綺羅星の目覚め 4
放課後。商業区のカフェテリア。
結局あのあと学園に戻る気にもなれず、終点の商業区にまでやってきてしまったルビー。
一体どうするべきか答えを出すことが出来ず、授業終わりの友人に通話をかけていた。
『で、結局なんなのよ。なにがあったのさ。はよ吐け』
通話を繋げてから二十分、適当な話を続けるルビーにしびれを切らせたのか、入学以来の友人――ミナが苛立った声を上げる。
明らかにイライラしている友人の声に、ルビーは口をまごつかせて弁明した。
「ごめんなさい。私もなにから話せはいいものかと思っていて……」
『うるさい。とりあえず全部話せ』
ミナのいつも通りの態度に、ルビーは少し安堵を覚える。
「信じてもらえないかもしれないけど……」
『信じるか信じないかは聞いた後で決めるわよ』
ミナが先を促してくる。ルビーは今朝の出来事をかいつまんで説明した。
「――というわけなの。どう? 行ってみるべきかしら?」
『いやいや。どう考えても詐欺だよ詐欺。ルビー騙されやすいって言われない? これだからお姫様は』
十数分に渡って話した内容を一刀両断され、ルビーはゴンっと机に頭を落とした。
『そもそもその人、宝珠を持ってなかったんでしょ? それじゃあどうやって星術打ち消すのさ。ありえないありえない。それで星術使えるんだったら、とっくの昔に私達だって星術使えてるって話だよ』
「それは、そうだけど……」
『それよりもアンタは来月の実技試験を気にしなさいよ』
薄々感じていた疑念を突き付けられ、ルビーは口ごもる。
宝珠とは、『星宝玉』を劣化複製させたデバイスのこと。
それがなければ、人間は星術を発動できないとされている。
それらと同調出来なかったルビーたち白服が紺服に差別されているのも、「学園に入学したにも関わらず、『星宝玉』に見放された落伍者」と見られているためだ。
『まあ、ルビーが言ってることが正しいんだったら、私も嬉しいけどさ……私も、まだ学校やめたくないし』
けちょんけちょんにルビーの言葉を否定していたミナの言葉に、憂いが混じる。
『適正がない人間は、一年間の猶予期間に星術を使える見込みがなければ、進級することなく落第とする。そういった校則があることは知っていたけど、まさか私がそっち側になるとはね……』
ルビーたちが身にまとう白服とは、つまるところ執行猶予つきの退学ということなのだ。
二年生に進級する際、学園の生徒達は全員が宝珠との適性試験を受ける。
その際に、生徒達は適正のある紺服と、適性の無い白服に分けられるのだ。
白服を着ているということは、来年学校から去らなければならないということの証明でもあった。
ミナが言う実技試験とは、白服が紺服と同じになれる二年次にある試験のことだ。
その内容は『星術を使って、ダミー人形を破壊する』という内容。
しかし、宝珠と同調できず星術を使えない白服は、どうあがいてもその試験を突破することが出来ない。
『私も、『星術使い』になって、いい仕事につけると思ったんだけどなぁ……』
「ミナ……」
どこかやるせない態度を言葉に乗せるミナに、ルビーが言葉を探していた、ちょうどその時。
「ふむ。いい店じゃないか。僕もご一緒してよろしいかな?」
ルビーに話しかけてくる、少年が一人。
ばっとルビーが声の方向へと顔を向けると、一人の少年が、ルビーの座るテーブルの脇に立っていた。
黒瑪瑙のようにつややかな髪に、細められた瞳。
身に纏う制服は、光沢のある純黒に染まっている。
だが、対照的に白く輝く肌にはくすみ一つない。
ルビーはその優男顔を見て、憎々しげに表情を歪めた。
「ミシェル……」
「おや、お邪魔だったかな?」
少年――ミシェルは、にこやかな笑みと共に、首を傾げた。
優男、登場――




