1.プロローグ【ヒーローになりたかった】
私はヒーローになりたかった。
困っている誰かを颯爽と助ける、優しくて頼もしい、とても強い正義の味方。
どんな時も正義のために戦い、最前戦に立って
誰かを守ろうとする、そんなヒーローに、
憧れていたんだ。
私がいる世界では、“ヒーローという仕事”があった。ヒーローとは、皆もれなく能力持ちで、
異能力を持った者のみがヒーローとしての
国家資格を得ることが出来た。
事件が起きると、所属しているチームに、
警察や国からの出動要請が来る仕組みだ。
国はヒーローの力を最大限活用し、
ヒーローは市民を助け、市民はそんなヒーロー達を
応援という形で支える。
こんな風に、ヒーローが当たり前に存在していた。
そして私も、かつては“ヒーローだった”
私の能力は、あまり戦闘向きではなくて、
ヒーローになるにはかなり苦労した。
ヒーロー学校での成績は、軒並み平均。
能力が弱い分、筆記の試験だけはと努力したが、
国の未来を背負う仕事だけあって、
普通の学生が学ぶレベルを大きく逸脱した
内容ばかりだった。
だが、何よりヒーローとして必要なのは、
ヒーローとしての能力の使い方や、人柄がヒーローに向いているかどうかで、大きく違うようだった。
私は、能力や知識は平均値だったが、
1つだけ、誰よりも負けないところがあった。
それが【困っている人達を必ず助ける】という
気持ち。
ヒーローに強く憧れた私は、人格者となれるように
自身の中身をはちゃめちゃに磨いた。
人より出来ることが少ない分、中身を磨くしか
無かったとも言える。
学校で困っている人がいれば必ず助け、
先生達の手伝いも積極的に行った。
そして、学校外学校内問わず、
困っている人を助けようと頑張った。
偽善と言われるかもしれない。
ただの自己満足と言われればそうだと思う。
が、その結果、私はヒーローとしての人格が秀でているという結果を貰い、無事にヒーローとして活動できることになった。
ヒーローとして活動が始まった最初の頃は、
あまり活躍できず、日に日に焦りが増していった。
先輩達の存在感が、言葉を失うほどにキラキラと強く眩しかった。
学生の頃のように上手くはいかず、
現実は、全く違った。
人格者と言われる人達は沢山居たし、
先輩ヒーロー達はまさにそんな感じだった。
私も同じように振舞おうとしたが、先輩達のように
強い能力もなく、実戦での経験も少ないため、
1人を確保するまでにかなり時間がかかっていた。
自分が無価値に思えた。
自分がヒーローになることで、自分の存在意義を見つけたかっただけじゃないのか。
私は、こんな風に目立つためにヒーローとして仕事をしたい訳じゃ無かったはずなのに。
そんな焦燥感に駆られ、周りと比べて落ち込む日々だった。
ある時、そんな私を見兼ねて、先輩ヒーローは私に過去の話をしてくれた。
自分にもそんな時期があったこと。
ある時ふと、評価を気にしなくなったこと。
市民の不満の声ばかり拾ってしまい、投げ出したく
なったこと。
この仕事は、見返りが少ないこと。
命をどれだけ張っても、市民や国は欲しい言葉を投げかけてくれる訳では無いこと。
そして…
助けられなかった命もまたある、ということ。
この仕事をする上で、自分がいかにちっぽけな事で
悩んでいたかを知った。
私の信念は、いつの間にか消えかかっていた。
【困っている人を必ず助ける】
私はもう一度奮起することが出来た。
そして、あの日がやってきてしまったーーーー。
私は、自信を取り戻した。
もう、見返りは求めなかった。
誰になんと言われようとも、人を助け続けた。
時には命を落としそうになった。
命を張ってでも、守りたかった。
守りたいと思った。
だけど、裏切られたーーーー。
市民のため、国のため尽くした。
いつしか私もヒーローとして、
レジェンドといわれるところまで来ていた。
レジェンドといわれるヒーローは、10人。
皆それぞれが強く、人格者であった。
いつしか民衆への影響力は絶大になっていた。
だから、国は私達ヒーローを恐れ始めた。
国家よりも、
“国家の犬”が強くなってしまったからだ。
ヒーローにいつ国家を乗っ取られても
おかしくないと。
国は、ヒーローを排除しようと動き始めた。
今まで散々私たちに頼ってきたが故、
力バランスがおかしくなってしまったのだ。
ヒーローは、異能を持った野蛮人だと罵った。
異能は、年々制御が難しくなり、いつかは能力が暴走し、市民を危険に晒すかもしれないと、虚言を振りまいた。
本来、異能持ちは年々力が弱まり、
いつかは能力が枯渇して発動できなくなると、
ヒーローであれば誰もが知っていた。
市民は国の言うことを信じ込み、
ヒーローを恐れ始めた。
そして、今まで散々助けて貰っていたはずの
ヒーローを中傷し、石を投げた。
ヒーローへの風当たりは日に日に強くなった。
まだ、新人のヒーロー達は、逃げるように
ヒーローを辞めていった。
そして、次々とヒーローは減り続け、
ヒーローが足りず、犯罪が増え続けたことで、
小さな事件では、既にヒーローが現れる事は
無くなっていた。
そんな事が続き、
市民の「ヒーローは本当に必要なのか?」
という声は日に日に大きくなり、
ヒーロー排除への風を助長した。
ーーーーヒーローは、国家に激しい憤りを覚えた。
ヒーローと国家の暴動が、
始まろうとしていたーーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうなったかって?
国は為す術なく、負けた。
そんな予想はとうに出来ていたはずだ。
だが、狙いはそこじゃなかった。
“ヒーローが国家を乗っ取り転覆させた”
その事実が市民に植え付けるものは、
「恐怖」 「差別」 「支配」 ーーーーーー。
ヒーローへの恐怖から差別意識が強まり、
ヒーローが迫害される結果となった。
国家は、暴動には負けたが、
市民を味方につけることに成功したのだ。
そして、ヒーロー達は、
国と市民に“殺された”のだった。
そのヒーローの中には【私】もいた。
特に、レジェンドといわれる10人は、
処刑台という、壮大な殺され方だった。
きっと、他のヒーロー達への見せしめだった。
皆、「困っている人を必ず助ける」という
信念で活動していた。
命を張ってでも守ってきた人々に、
まさか命を奪われるなんて思っていなかった
だろう。
きっと、無念だっただろう。
許さない。許せない。
私たちの命を奪った国を。
真実を見ようとしなかった市民を。
私は、マリオネット。
私は、お前たちを許さないーーーー。
【ヒーローになりたかった】
はじめまして。星乃奏向と申します!
昔は私もヒーローになりたいと短冊にお願いしていたくらいのヒーロー志望者で、ヒーローに関する物語を書いてみようかなと思い、第1歩としてプロローグを書いてみました!ヒーローといいつつもまさかの異世界転生しちまった謎展開です??
続きは時間のある時に更新していきたいです!
まだまだどんな展開になるかは練り中なのですが、
読んでいただければ幸いです( ´罒`)
よろしくお願いします!