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「それでは、階下へ行きませんか? ライラックさんがいると思うので」
「あ、ああ」
やった。一階へ行ける。
ぼくは、コーリアと階段へ向かった。
この廊下には窓付近に一定間隔で、白い薔薇が飾られていた。強い薔薇の香りがぼくの鼻腔をくすぐっている。だけど、そのせいで、ぼくは左手でくしゃみを抑えそうになった……。
その時、ぼくは左手の掌に、いつの間にか浮きでている模様を見つけた。何故か、この模様を見ていると、不思議と物凄い力が全身から湧き出てくるんだ。
何故だろう??
この模様は、今まで寝ていた部屋で見た時があるみたいだ。
でも、それが何かわからないんだ。
確認しよう。
「あ、コーリアさん。この模様は何??」
「え?? ……」
コーリアはぼくの左の掌の模様を見つめて、瞬間、青ざめた。
「う……それは?」
「う?? ……ぼくの左手の模様はそんなに怖いものなの?」
「え、いえいえいえ。滅相もありません!!」
「へ……??」
コーリアは両肩を抑えて震え出し、失神しそうになっている。
この模様は一体、何??
自らの過去は、まるで霞がかかっていてよくわからない。
けれど、この模様は、ぼくの過去に関連しているようだ……。
「ごめんなさい。勇者さま! 今、ライラック家のものをお呼びしますね……いやいや……教皇さまの方がいいかしら? ……いやいやいや、国王さまをお呼びしますね!」
「え?? え???」
それは大変だ?!
待てよ……。
ここは、千騎士という騎士の国……。
悪魔の襲撃がある国……。
あ、そうだなんだ……これは……きっと……。
ひょっとして……。
ぼくの左手の模様と同じものは、寝ていた部屋に確かにあったんはずなんだ……この模様は、魔族退治の物語が描かれた絵画の片隅に浮き出ていたんだ。
そうだ。
ぼくは魔族と戦うために……。