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#3 カフェでこっそり
──んっ……。んんっ……。んん…………。
彼の口から私の口へと入ってくる何かに反応するかのうように、私は小さな吐息や声を誰にも聞こえないようにそっと囁く。彼の耳にも届いているのか──というより、顔を近づけている時点で届いていると思うけど──その彼もまた、私と同じように声を出していた。
「……どう?」
彼は少し顔を離してそう言った。凜々しい表情の彼が眩しい、と思った。
私は小さく頷いた後、
「……恥ずかしいけど、好き」
既に私の手は彼の首に巻かれていた。自然の流れでそうなっていた。
誰の意思でもなく、ただ、自然と。
「……あのさ」
「うん」
「これ……バレないよね」
そう言い、私はバレないように周囲を見渡した。まだ店内には多くの人がソファ席やらカウンター席やらと座っており、私と彼の他に従業員たちが忙しなく動いていた。
「バレないよ」
「そう……かな?」
「バレないバレない」
と言い、また彼は口を近づけてきた。私もその流れに沿うかのように、自らの唇を彼に捧げた。