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第05話 「今頃蘇る黒い過去!主人公、尋問を受ける。」

 重苦しい雰囲気が場を支配している。

 場所は父の友人兼危うく私の婚約者になりかけた、シーグリッド様の本来の仕事場。

 ソーンジェ大学に有るシーグリッド教授の研究室である。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 常日頃周りに私の事を自慢している父が、幼馴染でもある友人シーグリッド先生に、ゴーレム関連の大地魔法について教えてやって欲しいと頼み込んでくれた。

 その結果私は、先生の知恵を借りにこの場所へ出入りする事が出来るようになったのだ。


 さすが先生は専門家らしく、その知恵により今まで行き詰まっていたゴーレム錬成に関する疑問の大部分が氷解した事も嬉しい。

 

 特に、あのゴーレムの核に刻む、複雑怪奇な魔法陣の意味が、解読出来たのが最高だ。


 今まで意味不明だった魔法陣内の数字と文字の羅列が、なんとゴーレム錬成時に設定されるパラメーターの一種だったのだ。


 今まで、なぜ私自身ではその事が判らなかったのか?


 それは、魔法陣内の文字列は、必ず1桁の数字と一緒に文字が1文字セットとして、今まで集めてきた資料には書かれていた事。

 その為に、魔法の呪文と考えるには、意味不明に感じてしまうのが原因だった。


 ところが!?


 シーグリッド先生が、これは最初の数字とセットの文字を組み合わせる事により、「32進数の数字」を表している事を教えてくれた!


 この事が判ってしまえばあとは眼から鱗だ。


 というか何故前世で技術者をやってた私は気が付かなかったのだ!!

 前世でマイクロPC制御するプログラムに、16進数や2進数でデータのやり取りを散々やったではないか!?


……自らの発想力の貧困さに、目眩すら感じます……。


 取り敢えず、『ゴーレムの核へ刻まれる魔法陣内の文字列』が、命令語とパラメーターである事を理解する事が出来た私は、早速ゴーレムの燃費向上のキモである、省エネ化についての方法もシーグリッド先生の知恵を拝借した。


 その結果、ゴーレムの体を維持するのに使用する魔力量のパラメーターを、低く見積もって設定すれば良い、と教えてくれた。


 例えば、私が集めた文献に記載されてた、標準的なゴーレム核に刻む魔法陣は、泥のような不定形に近いものを、ゴーレムの身体として利用する為のもので、形状を維持するだけでも当然ながら多くの魔力を消費する。

 だが、それならば、予め形状がある程度維持されているボディを使えば、魔力を消費するのは関節の駆動程度になり、一気に省エネ化する事になる。

 具体的に言えば、今まで泥人形で作ってたゴーレムを、木材等で作った球体関節人形にしてしまい、魔核のパラメーターを弄ってボディの維持に使用する魔力を制限するだけで、目標は達成出来てしまうのだ。

 まぁ勿論問題はある。

 それは、起動したゴーレムに、予め腕や足を動かす時、関節をどのように動かせば良いのか、教えるてやる必要があること。

 その事を最初に教えないと、ゴーレムは関節のしくみを無視して動こうとして、自らの身体を自壊させてしまう可能性があるというのだ。


「つまり、作ったゴーレムに、自らの身体の正しい動かし方を、教える事から始めなきゃならないんですね?先生。」


「そうだね。でも最初の一体の教育が終われば、それ以降に作ったゴーレムに記憶を転写する方法があるから、数を作るのは楽だよ。」


「え!そんなのあるんですか!?もしやしてそれ使えば魔力切れたゴーレムが記憶リセットされちゃう問題も解決できるのでは?」


「そうだよ。まぁこの事は最近の研究で出来るようになった事だから、まだ一般には流布してないからねぇ。」


 良い事を聞いてしまった。

 やっぱり現役研究者による、最新の研究結果による知識というのは貴重だし、なによりも有り難い。

 お父様ありがとう!

 私をこんな素晴らしい方と引き遭わせてくれて。

 私とっても感激です……。(お前昨日まで言ってた事と違うだろ!とかいうツッコミが頭の中聞こえる気がするけど、アーアー聞こえない!)


「他にも、核以外にも魔力を溜め込む魔石を繋いで増設して、稼働時間を増やす方法とか、その方法だと空になった魔石だけを交換する方法とか色々あるよ。」


「なんて素晴らしい……あなたは私の神ですか……?」


「いや大げさな……この程度の事はここの講聴生程度には教えてる事なんだけどね。もっともゴーレムの事学ぶ人減ってるし、利用される事も減ってきてるんで、もはや化石になりかけてる技術だしねぇ。」


 鼻の頭をぽりぽり搔きながら答える先生。

 いや~照れ隠しとはいえ男性とみまごう程の美形な先生がやると、なんとも絵になるなぁ……。

 デジカメあったら記念に写っておきたいところである。


「ところで、アストリッドちゃんは、なんで今頃ゴーレム錬成なんて技術憶えたいなんて言ってきたの?もはやカビがはえたかけてる古い技術だというのに?」


「えーと……それがなんといいますか……」


 いや、そりゃ神様の頼みで救世活動してるなんて言えるワケないでしょ!


「そもそも君、学生時代はそんな勤勉な生徒じゃなかったでしょ?君くらいだよ、毎回出席するだけで単位とれる私の講義を落としたのって。」


 ガーン!?私って現役学生の時、先生の講義受けてたのか……!?

 それもよりによってその講義落としてたなんて……。

 そういえば、たしかあの頃バイトでお金稼ぐ喜びにハマって、単位いくらか落としてた記憶が……ははははは……。


「それに君って今は半ニート状態なんだって?しかもその理由が『とにかく知識を溜め込みたい』からだって?私の講義落としたうえ、私の事すら忘れてた時代の事考えると理解しがたいよ。」


「あーいやーなんと申しますか……心境の変化ともうしますか……。」


 そういえばあの頃、魔法が使える事が嬉しくって見た目が派手な雷魔法や爆裂魔法に傾倒していた時期だっけ……。

 ひたすら地味ーな土系列魔法なんて、当時あんまり憶える意欲が沸かなくって、先輩方拝み倒して出席だけで『可』が取れる講義教えて貰ったはいいが、その出席すらバイトに夢中になり怪しくなり、落とした単位多かった記憶ガガガガ……。


「で、再び聞くけど、なんで今頃になってゴーレム魔法なんて憶え始めたんだい?」


………………先生の笑顔が怖いです……。

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