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物語の始まりは……城の中
校舎から、あいつの靴音が、徐々に近づいてくる。
きっと、いつものあいつだ。
ぼくは正直……。
あいつの顔は見たくはなかった……。
靴音がすぐそばまでくると、ぼくは体育館の裏手へと急いで回った。そこから、全速力で学校の外へと走った。
息を切らせて、フェンスを乗り越え駆け抜ける。
そのまま道路へ飛び出ると、精一杯走り続けた。
「痛い! う、うわっ!」
と、突然。何か硬いものが後頭部に当たり、急に身体がバランスを失う。
そのまま派手に倒れ、水たまりに横っ面をぶち当てた……。
――――
古代より三つに分割された土地。北方領地を治めた白の騎士の国があった。その最北端にあるトルメル城は、千騎士(一騎当千の騎士)たちの国ともいわれ、人々から祝福をされていた。だが、今は大戦争後にも、その遥か北から魔族の脅威が今も存在している国でもあった。
その魔族を束ねるものは異形のゼブル「高き館の主」と呼ばれた。