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番外編:弟子Aの出番ほぼなし

この物語は!

番外編です!



 ここは、東の大陸でもなく、西の大陸でもなく、もちろん魔王の居城でもない。


 誰も知らなくて、しかし、誰もが知っている存在。


 神と名乗る存在が住まいし場所。



「あー……暇ねぇ」


 世界を創造し、世界を見守る存在。人を創造し、人の行く末を案じる存在。

 勇者に力を貸した。魔王を封じた。色々な所で伝承が残り、数々の逸話を残す神。

 名前は、伝承、逸話の分だけ数々ある。

 理由は、その地で出会った人々に、そう告げられたからである。


 ――そう、この世界には神が居る。


 しかし、一人ではないともされるが、実際の所は、この暇を持て余している神一人なのである。

 昔は良く人間に肩入れしまくり、無茶をしたものである。

 ある時あまりにも人間が、神を頼るようになってしまってからは行動を控えるようにしていた。なんせ、女神自身の力を使えば、人間に降りかかる無理難題な事も、寝ながら出来てしまうのである。

 女神は、聞こえよく言えば、人類という種に期待と自主性、この世界の舵取りを望んだ。悪く言えば、女神が自分で事を起こすよりも、そちらの方が、見てて楽しい事に気付いたのだ。


 今は、映し鏡と呼んでいる、水の入った器で下界と呼んでる世界や、過去にあった出来事をTV感覚で見ているぐらいだ。


 清々しい空が広がり、ほどよい日の温もりが包み込む。この空間は女神の思いのまま、過ごし易い時期を維持していたのだ。

 庭園のような場所には、発言の主が一人。綺麗に整備されたそこには白いテーブルがあり、フォークとナイフ、そしてホットケーキと紅茶が置かれていたのだった。

 そして発言の主は、白い椅子に腰掛けながら一人優雅に過ごしていた。

「なーんか、面白い事がないかしら」


 神……性別はないとも言われている。

 が、その存在が象っているのは、女性だ。この物語の嬉しい事に初の女性人物だ。

 緑色の髪は、腰まで伸びており、枝毛など存在しないと言うほどにストレートになっていた。

 見る者を、男女、種族問わず魅了してしまうかの如き美貌。それは存在感が成せるのか、そのまま姿形で魅了するのかは分からないが、それほどまでに美しく、神々しかった。


 神の身を包み込むは、神々しい姿にも劣るとも勝らない、素晴らしい神秘的な純白のドレスを着ていた。更に出る所は出て、引き締まる所は引き締まった理想とも言えるプロポーションをも誇っていた。


 全体としては可愛いというよりは、美しいがあっている。

 ただし、可愛い!って、言ってくれてもいいんだよ?


「と、これでよし」


 割と事実だから良いが、女神の都合の良い感じに容姿について書かれていく。

「私の世界でもある事ですし」

 会話はしないように。

「はーい。……しかし、本当に暇ねぇ……」

 意外に素直なのには好感が持てるだろう。

 だが、女神は紅茶を飲みながらも、暇を持て余していたようだ。


 魔王騒動の時は、多くの人間が犠牲になりさすがに心が痛かったが、あの時ほど神冥利に付く事はなかった。

 人々は神を信仰し、再び神が力を貸してくれると信じ祈り続けた。その信仰はそのまま女神自身の力に反映される。

 さすがに、下界と認識してる人間たちの世界に女神として直接干渉する事は、以前の愚を繰り返し、自分の意に反するが、少しの力を与えた武具の譲渡などぐらいは大目に見た。


 もちろん、それなりの試練。持つに相応しい真の勇者の選定はした上でだ。結果は、魔王を倒すまでは行かないまでも、封印を施す事に成功。しかし、当時の名だたる勇者という勇者は、その封印された地で、ほとんどが命を落とす結果となってしまったのだ。

 そんな魔王騒動が終わりこの数百年の間はかなり平和な方だった。


 魔王騒動の後、女神が干渉をやめる以前に、片手間で封印しておいた、伝説と言われるドラゴンが復活した時も、一部の街や村が被害にあったりしたが、それでも全世界を巻き込むという事態もなかった。


 しかし、女神には特に印象が残っている事件であった。

 なんと、一人の人間がこちらに接触してきた時があった。

 さすがに女神もこれにはびっくりしたのだ。ここへどうやって来たのかなど聞きたかったが、その前に、人間が勝手に入ってきたのは不法侵入で、更に運が悪い事にお風呂に入っていて、ラブコメ? と言わんばかりの展開と、その人間に対して怒ったが、話し相手になってくれる人が居るというのは嬉しいもので、その件に関しては不問にして、女神の力を使えるよう呼び出し魔法を与えた。


 ちなみに、魔法と魔術は別物である。

 強力すぎるので、出来るだけ使う機会は限定しておいて下さいと一応の釘を刺してだ。


 だが、その人間は、女神の力を用いて一発で倒してしまったのである。

 さすがの女神も驚いた。伝説のドラゴンを倒す用に与えたのだから使うのはよかったのだけど、復活したドラゴンとの遭遇時の初手で放ったので、何ともあっけなさすぎて女神も、えー!普通はピンチになってから使うもんでしょー!と子供のように非難したものだ。それに一応、釘も刺していた事も相まってだ。


 女神としては、色々台詞を考えていたのである。

 劣勢時に、貴方にはあの力があるのでしょう。今こそその力を解放する時です。などなど強引に念話を送り込もうと考えていた。

 そして、見事ギリギリに、伝説のドラゴンを倒すとかとか……その日は、その人間が女神の機嫌を取り、事なきを得たが、もし機嫌が悪いままだったら一体どうなってた事やらだ。


「はぁ……面白い事、面白い事……」

 ぱくっと、テーブルにおいてある自分で焼いたホットケーキにフォークを刺し、もぐもぐしながら頬杖をつく。

 行儀が悪いが、誰も見ている人はいないので気にしない。

 神様の威厳も、美しさも、気品も、愛嬌も、神々しさもあったもんじゃなかった。


「……下界の様子でも久々にみよっか」

 機嫌が悪そうに虚空を睨みながら思いふける。


 ドラゴン騒動以来、録に見ていない……軽く百年は経ってる感じだが、気にしないで下界の様子を見る。

 もし、女神が気付かなくとも、異常事態があれば知らせてくれる手はずになっているからだ。


「ん〜……って、えええええ?! エマージェンシー??」

 そう、エマージェンシー。

 これは、ある人間……ドラゴン騒動の時の人間のみに教えた女神の呼び出しコールだ。

 しかし、これが発動されるのは実に百年は経ってのことだ。

 幾らなんでも、女神としてはその人間が生きているとは思っていなかったのだ。


「って、えーっと。仕方ないわねぇ。えいっ♪」

 大きな器に入れられた水の中に写されたソレは、何か見覚えのある存在と、まったく知らない存在だった。

 しかし、呼び出されたのならば仕方ないので手助けをするのも、暇だったので構わなかった。


「女神ビーム!」


 その瞬間、映像の中の見覚えがあった存在が光に包まれ、多分倒せただろう。

 名称については、あえて突っ込むまい。

「えー、可愛いじゃない」

 既に、誕生からピー歳の女神の台詞とは思えない。





 ――ごめんなさい、もう言いません。

「それでよし」

 笑顔はまさに女神だったが、目は笑ってなかった。


「さっきのは、何だったのかしら。まぁ、あの人が他の人に教えたのかもしれないわねぇ」

 それはそれで困った事態だ。

 料理をしてる時、お風呂に入ってる時、寝ている時、旅行している時に関わらず呼び出されたのではたまったものじゃない。しかし、契約なので出ないわけにも行けないのである。

 さきほどの様子は煙がもこもことしており、まったくその様子は見れなかったが致し方あるまい。


「でも、コールが出来るって事は、それなりに才能はあるみたいねぇ」

 とりあえず、その映し出した場所をブックマークをしておき、別の場所を見る事にする。

 そう、久々に似たようなのを見たせいか、あの魔王でも見ようと思ったのだ。

「元気にしてるかなー」

 元気にしてちゃいけないとも思うものの、女神はなぜ魔王が、魔王と呼ばれている事態を知ってはいたし、気紛れに人間に害を成すという意外はそれほど嫌ってはいなかった。


「……え」

 女神は驚いた。

「……えええええ?」

 女神は相変わらず驚いている。

「ええええええ!! 何で! どうして〜!? 結界が消えちゃってるの!」

 思わずガバッと椅子から立ち上がる。

 そう、女神の力を与えて張ったはずの力が消えているのだ。

「あれって数千年は硬いと思ってたのになぁ、欠陥あったかな?」

 しかし、少しだけこの事態は女神の望んでいた形になってきたのである。

 そう、暇というものが解決するんじゃないかという淡い、そして人間にとってははた迷惑な願い。


「ふふふ、面白くなってきたじゃない」

 ホットケーキを全て平らげると女神は色々とする事とした。

 きっとまた勇者選定があるはずと意気込んで、仕掛けを作ったりとか、台詞を考えたりとか準備が必要だ。

「よーーし、まずは勇者に振舞う料理のレパートリーの充実からね。女神の手作り料理ってだけでポイント高いもんね」

 ここまで来る用事が出来るか甚だ疑問は残るものの……。

 女神は、暇を持て余しすぎてかなり料理その他趣味が多彩であって、ほとんどの事が出来るのであった。


「あっと、一応アレに連絡しておかないと。結界もなくなってるし、一体なにをしていたのかしらほんと……」

 神は一人だが、女神の手足となる僕の存在はあったのだ。

 女神の思惑が進む中、物語もまた進んでいく。

 神とはいえ、それが女神の思い通り事は成すのだろうか、それとも予想を覆すのか。

 それは、弟子Aと魔王次第であった。





 そこには三人ほど並んだ人物達が居た。

「え゛っ、ボク達出番なし? というか、番外編するの早くない!?」

「なしのようだな。我としても今回の話の主役として貴様をちょい役で出してやってもよかったのだがな」

「いや、魔王? 番外編に1mmも出てないですよ?」

「ん、何を言ってる。ほれ、サブタイトルを見てみろ。魔王の華麗なる一日って……え、違う? 中身も…………あれ、取材したよね! 取材されたよね? 我を取材しましたよね!? 我が主役って言わなかったか!?」

 取り乱しながらどこかへ去っていく魔王。


「よっ……私としては、遺憾だがな。メインタイトル通り出番がまだなんだが」

「誰!? って勇者様!? 勇者様早く来て! いや来ないで!?」

「おいおい、どっちなんだ?」

「どっちかっていうと、来ないで欲しい……かな?」

 今は番外編なので絶賛魔王と分離中。


「……そうか」

 少し寂しそうな事情を知らない勇者であった。

 そして、何か寂しそうにブツブツと言いながら魔王が戻ってきたのだった。


「我の……我の出番が……」

「……でも、いつ出てくるんでしょうね、ほんと……。先にココに出ちゃって……」

「そればかりは、私にも分からんな」

「……しかし、見れば見るほど貴様は過去にあった勇者にそっくりだな。いや、嘘だが」

「このタイミングで嘘が必要なの!? バカなの!? 死ぬの?」

「まぁ、気にする事はない。魔王と名乗る奴は大抵バカな考えの奴が多いからな」

「ぐぬぬぬ…………貴様らぁ! いつか……!! いつか覚えておれよ!!! 我は我は、魔王ガ――ぶぁぁあああるぅぅぅうううすぅぅ――!!?」

「も〜う、魔王ったら、相変わらず気持ち悪い体してますね。女神たる私が、もっと可愛らしく作り変えてあげますのに」


「「………」」


「………あー……それはそれで、魔王の元々の姿知っちゃってるボクとしては、接し方が分からなくなっちゃうので困るです」

心底嫌そうに、そう呟く弟子Aであった。

「私も、倒すだろう相手が見た目可愛いというのは、手が出しにくいな」

意見は違うが、弟子Aに勇者が同意する。

「手を……出すですって!? まぁ、勇者ともあろう人が、魔王とキャッキャウフフな展開……ありかもしれないですわね」

「勇者様……」

 女神は何かを期待するかのようにニヤリとしつつ、弟子Aは、身の危険を感じたかのようにそれぞれ勇者を見つめる。

「悪いが、いや悪くないが、そういった趣味は断じてないぞ!」

 勇者が、冷や汗をかきながらそう告げる様は、これ以上関わるのは危険、と判断しているようだった。

「ぐすん、せめて我が殴られた事についても突っ込んで欲しいです…………はい」

 なぜか分離している魔王が、女神の登場時に、女神のグーパンチで数十m吹っ飛ばされながら自爆されてやられたヤ○チャポーズで倒れていた。

「………魔王がこんな扱いだと、私としては、このまま出番がない方がいいんじゃないか?」

 勇者もこのノリに付いて行けるかどうか不安一杯だった。


「さぁ。物語は既にクライマックス! ノンストップハイパーアクション、バトルラブコメストーリー女神の微笑みは世界を救う!!! こう期待♪」

「うぇぇ、まだ始まったばかりだし、何あっさり変なタイト……ルじゃないです、素晴らしいです。ボク見たいなぁ〜」

 弟子Aは恐怖で震え……げふんげふん……女神の笑顔、言葉に感銘を受け、感動に涙し震え、素晴らしいと思うのであった。



「本当にいいのかこれで……?」

 そんな様子を見て、一人疑問に思う勇者であった。



此度?年?月?日

女神が、色々と準備を始めた頃


タイトルが変わるまでのタイムリミット:???

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。


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