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次の日の朝。嫌な夢を見て飛び起きたら、ぼくの掌の模様が、更に大きくなっているような錯覚を覚えた。
急いで布団をどかすと早速、左手の模様を見た。
「あれ? 変だな? ほんとに大きくなってる??」
模様は、昨日は掌を脅かすことはなかったけれど、今は掌一杯に広がっていて、手の甲にまで伸びている。このままだと、指のところまで模様が広がってきそうだ。
この模様??
大きくなったからか、よく見ると、何の模様かわかるんだ。
なんだか、どこかの国の国旗のような模様だ……。
その時、タイミング良く。パタンと青い扉が開いて、コーリアが朝食を持ってきてくれた。
「おはようございます。勇者さま。お目覚めのようでなによりです。今、朝食をお持ちしました」
コーリアはぼくのベッドの脇のテーブルに、朝食を静かに置いて、ぼくの掌をキラキラとした目で覗いた。
「まあ! 大きくなりましたね! ……でも、この模様?? 何か変ですね……??」
「え?? 変……??」
「あ、すいません勇者さま! この国には古い言い伝えがあるんですよ。掌に映りしトルメルの国旗。そのものトルメルの勇者なりって……」
「へえ……」
トルメルの勇者か……。
それなら、魔族と戦うのも普通かな??
「あ、でも。その国旗。トルメル城の国旗とは違うんです」
「……へ??」
ぼくは間抜けな声を発し、掌を穴の開くほど見つめた。
「さて、勇者さま。今日は1000年に一度のトルメル建国記念祭ですよ。さっそく、ご準備してくださいな」
「あ、ああ。はい」