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異世界の村と俺の正体

しばらくしてシェルが戻ってきて直ぐに村長に会いに行く事になった。外に出ると活気のある声が響き合い、たくさんの人が行き来している。

殆どがヒトに見えるがチラホラ獣の耳がついていたり、顔がトカゲや牛だったり、見た目はヒトなのに肌の色が緑や青だったり、牙が口からはみ出してたり等、いろんな人が歩いていた。


そんなのテンション上がるに決まっている!!俺は周りをキョロキョロしながら村を見た。

人だけでなく、そこいらの家も前世とは大きく違う。木で出来た家から、木をくり抜いて造ったような家、土で出来た家に、テント状の家。

穴?地面に扉だけがついていて周囲に囲いがしてある家。聞いたら地下に部屋があるんだそうだ。そして池に囲いがしてある家。これまた水の中に部屋があるんだそうだ。ちょっと理解できなかった。

さまざな種族の適した家が用意されていると聞いて、納得するしかなかった。


そんな中、あからさまにでかい建物が見えてきて興奮した。


「あれは闘技場かなんかか?」


見るからにデカイ。東京ドームと同じ…それ以上かもしれなかった。


「まあ、そんなようなものだ。ただ学校、病院、避難所、ギルド…仕事の割り振りするための組織だな。その本部でもある。後はリョウセイカツも出来るようになっているんだ。この村の中枢を担う場所だ。」


「へー。なんか凄いな。」


「だろー。遠い昔、勇者が残した遺産を参考に造られたんだが、種族を気にせず共に助け合うからこそ出来た建物だ。この村のシンボルでもあるんだぞ。他国や他の街、村では実現できなかった建物だ。」


そんなこんなで村の案内をしてもらった後、村長のいる建物に案内された。


受付等はキリに任せて、ただ着いていき村長の部屋へと案内される。


「おう。来たな。この村の村長のバルタリアだ。よろしく頼のむ。」


見た目20台後半くらいの男性が笑顔で迎えてくれた。金髪で爽やか系。整った顔なのにさらにちいせい。王子キャラみたいな人だ。


「はじめまして。ユウキといいます。この度は何処ぞの者か分からないにも関わらず助けて頂きありがとうございました。」


俺はお辞儀をして礼を正した。元軍人の所為で所作に機敏に動いてしまった。


「あ…ああ。気にしないでくれ。まるで帝都の騎士みたいな礼だな。そっちの出身かい?」


「いいえ。私に今世の記憶はありません。自分の名前すら覚えてません。生まれる前はユウキという名前だったのでそれを名乗っています。」


「報告は聞いているが…。まあ、いい。それよりも先に確認したいんだが。眼帯を外してくれるかな。」


「え?」


俺は意味がわからなかったが言われた通りに眼帯を外した。左眼が見えた事にホッとしたのも束の間、左眼が急に凝縮する様な違和感が現れて、頭にいくつもの情報が流れ込んでくる。情報の多さに頭が痛い。


「やはりか。ちょっと眼帯を貸してくれ。後、鏡で自分の左眼を見てくれ。」


言われた通りに眼帯をわたして、部屋にある姿鏡で自分を見た。左眼が黄色く輝いているのがわかった。眼が人の目と違う。まるで竜の目の様だ…なんかカッケー!!痛みに堪えながらもそんなことを思う自分がイタイと思ったが仕方ない。


「眼帯をしていいぞ。」


俺は眼帯を返してもらい急いで眼帯をはめると左眼の違和感がなくなる。ただ頭は痛いままだったが。


「ところで、部屋の周りの人達はなんですか?俺たちを見張ってる様でしたが。」


バルタリアは一瞬、目を見開いて俺を見たがすぐに目を細めて俺を見た。


「ふー。開眼は初めての様だったがもう使いこなすとは凄いな。予防策と紹介をしたかっただけだ。バレてるならいいかな。みな中に入れ。」


バルタリアの一言で、ミノタウロスの男性?エルフの女性と少女の2人、獣人族の少年、褐色肌の男性、女性が2人入ってきた。


「では自己紹介してくれるかな?」


バルタリアの言葉に従い、ミノタウロス族のバキさん、やはり男性だった。そこから始まり、エルフのシィと少女の方がリリ、獣人族のヴォル、褐色肌の魔族の男性がグリタール、女性がサリーヌと自己紹介されて、改めてユウキと名乗り挨拶を交わした。


「バキは狩組の隊長兼戦闘訓練の指導員だ。シィは村の警備隊の隊長兼農牧の隊長。グリタールとサリーヌは私の補佐で村の運営を任せている。施設に関しては彼らに聞くといい。それとシェルが学校や戦闘訓練の指導責任者だ。困った事やこの村に住む上で相談する場合は、それぞれの担当者に聞いてくれ。」


「わかりました。」


正直覚えていられるか自信がない。


「よし。では行っていいぞ。グリタールとリリ、ヴォルは残ってくれよ。」


呼ばれた3人以外が部屋から出て行く。取り残されたリリとヴォルは不安げにしながら頷いたが顔が強張っていた。


「ではグリタール。結界を頼む。」


「はい。」


部屋全体が一瞬青く光った。


「よし。では本題に入ろう。」


バルタリアがそう言うと、両眼が黄色く輝く竜の様な目で俺を見ていた。……俺と同じ眼だった。それも両眼。


俺が驚きで固まっているとバルタリアが話し始めた。


「どうやら君は私と同じ龍神族の末裔らしいな。ただ君は私と違い混血だろうが。恐らくだが魔族かヒト族との末裔だろう。

龍神族はかつて魔王を出現させた事により滅ぼされた種族だ。だからこれは秘匿事項だ。決して他にもらしてはならない。そこの2人も頼むよ。ここが戦場になっちゃうからね。」


「はっ…はい!」


ヴォルは怯えながらも声を出したが、リリは恐怖の余り頷くしか出来ていなかった。


「よし。ただ君はそれ以外にもなんかあるみたいなんだが…。何が秘匿されてるかはわからないが、もしかしたら君の本来の記憶、人格かもしれない。解除は出来るがどうする?」


まだなんかあるのかと驚愕したまますぐには言葉が出てこなかった。


「おっお願いします。」


考えたが情報が無さすぎて決めれないのならいっそやってもらう事にした。自分の事を知る手がかりならこれに縋るしかない気がしたからだ。


「いいのかい?もしかしたら君は私達の敵かもしれないんだぞ?」


「まあ…それは嫌ですが、一度は無くした命ですし、助けられた恩もあります。何より前世のですが妹にも会えました。みなの迷惑にはなりたくないですから。慣れ親しんだ後に人格変わる可能性があるままだと俺としても嫌ですからね。今のうちかと。」


バルタリアはまた驚いた顔をしたが、なんか悲しそうに笑った。そして、俺の目の前に立って左眼を覆う様に手を添えられた。


「随分と物分かりがいい事だな。見た目はまだ成人したばかりだと言うのに…。大人びた考え方が出来て周りに気遣いをしてくれるとはなんとも惜しい。

是非ユウキには変わらずに私達の仲間になって貰いたいもんだ。」


「…はい。変わらなかった時にはよろしくお願いします。」


まだ知り合って時間は立っていないがこの人は信頼できると思った。


「…わかった。そのペンダントを解除してから目を瞑ってくれ。」


「んー…はい、わかりました。」


まだ魔力制御できてないんだが、良いのかわからなくて戸惑いながらも解除してから目を瞑って魔力が溢れ出ない様に念じる。


「まだ、魔力制御がうまく出来ないみたいだな。…ではいくぞ。」


左眼に熱を感じる。しばらく眩しく思いながらも我慢した。思考には今のところ何も変化はない。だんだん光が弱まりなくなった。俺は俺である事にホッとした。


「終わりましたか?自分的には何も変わらないみたいですが。」


「そうなのか?んー。まさか………眼帯を外してくれないか。」


「え?……はい、わかりました。」


正直、疲れるから嫌だったが眼帯を外した。さっきと違い安定していた。解除したからなのかはわからないが情報は自然と頭に蓄積されていき詰め込まれる感覚がなかった事に安堵した。


ただバルタリアさんの驚いたままヨロめきながらも自分の椅子に腰をかけ、頭を抱えた姿を見て不安が一気につのった。


「お前は本当に何者なんだ?様子を見る限り本当に自分の事はわかってない様だが…。お前は魔王であったリギルド様が持っていたという魔眼を持っている。この魔眼は龍神族でも王家にしか出ない遺伝特異だ。」


黙っているバルタリアの代わりにシェルが説明してくれた。魔王と同じと言われて最悪の想像しかできなかった。俺のこれからはどうなるんだろかと不安でいっぱいになった。


「…そう言う事だ。シェル、悪い。ありがとう。後は私が説明する。私とユウキは親戚同士らしいな。私も王家の血筋だ。まあ開眼はなかったがな。それにしてもこのタイミングでか…。記憶がないなら知らんだろうが、今年は予言の年なんだ。その予言は今から500年前にハイエルフ族の予言者によって告げられた。内容は亡し魔王、4月が赤く染まりし下限の時、種々多望の弟子等、血に染まり大地を汚し時、大魔王導びかれん。といったものだ。具体的には復活とは予言されてないんだが、ヒト族とハイエルフ族は魔王が復活、もしくは新たな大魔王が出現すると警戒してるんだ。…まさか君が大魔王なのかもしれない訳だ。」


「……いやいや。ないですよ。確かに前世では元軍人でしたが、あー戦闘員って意味です。たかが一般兵でした。そんな俺がそんな大それた存在とは思えないんですが。」


突然のことに頭が追いつかないが、生まれ変わった直後に魔王なんて言われても困るし迷惑でしかない。


「いや、ある意味当たってるんじゃないか。君には私達の知らない戦闘術や戦場の駆け引き、罠、様々な事を知ってる訳だ。さらに今からこの世界の戦闘技術等を学んだ場合、最強だろう。それに魔王と同じ力まで持つ資格がある訳だ。」


バルタリアの言う事には一理あるかもしれない。一般兵ではあったが、様々な戦場で戦をした経験は間違いなくある。戦況次第では奴隷部の隊長も務めたこともあったし。


「そう言われても今の段階ではなんとも言えませんし、俺はもう戦争は懲り懲りなんですよ。俺は家族やたくさんの仲間を失い、自分の生まれた国まで亡されました。最後はマリカ。前世の妹が死んで、俺は死ぬことしか考えれなくなっていた。やっと死ねて、なんかの運命かマリカに再会できた。今の俺は目の前の大事な人を幸せにする事に専念したい。国同士、種族同士の戦争なんて関わりたくありません。」


俺は今の、今世の望みをバルタリアに伝えた。言葉に嫌悪感が含んでしまったのは申し訳なく思いつつも抑えられずにぶつけてしまった。


「んー…そうか。しかし世界はそれを良しとはしないだろう。まあ、君がこの村に来たのも運命なんだろうな。」


言っている意味が理解できない。


「…?そうなんですか?」


「そうか。君は知っててこの村に来た訳ではないんだね。この村はね。私が戦争をしたくない人たちと作った中立の保護施設が始まりなんだ。どんどん人が増えて村になったんだけどね。だから君にとっても我々と暮らす事は利点があると思うよ。」


「この村が…ですか。なんか凄いですね。」


正直信じられなかった。仮にも本当だとしても、そんな村を他国や周りの奴等が黙って放ったらかしにするとは思えない。なんかしらの利害関係が成り立ってないとおかしい。


「信じられないかい?」


「大変失礼とは思うのですが、私も一応兵士なので。」


「なるほど…。君の前世ではあり得ない話な訳だな。相当、人外的な経験をしたんだろうね。」


「…そうですね。俺たちの出身の者たちの命の価値が底辺でしたから。支配されていた国以外でも扱いは同じでしたし。人としての扱いでは無かったんですよ。手を差し伸べてくれる団体や国も無かった。逃げれる様な場所なんてあの世界にはどこにも無かった。」


「なら無理にとは言わないが、この世界の事、この村の事を学んで実際にみてから判断してくれれば良いんじゃないか?我々は戦争しない、介入しない。ただ命は助ける。これはこの村の基本方針だ。出て行く事には何も言わない。残る者には全力でサポートする。戦争の斡旋した者は死刑なんだがね。まあ、いろいろ見てくれ。」


「はい。そうさせていただきます。よろしくお願いします。」


「ああ。こちらとしても別の世界の防衛法など知りたいな。出来る限りでいいから助力を頼みたい。守りには自信があるんだが万全な訳ではない。」


「はい。これから世話になる訳ですし、マリカがここに住むのなら助力を惜しみません。出来る限り協力させて下さい。どこまで役に立てるかは保証出来ませんが…。」


「いや、それで構わないよ。じゃあ、先ずは仕事をしながら学ぶといい。それが落ち着いたら協力頼むね。」


「はい、わかりました。よろしくお願いします。」


「その為になんだが、今後私の種族の事も関してを含めて君の事も極秘にしなくてはならない。バレたら、それこそここが壊されてしまう。その補助をここにいるメンバーにお願いしようと思う。キリを中心として、他のみんなは共に過ごしてもらいたい。この村の生活や世界を学ぶのを手助けをしながら、秘密がバレそうな時の妨害、報告を頼む。」


「え!?」


「………っ!!!」


ヴォルとリリが驚愕の顔でバルタリアを見ていた。


「もちろん。ただとは言わない。もちろん、別途報酬は用意するから心配しないで。シェル、3人の紹介してから役割分担やもしもの対策などの打ち合わせ頼んだぞ。マリカは平気だろうが、2人には悪いが拒否権は無いからね。もう秘匿情報教えちゃったし。」


2人が青い顔で俯いてしまった。


「…わかりました。」


「…はい。」


2人が渋々答えるもんだから罪悪感が半端ない。


「いや、2人とも無理にとは…。「ユウキ。それは無理だ。2人の協力は必ず必要だ。能力的にも人柄的にもね。私もそうだったしこれからもそうなんだが、暮らしてく上で人の助けが必要だ。我々種族はバレたら戦争の道具にされてしまう。それも今まで以上に酷くなるだろう。我々は多種族にとっては特別な存在だ。バレてはいけない。」


「…わかりました。悪いがよろしく頼む。」


俺は2人に頼み込み、シェルとマリカにも頭を下げた。


なんだかんだ了承してくれてホッとした。話はそれで終わり村長の部屋から5人で出て、食堂へと向かい顔合わせをして交流を深めた。


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