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第5話:弟子Aついに動く!

この物語は!

魔王を討伐するためにある国が勇者を選定し、その勇者に世界の命運を託し切磋琢磨し苦難に満ちながらも仲間達と協力し魔王を退治するまでの話になる予定でしたが、もしかしたら……。



弟子Aは、今後どうするかの方針に悩んでいた。

まず


1.魔王の居城を探し出す。

2.魔王の居城に魔王を案内する。

3.魔王は倒しちゃだめ。

4.魔王の精神支配から逃れるための方法を考える。

5.左手の存在を上手く隠す。

6.体調、魔力を出来るだけ万全に戻す。

7.正直勇者は探さなくていいんじゃない?

8.弟子Aの喉がガラガラなので水分補給

9.とりあえず城壁が見えないぐらいまでの位置まで進みたい


という感じだ。

弟子Aは、知恵を振り絞って考えていた。

「(1、2に関しては、自分と同化してるため情報収集をして、場所を突き止めて、移動をすれば何とかなるだろうと見切りを付ける)」

しかしながら、3、4はかなり厄介だ。

「(3に関してまだ聞いてはいなかったが、弟子Aが死んでしまった場合に、魔王は、一蓮托生で消滅するかどうかについて、魔王が意識を取り戻したら聞くとしよう。魔王を倒せば瘴気が溢れ続けるから無理。まぁ、倒せる術が自分にはないけど……。特に4は、これが実は最も切羽詰った事態だ。どうにかせねばあらゆる行動が出来ずに世界どころかまず自分が消滅してしまう)」

5に関しては、既に左手の魔王に、布の服の一部破いて、包んでおいた。

「(6は魔王のせいで、魔力が吸い取られてるらしいから完全回復は無理だろう。故にモンスターに襲われないよう、極力避けよう。節約節約)」

7は……。

「(勇者を見つけたら、まず、間違いなく魔王を倒そうとするだろう。魔王の眷属という形になってしまっているボクからの言葉や、魔王の言葉を、すんなりと受け入れるというのも、なかなか難しいはず……)」

 弟子A自身、正直に言って絶対的な自信はない。だが、わざわざお家に帰りたいがためについた嘘にしては、大げさすぎる。何より、日記帳……もとい預言書の内容とも、あながちはずれではないどころか、近いだろう。

「(よって、勇者探しはしない方針で行こう)」

 タイトルを魔王早く帰ってきて!!!に変えた方がいいんじゃない?そんな風に思う、弟子Aではあった。

「(8、9に関しては、願望。そろそろ本格的な旅をしたい! 後喉かわいたしね)」


 やっとの思いで、弟子Aは歩き出した。

 まずは、最初に行こうと思っていた村に歩を進める事にする。

 ウトキテ国がある、東の大陸から、西の大陸に渡るための航路を一手に引き受けてる港町がある。

 そして、その港町とウトキテ国の首都までの間のちょうど中間地点に存在する村だ。

 旅人や行商人の行き交いも多く、新鮮な情報もそれなりにあるだろうと踏んでのことだ。

 千里の道も一歩から、もうさすがにこれ以上の不幸は来ないだろう。

 来たとしてもマシなもののはず。最悪の一歩なら、後は気分上々、うなぎのぼりの筈……と弟子Aは僅かな希望を抱くのであった。


弟子Aの装備変更

武器:木の杖

防具:布の服→破れた布の服

左手:布で包まれた魔王


 村までの旅路は、ついさっきまで起こっていたイベントとは対照的に平和そのものであった。

 しかしながら、本来はこれが当たり前なのである。

 首都周辺は軍事演習も含め騎士団が出立し、モンスターの制圧を数ヶ月に1度大規模に行っているため、大抵は、旅慣れた冒険者や少なくとも弟子Aにしたら、取るに足らないモンスターしかいないのだ。

 この事からも、魔王に出くわす不運というのは、飛びぬけているだろう。

「(ああ、平和ってすばらしいなぁ)」

 縁側でお茶を啜りながら、一日のんびりと過ごしてるかのように、心の中で呟く。

 しかし、実際は左手が魔王になり、精神支配の影響があるんじゃないかと、心配にもなって来る一言ではあったが、何もなさ過ぎて、弟子Aは思わずそう思ってしまったのだ。

 そんなこんなで、ありえない事に、まったくアクシデントもなく、たまに出るモンスターは、ぷるぷると震えるだけのスライムぐらいだったので、とりあえず杖で突くと、どこかへ逃げて行き、何だか微笑ましくなってしまうぐらいだった。





 何時間もの間、ただただ長い距離を歩き続ける。

 日が落ち、月が夜を照らす時間帯になった頃に、ようやく村へとたどり着く。

「ふぅ……歩き疲れたけど、なんとか着いた着いた」

 村の門を潜り、伸びをし終えると、宿屋を探す事にする。

 夜中ではないにしろ、既に夜だ。村人達は、ほとんどが家に戻り、仕事を終えている頃合だろう。

 本格的な情報収集は明日にして、とりあえずの所は宿屋に行く事にする。

 少し歩くと、この村の住人だろうか。青年と呼べる頃合の顔をした人物の姿が目に入る。

 特に何もしないで、ただ立っている様子が気になり、弟子Aは声をかけてみる事にする。

「ようこそ、センタ村へ!」

 寄っていくと、こちらが目に入ったのか、弟子Aに歓迎の意を示し、自身の村の名前を、親切にも教えてくれる青年であった。

「これはご丁寧にどうも。宿屋の場所って知ってます?」

 何年か前に師匠と、そして多くの兄弟弟子と共に連れられ来た事はあるものの、村自体を回ったことはない。

 こういう事は、その村に住んでる人に聞くのがてっとりばやい。

「ようこそ、センタ村へ!」

「あ、いや。センタ村は分かりました」

 どうやら、こっちが聞いていないと思われたのかもしれないと考えた。

 思考中は、他の事に意識が回らない事があると師匠に注意された事もあった。

 ぼーっとしているように見えてしまったと思い、失礼な態度を取ってしまったことを詫びて、改めて質問する事にする。

「っと、すみません。宿屋の場所は知っていますか?」


 少しの沈黙の後……。


「ようこそ、センタ村へ!」

 そう青年は告げてくる。

 困惑しながらも、もしかしたら怒らせてしまったのかもしれない。と考えた。

 出来るだけフレンドリーに、かつ相手を怒らせないように、台詞を慎重に選びながら、再度質問する事にする。

「あーいや、すまない「ようこそ、センタ村へ!」……です」

 遮るようにして言われた声にも怯まず、弟子Aは続ける。

「それでセンタ村の宿「ようこそ、センタ村へ!」……屋はどこでしょうか?なんせ「ようこそ、センタ村へ!」久々に来たの「ようこそ、センタ村へ!」で、ちょ「ようこそ、センタ村へ!」っと「ようこそ、センタ村へ!」宿屋「ようこそ、センタ村へ!」の「ようこ「うるさぁぁい!!!」

 青年の言葉を最後に遮り、思わず叫んでしまう。

 一言で言えば、しつこい。

 それが弟子Aの感想だ。

 大声を張り上げたせいか、乾燥しきっている喉は限界にきている。出来ればこんな所で無駄な話はせずささっと宿屋で休みたいのだ。

 相手の青年も、苦虫を潰したような表情をしている。


 そして、沈黙が二人を包み込む。

 時折鈴虫が鳴いているようで、心地いい風も相まって夜の静けさが身体を撫でる。

 そして意を決したのか、目の前の青年が再び口を開ける。

「ようこそ、センタ村へ?」

「聞くなぁああ!」

 それが魔術のキーとなってしまった。

「(なるのって、しまっ……!)」

 ツッコミむ間も短く、そう思った時にはもう遅く、炎の弾が出現しそして――

「貴様はうるさくてまったく眠れんぞ!」

 いつの間にか気付いたのか、左手が弟子Aの顔面を捉えるべく動く。が、運良く(魔王的には運悪く)左手の魔王が炎の弾に命中する。

 これで、青年が焼死体になり、新たな罪状追加というシナリオは回避された。

 だが……。

「うおっ、何事かー!」

 左手に包んでる布が焼け落ちているだけで、魔王自身にダメージはない。

 状況が分からず目の前が真っ暗であったと思ったら、急に視界が燃え出したために魔王が叫ぶ。

「ようこそ、センタ村へ!?」

 目の前の青年は、何事が起こったのかと叫ぶようにしていた。

 何せ、いきなり現れた旅人らしき人物から炎の弾が生まれたかと思うと、自分自身の左手にぶつけ、燃え落ちた布から出てきたその手には、筋肉ムキムキの何かもう訳の分からないモノがくっついており、そしてそこから、叫び声がするのだ。

 青年は炎の弾を避けようとしていたものの、起こった出来事が多すぎ、さすがに驚いてしまったのか、距離を取ろうとした時には自身の足が絡み、その場へと倒れこんでしまう。

 そしてその事態は、弟子Aにとって最悪なシナリオへと運ばれている事は間違いなかった。

いきなり魔王となった左手を見られるという、最悪なシナリオは、最悪な展開を生む事しか出来ないのだろうから――





 弟子Aが出立して間もなくの頃。ウトキテ国の魔導師を夜通し総動員し、大臣は弟子Aの出立の報告、弟子Aの人相書きと預言書の内容を各国へ、協力をしてくれるようお触れとして西の大陸まで魔術を使い届けられているのだった。

 王が倒れ、大臣の手腕が遺憾なく発揮されすぎたのが、弟子Aの知る由ではない所で、首を絞めることとなるかもしれない。



此度125年8月17日

午後9時を過ぎた頃であった。


世界が闇に覆われるまでのタイムリミット:二週間じゃね?

弟子A現在の装備

武器:木の杖

防具:破れた布の服

左手:布で包まれた魔王→全裸の魔王


所持金:2240G




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