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広場の入り口の途中で、コーリアが帰るとぼくは一人だけで、トルメル建国記念祭の白い花だけで飾ってあるアーチを通った。
「あーー!! 勇者さまだ!! その服装ーーー!! 勇者さまよね!!」
小さな女の子がぼくに気が付いて、傍へと駆けて来た。
え?!
な、何??
え?? 学ラン引っ張るなよ?!
何故?
ぼくを勇者って呼ぶのは、コーリアしかいないはずなのに??
そして、ぼくの手を握ると、ぶんぶんと元気いっぱいに降りだした。ニッコリと笑った顔は底抜けに明るかった。それから、他の小さな子供たちまでもが集まってきてしまった。
困り果てたぼくは、笑顔を無理にでも作り、密かにこの祭りの角へとゆっくり歩いて行った。だが、それがいけなかった。祭りの角は親たちのたまり場の一つになっていて、今度は大人の男や女たちが集まってきてしまった。
この世界の中世のような服装を着ている人たちは、ぼくの顔を一目見たいと思っているのだろう。あるものは、マジマジと見つめ。あるものは、にこやかにぼくを見つめていた。
どの顔も、ぼくに多大な期待を宿した目をしている。
「おい! この手の模様見てみろよ! 勇者さまだよ!! 正真正銘のトルメルの勇者さまだ!!」
あ!!
ぼくの手が?!
いつの間にか、大男に、ぼくの手をがっしりと握られてしまい。天高く挙げられる。一瞬にして、みんなの間で大歓声が上がった。
ぼくはどうしていいのか。
混乱する。
う、恥ずかしいというより。
困っていた。
ふらふらするほどの眩暈が……?!
いや、嬉しいは嬉しいんだけど!!
な……なんか、クラクラとしてきたぞ……。