ナマだしきせいちゅう
今日も真っ黒です!!
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アニサキスは寄生虫(線虫)の一種です。
幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。
アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含みます)で食べる事で、 アニサキス幼虫は頭部の穿孔歯を用いて胃壁や腸壁に刺入し食中毒(アニサキス症)を引き起こします。
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ドアを開けた私に康夫はいきなりクーラーボックスを突き付けた。
途端に魚のニオイが漂って来て私は思わず顔をしかめる。
「刺身にしてくれよ!」
「あなたがやればいいでしょ!」
「なんだよ!せっかく釣って来てやったのに!」
「アンタは楽しんだだけでしょ?!」
「何言ってんだ!今回の釣りは接待なんだ! オレは早朝から気の遣いっぱなしだったんだぞ!!」
「でも良かったじゃん! 意外と早く帰れて!」
社内恋愛から同棲に発展した私達だから……康夫が得意先の人と二人で釣りに行ったのは事実と言うのは把握している。そして“得意先の人”がうら若き女性だと言う事も察知している……
「早く帰ったって疲れてんだよ!」
“好き”に浮かされ、勢いで同棲を始めたけれど……後出しジャンケンみたいにカレの“癖の悪さ”が露見して来て、最近は背中を向けて寝ている。
そんな訳で、サカリのついた“ネコ”はサバ釣りだけでは満足できず、オンナも釣ろうとして“バレて”しまったと言う事なのだろう。
正直この先、康夫とやって行けるのか?と言うと甚だ疑問だ!
けれど、今はひとつ屋根の下なのだから関係を拗らせるのは得策ではない。
心の中で大きくため息をついて私はエプロンを着けた。
釣って来たサバのお腹を開いたら内蔵にびっしりとアニサキスが居たので、込み上げて来る吐き気に耐えながら黙々と作業を行い、私の愛するアイスちゃんを泣く泣く取り出し、三枚おろししたサバを冷凍庫へブチ込んだ。
能天気にも私から与えられたアイスちゃんを先にお召し上がりになられている康夫の
「刺身で食いたかったのによぉ~」
との言葉に私はキレた。
「この気持ち悪いのを全部探し出して!!しかも身から毛抜きで抜いていけっての??!! いい加減にして!!
生だし寄生虫が危険だから冷凍するの!!!」
私の剣幕に渋々言葉を引っ込めた康夫の顔を見たくなく、私は背中を向け、カリカリとした心をアイスちゃんの美味でクールダウンさせる。
と、いきなり冷たい手がエプロンや“その下”をかいくぐって素肌へ差し込まれた。
「ちょっ!!」
身をよじったが張り詰めたオトコの力づくから逃げられない……
そして……
慣れたオトコの舌と指使いが……抗う私の嫌悪を徐々に弛緩させてゆく……
アニサキスは取り付いた人間に激痛をもたらすと言うが、このオトコが吐く毒霧も非常に危険
だ……けど
……ん、んんん
ぁン……
……
……
あっ!!
オトコの剝き出しの穿孔歯が私の!!!!
次の瞬間、私は思いっ切りオトコを蹴飛ばした。
「何するんだ!!」
「使わなきゃいけない物を使わないからよ!!」
「だからって暴力振るう事はねえだろ!!」
「アンタが先に暴力振るってんだろうが!!!」
「なに大袈裟こいて固い事言ってんだ! どうせいつかはできんだろうが!!」
「どうせ??!!いつか??!! なにをふざけた事を!! このフニャチン野郎が!!」
「これのどこがフニャチンだ!! これがフニャチンだって言うならお前なんか太平洋並みのガバガバだぜ!!」
「よく言うよ!太平洋のど真ん中でオンナ一人口説けなくて!! 挙句の果てにお家の金魚に腰振ってんじゃねえよ!!」
『まだ結婚もしていないし、私だって仕事でキャリアを積みたいから……絶対に子供はできない様にしてね!』
これが康夫を私の家に招き入れた時の約束だったのに……こう言った規制中にも拘わらずコイツはいとも簡単にそれを反故にしようとした。
だから私は何の躊躇いも無く、私の身から私の家からこの寄生虫を放り出した。
おしまい
ホントこんな話で申し訳ございません<m(__)m>
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