第06話 「私のマル秘世界救世計画その①」
………………結果だけを言えば口を割らされた……。
先生のジト目と雰囲気に耐えきれず、女神様に『世界を救え!』と頼まれた事を白状させられたのだ。(さすがに転生の事までは明かしていないが……。)
訝る先生に証拠として、取り敢えず女神様から時給として支払われ続けている、地球産のコインをいくらか見せた。
勿論、地球のものというのを隠して、神々の間で流通している硬貨だと偽ってだ。
「ふ~ん。コレが神様たちが使ってるコイン……。金貨とか銀貨じゃないんだねぇ。刻まれてる文字も独特だし古代遺跡からもこんなの出土したなんて記録もないし、なかなか興味深いよ。」
ええ、そりゃー日本語、それも漢字ですから。
むしろ古代遺跡から出てきたらビックリだよ!
「で、君の元へと一時間経つ毎にコレがジャラジャラと降ってくると。」
「別段頭の上に降ってくるワケじゃありませんけど、今まで貯め込んだ分は大量にありますけど見ます?」
取り敢えず各種硬貨を百枚づつインベントリから目の前に降らしてみた。
「ほーう。なるほど、この分量は……なかなか興味深い。でも君この硬貨どっから出したんだい?この分量とうてい普通に持ち歩ける量じゃないよね?」
あっ!しまった……。
そういえばこの世界インベントリなんて魔法、存在してたか覚えてない!
見た目より分量が入るマジックバックみたいなものは流通してたと思ったけど……。
「あははははは……。これも、女神様に授かった祝福です……。」
「ふふふふ。そうか女神様に授かった祝福か……。」
なんかヤバイことをこの人に知られてしまったような……。
というか、今更圧が強くて口止め出来る雰囲気じゃない!!
「よし、判った。これからも君に協力しよう。」
「へ?」
「君の場合、腹に一物あっても隠しておけない性格みたいだし、そのことから考えても女神の頼みで『世界を救う』事を頼まれた事も本当のようだ。私にとっても興味深いし、女神からの依頼でも、『全力で!』じゃなく『片手間』程度で良い、というところも面白い。私の趣味として本業の合間にちょっとした救世活動なんてのもいいじゃないか?むしろ断る必要なんて無いんじゃないか?」
「……はぁ?まぁ言われてみればそうですが……。」
「で、取り敢えず君はどういったかたちで世界を救うつもりなんだい?」
「まぁ現状、大雑把に考えて二通り程方法考えてはいるのですが……。」
そう、私もマヌケではあるがバカでは無いのだ。
既にこの星の環境を改善する方法もいくつか考えてはあったのだ。
炭酸同化作用のアンバランスさを改善する方法に限るなら効果的と思われる方策は二つ。
一つは誰でも考える事だが、やはり砂漠や荒れ地など陸地の緑化を推進する方法。
もう一つは海の炭酸ガス吸収率を上げる方法だ。
陸地の森林が光合成により二酸化炭素を吸収し、葉緑素を使い酸素を放出させるのは知られているが、実は海洋でも同じことが行われている。
というかむしろ海洋のほうが二酸化炭素の吸収率は高いのだ。
波などによる、海面の表面積の増加により海中へ吸収された二酸化炭素は、植物プランクトンの光合成に使われて酸素として放出され、一部は植物プランクトンごと動物プランクトンや魚などに食べられ、フンや死骸として深海へと向かう。
やがて長い年月をむかえ、高い圧力などにより二酸化炭素から炭化水素へと変化し、やがて地下などに堆積されていくのだ。
つまりぶっちゃけ、海の表層部分で活動する植物プランクトンの増殖が活発になれば、光合成による二酸化炭素消費が増え、海中の二酸化炭素濃度が減る。
すると大気中の二酸化炭素が海表面に更に溶けやすくなるのだ!
倍々ゲームみたいでまこと良いことづくめに思えるが、勿論そんな都合よくそんな条件が起こってくれるワケではない。
具体的には、海の表層近くに分布する植物プランクトンも、鉄分やミネラルなど、いうなれば栄養素がなければ活発になど、増えてくれないのである。
ならば、それらの栄養素をどうやって海表面の植物プランクトンに与えるか?
どっから持ってくるのか?
簡単である。
「つまり深海層の水を表層へと循環させる事を考えればいいのかい?」
「そうです。表層の海水は既に植物プランクトンに吸収された後なので貧栄養状態ですが、もともと海底近くにある深海層は、そういったミネラルなどの栄養素が豊富です。だから深海の海水を表層へと循環させるなんらかの仕掛けを作ればいいわけです。」
「なるほど……それは盲点だった……。現役時代の君の頭から考えると、考えついた事が奇蹟のようだな。それともそれも女神の知恵ってやつかい?」
怒!!
違うわい!
……まぁそりゃ深夜に視てた海外の科学番組でやってた実験の受け売りだけど……
でも『私の頭では考えついたのが奇蹟』って言ってる事酷くない!?