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「ぜえ、ぜえ……」
階下へと降りると、幾つもの甲冑が飾られた広間には白一色の鎧を着た騎士が、荒い息をして突っ伏していた。
外からの明かりで、その騎士の剣先が光っていた。
「ああ! ライラックさん!」
「ムッ! コーリアか? ……もうダメだろうな……この城は……この戦争は館側の勝利で終わった……」
「え……そんな」
コーリアはライラックを介抱しようとしたが、ライラックはコーリアの手を思いっ切り振り払った。
「前線は全滅。後衛の私たちでさえ、逃げるのが精一杯……ぐぬぬぬぬぬ」
「あの。国王さまに、すぐに報告したら?」
何が起こっているのか、さっぱりわからない。だけど、混乱したぼくは即座に聞いてみた。
けれども、コーリアは首を横に振った。
「ここはトルメル城の数多くある客間の一つで、ライラック家が所有してるんです。トルメル城はとても広大で王室や王の間は、北の館が一望できるすごい北の方にあるんです。なので、もう国王さまのお耳に入っているはずです」
そうか……。
でも、なんて、広大な城だろう?
ぼくの家の何倍?
いや、何十倍??
こんな緊急時のような時だけど……正直、住んでみたいな……と思う。
「うぬ。健国祭は明日始まるというのに……皆、祭りの準備を終えたというのに……」
ライラックはとても悔しそうだった。
ぼくは、今はさすがにこの掌の模様のことを、どうしても聞けなかった。
「あの……」
「ふっ……心配するなコーリアよ。祭りは、明日の祭りは、厳重な警護の元に行われるはずだ。だが、私はもう戦わん!」
ライラックは剣を思いっ切り壁の方へ投げ捨てた。
剣は壁に並んだ甲冑の一つに突き刺さり。
それから、しばらくして剣の光は消え失せていった。