用できない。こちらでの、軍事の達者が必要だ。


「俺のもかなりの妥協案だぞ、本当だったら、兵站や編成、編制に関して、階級や教導に関しても、言いたい事は山ほどあるんだ。とりあえず話を聞いて見るしかないかな。それじゃあ、爺さん、俺と爺さんとフレッドで、シュトラウス将軍のとこに出向こう。先触れを出すべきかな?居ないと不味いしな」


「彼奴は、基本的に家から出ないらしいから、いきなり行っても、大丈夫だろうが。王に行幸を願うと言うわけか。彼奴を王宮に呼んだ方が、よいと思うぞ」


そう言うと言う事は、先王も王宮に呼びつけていたのか。


「ダメだな。古来より、軍を差配する者の気位は、王侯よりも高い。そこを酌んでやれないようでは、勇将は居つかないよ。それに、愛に生きる一族なんだろ、こちらも情熱を持って行こう」


「よし、略式ではあるが、私の王就任後、初の行幸は、シュトラウスの所で決めよう。行くのは3人で良いのか。リヒテンシュタインには此方でこなして貰いたい事が多いが」


フレッドは、今回の事を決定したようだが、リヒテンシュタインの爺さんの立場がどうなるかだな。


「フレッド、爺さんは、今後国での立場はどうなる?宰相にでもするのか。その辺りの所で、爺さんが要るかどうか決まるぞ」


「リヒテンシュタインは、儀典長だ。それ以上は周りが納得せんだろう。現職の、宰相も要ることだし」


「納得はさせるんだよ。現職がここに呼ばれていないと言うことは、そいつはぼんくらって事だろ。爺さんは、生きてるうちに使え。早い所、弟子でも育てておいて貰わないと、お前が将来困るぞ。後進や助役のいない機構は、1回崩れ出したら怖いぞ。あっという間に、腐ってお終いだ」


「アルト、そんなに年寄りを、こき使うものではないよ」


「やかましい。爺さんはきっちりと、後進の壁になって、弟子を育てて、弟子の成長を見守って、弟子が一人前になったら休めば良いんだよ。人間が一人前になるには、時間が掛かるんだから、あと30年くらいは現役で居ろ。そうしたら、休もうが死のうが爺さんの勝手だ。あと30年しかないんだぞ、その短い時間を楽しめよ爺さん」


爺さんは、呵々大笑して、腰を曲げている。


「クァーハッハァ。成程、たった30年か、そんなに短いのなら急がねばのぉ」


「フレッド、どうするよ。爺さんはどうやってこき使うんだ。なぁ王様」


「王様と言うのは止めて下さい。では、リヒテンシュタインは宰相として、国家の重責を担え、国家を支えて後進を育てろ。そして、30年などと短いことは言わずに長生きしろ。経験豊富な良臣は、何人居ても困らない」


「話はまとまった。国王陛下と、宰相閣下と、哀れな一平民の俺で行くぞ。だが、フレッド冗談くらいは流せ。少なくとも他人が多い所では、きちんと臣下の礼を取るぞ、俺は」


フレッドは、まだ何か言いたそうだったが、俺と爺さんは、そのまま扉に向おうとした。すると、背後から声がかかった。


「師匠、チョット待ってくれ俺も連れて行ってくれ」


いきなり、バイエルラインが、申し出てきた。相変わらず、師匠と呼んでいる。めげない奴と言うか猪突猛進な奴だ。


「何でだ、護衛なら必要ないぞ」


「弟子は、師匠について行くものだ。違うか、師匠」


こいつの場合は、憑くという感じかも知れんが。


「お前は間違いを犯している。俺はお前の師匠じゃないし、お前は俺の弟子じゃない。試験をすると言ったろうが」


「それなら今すぐ試験をしてくれ、師匠」


どうしたものだろうか、まだ考えてなかった。現状では、弟子と言うか副官みたいな者はほしかったが、こいつは副官には向かないしなぁ。弟子か、まぁ物は試しだな。


「分かったバイエルライン。それでは、そこの暖炉にある薪を、1本取ってくれ。それから、今からやる事をよく見ておけ」


俺は、受け取った薪を軽く投げる。落ちてきた薪に、ゆったりとした単把をこめる。薪は跳んで行くことも無く、暫く手に吸い付いたかのように動かず、その後重力に負けて落下した。


その場の全員が、訝しげにしている。俺は、バイエルラインに、薪を確かめさせる。


「この薪、よく見てみろ」


床に落ちている薪を、手に取ったバイエルラインの顔が、驚愕にゆがむ。


「グサグサに、薪が、グサグサになっている。手でも握り潰せるくらいだ」


「俺の手から生み出した力を、全て薪の内部に留めた、その結果がそれだ。これは、俺の武の中で、まさに象徴的な技法だ。シュトラウス将軍の所から帰ったら、試験をしてやる。お前の持っている技の中で、これこそがおまえ自身を表す、と言う技があるだろう。帰ったら、それを見せてみろ。それが試験だ」


「いやー、アルト、思っていたのの、10倍は強いの。超人かのぉ」


爺さんが、面白そうに答える。


「何を言ってるんですかね、ご老人。俺は凡人だよ、凡人。才能なんて無いさ、ただ、阿呆みたいな修行をしただけだ、それだけなんだよ。チョット特殊な環境で、訓練できただけの凡人さ」


「ふぅむ。そんなもんかのぉ。まぁ、武はわしの専門ではないしの。では行くかね、王よ」


「ああ、シュトラウスを、口説きに行くぞ」




御意見御感想、お待ちしています。

誤字脱字などもあったら報告していただけたらうれしいです。

本当は自分で見つけなければならないのでしょうが、難しいのでお願いします。


昨日更新できなかったので、何とか今日中に行きました。明日は…できるのかな?

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