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世界にステータスが現れてから  作者: G.t
ステータスが現れた日
5/13

4.初めてが大事

 

【ステータス保有者が10名に達しました。システムを第二段階へ移行します】


 機械的で無機質な声、以下システムさんとでも呼んでおこう。


 その言葉が聞こえた瞬間、目の前が真っ黒になり、立って居られなくなった。激しい立ちくらみに似た感覚だ。


 俺はとっさに近くの壁に寄り掛かり、何とか倒れずに済んだ。立ちくらみはそう長くは続かず、体感時間にして3秒程だった。


 目を開けて圭の方を見ると寄りかかる場所が無かったようで、片膝立ちになっていた。


「圭も聞こえたか?今の声」


 圭に手をかしながら話しかける。


「ああ、最初のステータス獲得した時に聞こえた声と同じやつだろ?第二段階とか言ってたな」


 聞こえた言葉は同じようだ。


 周りを見渡してみると会社帰りのサラリーマン風の男性が壁に手を付きながらキョロキョロしていた。朝も見かけたような気がする。


 何も知らない一般人(ステータスを獲得していないであろう人)にも聞こえてるようだ。


 目があったから取り敢えず会釈をしておく。


 サラ男は疲れによる幻聴だとでも思ったのか歩いて行く。


「遥輝、なんか変わったことあるか?」

「いや、今のところn」


「ぎゃあア゛ア゛ア゛ッ」


 今のところない、と言おうとしたところを、断末魔に遮られた。声の方に目をやるとサラ男が曲がり角1歩手前で緑の何かと倒れていた。


 緑のそいつが離れるとサラ男の首元から鮮血が吹き出た。暫く痙攣すると動かなくなった。


「うぷ」

「……」


 いくら赤の他人と言えど、目の前で殺害されては食べた物が出てきそうになる。


 サラ男が息絶えたのを見届けた緑はニンマリと汚い笑みを浮かべ、血の滴る短剣を持って近付いてくる。


「圭」

「早く逃げるぞ遥輝」

「でもアイツ曲がり角から急に出てきたよね。俺達が逃げた所で鉢合わせたら…」

「じゃあなんだ!お前がゴブリンを倒してくれんのかよ!」


 ゴブリン…ゴブリンね。ファンタジーの定番雑魚モンスターとして有名だけどいざ対面すると緊張感が半端じゃない。


 圭も焦りからか苛立っている。無理もない。目の前で人を殺した奴が近づいて来てるのだから。


「鑑定してみる」

「鑑定して何になるんだよ!早く走れ!直線の道走ってりゃあ大丈夫だろ!」


 手を引っ張られながらも鑑定をかけておく。



 ゴブリンソードマン



 ゴブリンの頭上にそれだけ表示された。鑑定Lv.1だと名前だけなのか。


 本当になんの意味も……叡智に聞いてみよう。


『短剣を持ったゴブリン。知能が低く、筋力は人間の7,8歳に相当します。倒すと稀にゴブリンの短剣を落とします。ゴブリン種の中でも下位に位置します』


 いや、全く役に立たない訳ではなかった。

 ある程度の強さは分かった。


 俺達は曲がり角の10メートル程前で止まった。

 これ以上行くと他の個体と鉢合わせした時に対処出来なくなる。他に居るかは分からないが。


 後ろを振り返るとゴブリンソードマンが追ってきている。足はそれほど速くないため、距離がある。それでも冷や汗が止まらない。


「ゴブリンソードマン、身体能力は8歳程度で知能は低い」


 圭に端的に情報を伝える。


「結局鑑定で調べたのか。まあ有難い情報だわ」

「叡智にも聞いた。そんな手間じゃないからね」


「戦うしかないか」

「逃げて出会い頭に刺されるよりかはましでしょ。2対1だしポテンシャルで言っても俺らの方が上だから勝てなくは無い」


「でもどうする、相手は刃物を持ってるのに対し俺らは素手だぞ」

「バックでナイフを受け止めるか叩いてバランス崩したところを抑えるか」


 ゴブリンソードマンがあと20メートル程のところまで来ている。


「分かった。俺がバックで殴るから遥輝は後ろで準備してて」

「悪い、気を付けろよ」


 圭は「任せとけ」と言うと深呼吸をし、バックを横に構えた。右から左に振り抜くつもりだろう。俺も息を整える。


 ゴブリンソードマンは圭から2メートル程の距離まで来るといきなり飛び上がり、両手で短剣を持って圭の首筋目がけて振りかぶる。


 圭は、ジャンプすると思っていなかったのか、咄嗟にバックを目の前に構え、短剣を防ぐ。幸い、教科書のお陰か貫通はしなかった。そしてそのまま後ろに倒れ込む。


「圭!!」


 俺は圭に駆け寄り、すぐ側に落ちているバックから短剣を引き抜こうとしているゴブリンソードマンを蹴飛ばす。


「大丈夫か?!」

「痛たたぁ、肘の皮擦っちまった。それより奴は?」


「ギィギィィ」


「なるほど、武器は離れさせたか。俺が足止めしてるから遥輝はそのうちに短剣でコイツを殺ってくれ!」


 確かに、武器さえ奪い取れば怖いものは無い。


 俺は急いでバックから短剣を引き抜く。短剣の切先が1番外側のノートに刺さっており、簡単に抜けた。


 握り(グリップ)の部分は茶色の皮が巻かれ、刀身は30cmくらいだった。


 圭の方に目をやると丁度近付いて来るゴブリンに回し蹴りをしていた。


「ギィゲェェ」と声を上げ、アスファルトに転がるゴブリンの胸に短剣を突き刺す。返り血が顔に付く。筋肉が押し返そうとする感覚が短剣を通して手に伝わり、今にも吐きそうになる。


 短剣を抜くと返り血の比じゃない量の血が吹き出してきた。


【経験値を獲得しました】


【必要経験値量に達し、レベルアップしました】


【必要経験値量に達し、レベルアップしました】


【ゴブリンソードマンの初討伐を確認。初討伐報酬 50SP(スキルポイント) or 低級回復薬 を選択可能】


 システムさんの声が聞こえると目の前のゴブリンソードマンの死体と手元の短剣から光の粒子が出始め、次第に消えていった。


 代わりに死体があった場所には小さな薄紫色の石とさっきまで俺の手にあった短剣が落ちてあった。


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