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第03話 「私、家族に売り飛ばされる!?半ニート生活終了のお知らせ!?」

私が女神様から頂いたチートは三つ


 一つは、自分自身のステータスを視る事が出来る方法


 魔法が存在するこの世界でゲーム脳な日本人的発想では、一般的に存在する魔法のようだが、実は存在していない。

 物事を全て都合よく定量的に数値化するなど、そう簡単に出来るものではないからだろう。

 まぁ、比較対象となる他人のステータスが読めない以上、あまり意味がなさそうでもあるのだが……


 二つ目は、いわゆるゲーム等で良くある、インベントリ的なもの。


 亜空間?のような場所に、荷物などを収納する事によりその重量により制約を受けないですむという便利なものである。

 ただし、どれだけのモノが入れられるかは未確認である。が、既に日本円で513.336トン分の硬貨が収納済みなので、かなりの容量なのではないか?と予想している。


 三つ目は、私の最大の武器である、『神力∞』である。


 この世界では、人にせよ魔物にせよ魔法を使うのに魔力を消費して使用している。

 魔物が使用出来る魔力というのは魔核の大きさに、人などが使用出来る魔力は魔力器官の容量に依存する。

 ハイエルフは人よりは遥かに魔力器官の容量が大きい為、魔力の使用量も回復力も群を抜いているが、所詮は人間大生物の枠を超えられない。

 当然ながら魔法で使える魔力量も、限りがある。

 だが、魔法というのは魔力だけではなく、『神力』の消費でも行える。

 言うなれば『神力』とは魔力と上位互換な燃料のようなものと思えばいい。


 だが『神力』とは、本来はその名の通り神々だけが使える力なのであるが……?私の場合、あの女神様が持つ『神力』を共有するような形で、利用する事が出来るのだ。


 その量は当然ながら人間といった生物の持つ魔力量の比では無く、それこそ私達ハイエルフからみても、無限に等しく感じられる程なのだ。(勿論、実際に無限ではないだろうが)


 この力を使えば勿論、魔法を使った永久砲台のような事も出来るだろう。

 ただ、元々は女神様の『神力』なので、無駄遣いを続ければ女神様からお叱りを受けるかもしれない。

 場合によっては「無駄遣い禁止!!」とケータイのごとく使用量制限を掛けられる可能性も無きにしもあらず、な気がする。


 チートアイテムや、他に特別な魔法を貰ったという事は無い。

 だが元々ハイエルフは魔法に長けた種族だ。

 蓄積された魔法に関する膨大な知識が、一般にも開放されており、私のごときごく普通のハイエルフの家庭生活二千年間でも、かなりのものを習得したと自負している。


 だが、私という個人は所詮は一人である。

 どのような強大な魔法が操れても、私一人では出来ることも限られてくる。

 そこで……


 私は書庫の中の魔法関連の書物が並ぶ棚へ向かい、大地魔法関連の本を引っ張り出した。


 そう、私が頼りにしようとしているのは、『ゴーレム』である。

 ハイエルフの中ではまこと一般的な、普通の家庭内の一人である私の元へは、無償で協力してくれそうな仲間とか、そうなってくれそうな人など居るわけでは無い。


 予め言っておくが、決して私が『ボッチ』だからというワケではない!


 「女神に頼まれたから世界を救うの手伝って欲しい」周り近所の人達になどと言ったら、間違いなく頭おかしい扱いされて人生ならぬエルフ生オワた!になりかねないからである!


 というワケでとりあえず小さな事からコツコツと……私の手となり足となる助手である存在になり得る、『ゴーレム』製作から始めようと考えている。


 『ゴーレム』とは?、元来人間族の宗教団体が作業用として、魔法で生み出した、まあ疑似生命みたいなものである。

 私のような、転生者にとって判りやすい例えはやはり『ロボット』だろう。


 魔核と呼ばれる魔物の体内から取り出した石に専用の魔法陣を書き込んだものを核とし、そして一般的には泥や岩石で体を構成している。


 この疑似生命?の良いところは、作られて最初から、訓練された犬程度の命令を聞く知性らしきものがあり、また作ろうと思えばかなりサイズが大きいモノも出来る事である。

 だから人間族の教会など、宗教施設建設には積極的に利用されてきた歴史がある。


 その一方、欠点として決して燃費の良いものではない点も挙げられる。

 ゴーレムは自らの体の維持と体を動かす事に、魔核に溜め込まれた魔力を利用する。

 当然の事ながら、重作業用にサイズの大きいゴーレムを作れば、当然ながら魔核内の魔力の消費量も、それに伴い激増する。

 しかも、ゴーレムというのは使用すればするほど、物事を学習していき賢くなっていくのだが、魔核内の魔力を使い切り体を維持出来なくなり止まってしまうと、記憶?がリセットされてしまうのか?やり直しになってしまう。

 それを防ぐ為に使用者が魔核に対して、ちょくちょく魔力の補給をすれば良いのだが、ゴーレムというのは動かしてなくても、体を維持する為にも魔力を消費し続けるのだ。

 その事を考えると、大型のものを個人で維持するのは、コスト的にもなかなか許容出来るものではない。


 こういった点を踏まえて、私はこれらの欠点を解消した新たなゴーレム開発をする事を決めた。


 長老達の蔵書庫の中からゴーレム関連の記述がある文献を片っ端から抜き出し、内容を持ってきた自作ノートに片っ端から書き写す。

 それが終わると、長老達の集会所から場所を移し、世界樹の中でも虚の中にある少々怪しげなモノまで売ってるジャンク街で、実験に使う為のクズ魔石や真鍮や鉛、錫などのインゴット少量買う。

 ああ~……。

 二千年間、ずっとニートしてたワケじゃないけど、お小遣いが飛ぶようにとんでいく~。

 普段、魔法関連の書籍大量に買ったりしてるから、貯金とかあんまりないんだよねぇ……。

 せめて私のインベントリ内に大量に死蔵されている、日本円をこちらで使う事が出来たらなぁ~。


(出来ますよ?)


 え?


 いまなんか頭の中で、誰かが答えたような気がする……?


 試しにインベントリから日本円の五百円硬貨を出そうとすると、目の前にステータス画面が浮かんだ。

 それの中心には『両替しますか?』の文字が!?


「……え!?」


 試しに『セインドに両替』という項目をタッチしてしてみた。

 『セインド』とはハイエルフの国で一般的に使われてる通貨の単位だ。


 目の前に500セインド銀貨が一枚現れた!


「ええー!?」


 目の前に現れた硬貨を慌てて掴み、刻印など確かめてみるが、間違いなくこの町で流通している500セインド銀貨である。

 大体これ一枚で、この町ではパンが二斤と半分買えるくらいなので、前世の五百円玉と価値は似たようなものだ。

 ただ材料の価値として考えると、硬貨のサイズはお互い何故か?似通ってるが、たしか500セインド硬貨は銀の含有率がたしか85パーセン程度一方、五百円硬貨は銅72パーセント、亜鉛20パーセント、ニッケル8パーセントだったかな?


 レート的にはどうなんだろう?


 五百円硬貨には、この世界では手に入れにくいニッケルを8パーセントも含んでる!

 鋳溶かして研究材料として利用するか……日本でやったら硬貨を破損するのは犯罪だが、この世界ではそんな法律関係ないし、なにより二千年も経ってるんだから日本でこの硬貨が使われてる可能性ないし……う~む……。


 店の前でそんな益体もない事を考えててもしょうがないので、取り敢えず私の研究室を兼ねてる家に戻り、早速ゴーレム錬成の準備を始める。


 まずはゴーレムの核となる魔核に、魔法陣を刻む事から始めた。

 所詮実験用として買ったクズ魔石なので、大きさが小さいのでルーペを使いながら細かい魔法陣を刻むという難しい作業になってしまった……。

 最近老眼気味の私には辛い……。


 予め言っておくが、私が老眼気味といっても決して私が年寄りというワケではない。

 というかエルフ族というのは総じて老眼気味な人が多いのだ。

 どうも弓矢をもって遠くの景色を視る事が多いので、その生活が原因で遠視な人が多くなる傾向なのかもしれない。

 

 少々言い訳じみたが、取り敢えずゴーレムの魔核は完成した。


 粘土を捏ねて作った、全長10センチ程の人形に埋め込むと、さっそく立ち上がった。


「おお~!」


 あとはこのゴーレムが、どんな事が出来るのか、また稼働できる時間を、このまま調べていく事にした。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「お~い、アストリッド~。朝ごはんだよ~。」


 父が私を起こす声が聞こえる。

 どうやら実験に夢中になりまた徹夜してしまったようだ。

 なにしろこのゴーレムに関する研究、実際に作成して実験してみると、文献に乗っていなかった事が、色々出てくる出てくる……。


 例えば、私は当初ゴーレムの魔核をなにも考えず粘土で出来た人形の中心に埋め込み、命令を与えてみた。

 部屋の中や外を歩きかせてみると、やたらと物に躓いて転んだりぶつかったり……。

 そのくせ、生物や植物にはぶつからないのだ。


 なぜそんな事が起きるのだろう?と、再び長老達の集会場の蔵書庫でゴーレム関連の書籍を歴史モノ含めて読み直してみたら、ゴーレムが描かれた挿絵の一枚に、魔核が頭部に露出しているモノを見つけた。


 そういえば、私が居た元の世界での伝承では、ゴーレムは文字を書いた羊皮紙を頭部に貼り付けていて、それに書かれた文字を一文字消されると破壊されるこよになってるのよねぇ……なんで最初から弱点頭に貼り付けて丸出しなんだろう?とは思ってたけど……。


 家に戻り、私の研究室でゴーレムを再び作り直し、今度は真核を頭部に露出させて実験してみると、今度はモノに躓いたりぶつかったりしない。


 このことにより、魔核自体がゴーレムの目にあたる光学センサーの役割をはたしているのではないかという推測が出来た。


 生物などにぶつからない理由については、この世界の生物は大なり小なり魔力を内包しているので、それを何らかの方法で感知しているのではないかと考えられた。

 試しに、ゴーレムの歩く先に魔力を充填した魔石を置いてみると、明らかにそれを避けて行こうとする傾向が見られる。

 この事から考えられるのは、ゴーレムの魔核は光を捉える眼のようなセンサーとしての役割を兼ねるが、人間の眼と同じく泥などで遮蔽されてしまえば、見えなくなる。

 しかし、魔力に関しては泥などで遮蔽されても感知する事が出来るという事。


 これは面白い発見である。


 だが同時に、新たな疑問も湧いてくる。

 ゴーレムは命令を聞いてくれるが、声である音をどうやって検知しているのだろう?


 更に色々な実験を繰り返したが、判ったのはどうやらゴーレムのボディには、触感があるらしいという事。


 理由は判らないが、ゴーレムに「私が触った事を感じたら手を上げる」と命令して実験してみると、ほぼ百パーセント触られた事を感知出来る事が証明された。


 もしかしたらゴーレムはボディに伝わる振動を感知する事で、音を聞いているのかもしれない。


 一方、ゴーレムの魔核に刻む魔法陣の内容については、解析がまったく進んでいない。

 研究の先人達がいろいろ寄ってたかって、現在の内容までブラッシュアップされてきたようだが、どうやらトライアンドエラーの繰り返しでここまで来たらしく、魔法陣に描かれてる文字らしきものについての解読も、あまり進んではいないらしい。


 一番最初にゴーレムを作った人物については、今となっては記録が失われているので判らないが、この魔方陣をどう思い付いたのか、問い質してみたいところである。


 今までの実験結果を頭の中で整理しながら、家族と朝食を摂っていると、いきなり父から爆弾発言が……


「そういえばアストリッド、午後にお前の婚約者が来るからな。」


「へっ?」


 母の方を見たらなにやらニコニコしてるしこれって本気!?

 とうとう半ニート状態の私を強制的に追い出す為に、嫁と称して売り飛ばす作戦に出たのか!?

 そんな罠は想定してないんだけどー!?

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