27 お手伝いの気配
「ナナさんのご負担にならないよう」
と馬車に乗せてくれたナイソックさん。
どちらかといえば、ぴゅっ、と王都に行ったほうが早い。けれど、ご厚意なのだろうし、みなさんを置いて先に行ってもしょうがないしね。
それに、ここで昼寝ができるわ。
馬車の箱に乗り込んでわかったのは、ナナヒカリさんと一緒に乗ったものとはちがうということだった。うちの馬車よりもかんたんなつくりだ。
でも、がっしりしているというか、壁も分厚くて、これはこれでよいものなのかもしれない。
「ナナ様」
メイが言った。メイは私のとなりに、ガドは、向かいの席の、ナイソックさんのとなりにいる。
「どうかしたの?」
「馬車は、こわくないですか?」
メイは真剣な顔をしていた。
「こわい?」
「だいじょうぶです、今度は、盗賊も来ませんから」
「盗賊? ああ」
たしかに、昨日は馬車に乗っていて盗賊がやってきた。
でも、ナナヒカリさまもいないし、王都の兵隊の馬車を襲う物好きな盗賊もいないだろう。
窓の外を見る。街道の横の草原が流れていくようにきれいだった。
「盗賊の人たちは、もうこのあたりにはいないのかしら。それとも、まだいて、こういう馬車を狙っているのかしら」
「こわいことを言わないでください」
メイが言う。
「メイが言ったんじゃない。本当にこわいことになるより、こわい話をするだけならいいでしょ」
「ううん?」
メイが首をかしげた。
「あら?」
私はメイにぐっと近づいた。
「ど、どうしましたか?」
「あれ、なにかしら」
窓の外、ずっと先のほう。
街道から外れた、草原の向こうの方、草もあまり生えていないあたりに土煙のようなものが見えた。
「馬でも走っているのかしら」
「あれは」
ナイソックさんも、自分の側の窓に近づいた。
それから御者台のほうに行くと、なにか話をしていた。
すぐにもどってくる。
「どうされたの?」
「……あれは、魔物かもしれません」
「魔物? こんなところにも出るの?」
「いえ、ほとんど聞きません」
ナイソックさんの表情は、あまり変わっていなかった。
「私の家もあぶないのかしら」
「いえ、かなり離れましたし、お屋敷から道が下っていました。あれが接近したとしてもかなり早い段階で気づけるでしょうし、撃退も容易なはずです」
「そうなの?」
「ええ」
ガドは短く言った。
「ただ、あまりよいことではないですね」
「あら」
気づいたら、魔物の方に、誰かが馬で向かっていった。
魔物は私たちと平行に進んでいたけれど、馬に気づくと、こちらに進路を変えてやってくる。
「だいじょうぶかしら」
「戦うわけではないので」
ナイソックさんは言った。
そのとおりで、土煙を上げていた魔物に近づいていった馬と人は、しばらく近くで走ったあと、それぞれ別れた。
魔物は街道とは反対方向に行ってしまって、馬と人はもどってくる。
「魔物には、帰ってもらいました。積極的には近づかないでしょう」
「そんなことができるのね」
「できる相手、場合がありますが、あまり強くない魔物ならたいてい成功します。いま王都に鳥を飛ばしたので、その連絡を受けた王都の警備兵が、このあたりを詳しく調査するでしょう」
「倒さないの?」
「魔物が人間の近くにいなければ、それでいいですから」
「そうなのね。そういえば、あの町でも、来たり、来なかったり、という感じだったわ」
「あの町とは?」
「私たちが、荷物を運ぶお手伝いをしたの。ねえガド?」
「はい。ターシという町です。ふだんはあまり見かけないウォールホーンに悩まされていました」
「そうですか」
ナイソックさんは、ガドの言葉にうなずいた。
「いろいろな場所で、魔物が増えているのかもしれないわね」
「そうですね」
ガドは言ったけれど、なにか考えているようだった。
そのとき、コツコツ、と窓で音がした。
ナイソックさんが窓を開けると、外を走っている馬の人が声をかけてきた。
「隊長、王都から連絡がありました」
「返事が早すぎるだろう」
「いえ、王都が魔物に囲まれているそうです」
「なに?」
なに?




