10.狼の短剣
少し空いたので軽くあらすじ
ほ「腹減った」
は「コンビニいこ」
vs狼
狼「Graaaaa」
あ、ドロップ品だ
【熟練度が一定に達し、鑑定がLv.3になりました】
魔石を鑑定したところで聞こえてきた。さて今度は何が変わったのやら。
レッサーブラックウルフの魔石
レッサーブラックウルフの牙
〔素材〕 一般級
例によって魔石は何も変わらなかったが、牙の方には〔素材〕と表示されるようになった。レベル3に上がったことでアイテムの分類が分かるようになったみたいだ。
「やったー、レベル上がった!」
「おめでとー。ところで圭、これ素材みたいなんだけど何か作れないか?」
北條さんのレベルアップをあしらいつつ、圭にレッサーブラックウルフの牙を手渡す。
「俺の作成のレベルが低いからかも知れんが、これだけじゃなんも出来んな」
「あと何が必要なんだ?」
「同じ牙もう一本と鉄、ウルフ系統の魔石1個で武器が作れるみたい」
「効果とかは分かるか?」
「いや、パッとレシピが思い浮かんだだけで後は何も分からん」
「まあレベル1だからしょうがないな」
「そういえば北條さん、初討伐報酬は貰えそう?」
「うん、レッサーブラックウルフの毛皮か牙のどっちかを選べって」
「ちょうど良い。牙はこれで集まるから後は鉄だね」
「じゃあ牙を選択っと」
相も変わらず低級回復薬のように、光の粒子が集まってレッサーブラックウルフの牙を形作った。
牙は圭が保管し、魔石は俺が回収した。漆畑さんが荷物持ちを申し出てくれたが、魔石なんかは鑑定をしないと見分けがつかないと言って断っておいた。
次の戦闘では漆畑さんにも手伝って貰おうかな。本人が何もしてないことを気にしてるみたいだし。
「コンビニ入ろうぜー」
圭がみんなに声をかける。入口付近の血溜まりを跨ぎ、中に入って行く。
臭いは気になるけど、その光景にはもう慣れてきた。昼まで普通の高校生だったのに、人間変わるもんだな。
「お、結構残ってんじゃん」
惣菜、主に肉類が袋ごと食い散らかされていた。間違いなくさっきの狼もどきの仕業だ。苦労せずに肉に有りつけるんだから、よっぽどここを守りたかったんだろう。
「ショーケースのホットフードは無事、飲み物も残ってるな」
「電車は動きそうに無いし今日はここで寝ちゃう?野宿よりは断然ましっしょ!」
「それがいいね。洗面所もあるし制服を洗って乾かしておきたい」
「じゃあ俺のも一緒によろしく〜」
「日本語喋ってくれ」
流石に疲れているらしく、圭が俺の理解できない言語で話かけてくる。
「流石に血腥いから床拭かないか?」
「さんせーいっ、鼻がもげそうだよ」
幸い雑巾なら置いてあった。こんな状況だから今更感もあるが、一応レジに雑巾の代金を置いておく。後々、混乱が収まってから窃盗で捕まってはシャレならん。
結局ジャンケンで俺が拭くことになり、完全にはとれなかったが、かなりキレイになった。
「ねぇねぇ、コレ食べてもいい?」
ショーケースの中のチキンを指して北條さんが聞いてくる。
「いいと思うけど、一応お代だけ置いておく方が良いと思うよ」
「はいはーい」
そんなこんなで各々が物色し始めた。時間は夜の8時前、各家庭にも寄るが、ちょうど夕食の時間だ。
「圭、この金具なんかも素材に使えないか?小さくとも鉄だし」
「足りないな。まあ全部使えばギリギリ足りるかもしれん」
「買っとく?」
「そうだな。武器が1本だけじゃ心許ないから早めに作っておいた方が無難だな。」
全部買ったら3000円くらいか。コンビニということもあり、高いっちゃ高いが、背に腹はかえられない。少しくらいちょろまかしてもバレないだろうが、罪悪感が残るので、みんなで割り勘することにした。
「それでどうするんだ?」
圭は「ちょっと待ってくれ」と言うと、金具、牙2本、レッサーブラックウルフの魔石を1箇所に集め、手をかざす。
「作成」
すると、素材が白い光の球に包まれ、光が消えた時には1本の短剣が現れていた。ただ、ゴブリンの短剣とは違い、刀身40cm程で黒ずんでおり、少し湾曲している。
銘無し (作成者:太田圭介)
〔武器〕 一般級
銘無し?ドロップ品じゃないから自分たちで名付けろと?
「へぇ、少し素早さが上がるみたいだ」
「え?性能わかるの?」
「俺が<作成>で作った物は分かるみたいだな。具体的には 素早さ+4 攻撃力+2 って感じだ」
「比較対象が無いからわかんねぇ」
「銘はルーヴダガーとかどうよ」
圭が銘付けた後、再び鑑定すると短剣の上にルーヴダガーと表示された。
「じゃあコレは凛が持つってことでいいかな?」
「「いいと思う(います!)」」
「え!なんで私?圭の方が強いし作ったのも圭じゃん」
「でも牙も魔石も集めたのは凛だし、漆畑と2人の時に2人とも武器無いのはまずいでしょ」
「うーん、みんながいいんだったら有難く貰うわ」
ということでルーヴダガーは北條が持つことになった。気を取り直してお食事タイムと洒落こもうじゃないか。
今夜の晩御飯はシーザーサラダに焼き鳥、おにぎりだ。炭酸飲料も嗜みつつ、みんなで談笑をする。
時間はあっという間に過ぎ、時計の短針は10に差し掛かっていた。その間、誰もコンビニには入ってこなかった。
「いくら田舎でこんな状況つっても1人も来ないのはおかしくないか?」
「いや、こんな状況下でわざわざコンビニ行く程切羽詰まってる人なんて居ないだろ」
「うーん言われてみればそっか」
「そろそろ寝ないか?見張りも必要だから早めに寝ておきたい」
「そうだな。見張りの順番はどうする?北條と漆畑も何か要望があったら言ってくれ」
この2時間で敬称はやめようってことになった。なんでも、距離を感じちゃうとかなんとか。
「じゃあうちは最初が良い!今はまだそんなに眠くないからね」
「私は2人で見張りしたいです。私一人じゃ不安なので」
「そしたらうちと葵ちゃんは一緒に見張りやるー」
漆畑さんはまだ戦闘をしたことが無いので俺としても一人で見張りをやってもらうのは不安があった。
「良いと思うよ。ただそれだと人数が足りなくなっちゃうから2人で3時間やって貰っても良いかな?」
「あ!自動ドアの電源落とせば良くね!?」
「圭にしちゃあ冴えてるな」
「だろ?」
寝る前に裏口にも忘れず鍵をかけ、自分の周辺の床も水拭きした。初めての同年代の女子との夜をこんな硬い床の上で過ごすことになるとは…
それでも疲れに疲れた俺は、カバンを枕代わりにすると、直ぐに意識を手放した.....
━━━コン
━━━━━━━コンコン
乾いたノック音が聞こえ、目を覚ます。辺りはまだ暗い。
「...」
周りを見渡してみるが、圭はまだ寝ており、奥の方で寝ている北條と漆畑の方からも音はしなかった。
ふと外に目を向ける。街灯に薄く照らされたソレは、電源を落とされた自動ドアの前に立っていた。
「うわっ!」
暗闇の中、急に視界に映った骸骨に驚き、思わず大声を出してしまった。
「どうした遥輝~。うるせぇぞ」
圭を起こしてしまったようで、目を閉じたまま言ってくる。
「早く起きろ!モンスターだよモンスター」
「うーん」
まだ寝惚けているのか、適当な返事が返ってくる。
「いやマジだから!」
「倒しておいてくれ」
俺達のやり取りが聞こえ、女子2人も起きてこっちに来る。
「どうしたの?」
「あれだよあれ!ほら骸骨が……ってあれ?」
自動ドアの方を指差し、骸骨が居ることを伝えようとするが、そこには何も居なかった。
「戦闘のし過ぎで夢に出てきちゃったんじゃない?」
「でもコンコンって音で目が覚めたんだけど。気の所為ならいいんだが·····」
今日1日で4回も戦闘したのだ。おまけに最初は素手vs刃物だ。幻覚、幻聴もおかしくない。
そう納得し、再びに眠りについた。
間が空いてすみません。
これからも稀に更新ペース遅くなります。それでも良ければ本作を今後ともよろしくお願いします。
すみません!今日出す予定でしたが書き終わりらない説が濃厚です。明日になるかもです。