8人の鎧
3羽並んで、有難くママンのお話を聞く。
あれあれしかじかこうこうで、ふむふむ、なるほど、ぴよ〜ん。
…
ママンの話を要約すると、こうだ。
私たち魔物は、人間を見ると理性が飛び、自分の意思でなくとも襲いかかってしまうらしい。
人間を殺しきるか、自分が死ぬかしないとそれは解けない。
ママンは比較的人間に友好的な気持ちはあるが、それでも人間を見ると理性がぶっ飛んじまうんだと。
目からウロコすぎる。そんな、そんなのってないよ。私は前世は人間だったんだよ…。人間を殺したくないし、殺されたくない。一生、森の奥深くのここで暮らすしかないのね。うぅ。
しょんぼりしてる私を、ママンやヒナ達は不思議そうに見ていた。
「クェ、大丈夫!ユリセリエルは弱いから人間と出会ったら殺されちまうけど。」
「クェクェ、こんな森の奥深くに人間は来ない。クエ!」
しょげてる私を、怯えてると勘違いしたみたい。バカにしたようにウィンカナとガラナードは嘲笑交じりに話してくる。くっ、こいつらは私より後に生まれたくせに、色の違う私を差別する!
「ぴよ!ぴよぴよ!」(ちがう!そんなんじゃない!)
話そうとしても、ぴよぴよ言ってるようにしかならない!どうしてなの!ゲラゲラ笑うヒナ達を、ママンが優しく諌める。私は悔しくて涙がでそうだった。
そして今、高い木の上にある巣の中で、息を殺してじっと待つ私。怖くて降りられない。飛ぶ魔法も使えないし。ママンが人間を殺しちゃうのも怖いけど。
カン!となにかを打ち付けたような高い音が鳴る。しかも、カン!カン!と連続して鳴り始めた。
う、なんの音…?この下から聞こえる…。
ビックリしたけど、声も出さずじっと堪えていた。
すると、目の前で急に火柱が立ち上がった。轟々と燃え上がり、10秒くらいで消えた。でも、巣に穴が空いてしまった。そして、そこから人間の手とおぼしきものが出てきた。
や、やばい。人間だ。どうしよう、ママンは…?パニックだよ!!助けて!ママン!
やがて人間は穴から這いずり出てきた。全身を金属の鎧で固められていて、いかにも強そうって感じ。顔も兜を被っていてよく分からないけど、目の部分は空いていた。そして私と目が合う…。あ、綺麗な青い瞳…。
はっとして私は目をつぶった。理性が飛んじゃう!殺されたくないけど、殺したくない!現代社会の日本人だよ!殺すくらいなら殺される方がいい!!でも、少しだけ見ようかな、なんて。
薄目を開けてみると、炎の刃が迫ってきていた。ぎょっとして反射神経的に横に跳んだ。
ナイス反射!ごめんなさい!嘘です!やっぱり生きたいです!
「ぴ〜よ〜〜〜!!」(殺さないで!)
必殺うるうるの瞳!涙目でうるうるして、可愛いヒヨコから上目遣いされたら保護したくなっちゃうでしょ!でしょ?
「なんだ、こいつは。おい!もたもたしてんな!早く上がってこい!」
あれ…効いてない…。やっぱり大きすぎたかな。
空けられた穴から人間がぞろぞろと上がってくる。総勢8人になった。なにやら作戦会議してる?心臓がうるさい、どきどきしてる。でも人間を見ても理性なんて飛ばないし、私は大丈夫なのかな?
鎧の人はみんな同じような格好をしている。最初に出会った鎧の人だけ、腕に赤いバンドみたいな印があるね。
「おい。」
最初に出会った鎧から話しかけられる。
「ぴよ?」(はい?)
そしてまたあっちは円になって作戦会議してる。なになに、私にも聞かせて欲しい。ゆっくり近づいてみる。そろり、そろり、
「ぴよ?ぴよ?」(ねぇねぇ、教えて教えて!)
ぎょっとしたように鎧たちは素早く、私を取り囲んだ。え、そんなに驚くこと?
「7番!檻だ!」
「は! ー水の精霊よ、我に力を与えたまえ。願わくば動きを封じる力を。ー」
詠唱なんてあるの!ママンはそんなこと教えてくれなかったなぁ…。あれ、檻って、もしかして私?
足元から水が立ち上がり、私を囲む。球体になってしまった。檻のように格子はなく、水の壁がそこに存在している。ボールみたい。クチバシでつっついてみる。
「隊長!内側から抵抗されております!力は弱くこのまま拘束できる模様!」
「よくやった7番!このまま城まで持ち帰るぞ。どのくらい持ちそうだ?」
「は!あと1時間は持ちます。」
「ふむ。8番と7番は交代して野営地まで檻を継続してくれ。野営地まで行けば代替を用意する。2番から6番は、7番と8番の守護だ。」
「「は!」」
「よし、行くぞ。」
どうやらつついたの、抵抗とみなされたみたい。
どこに連れていかれるのかな。どうしよう。でも、前世が人間として、やっぱり人間と関わってみたくなっちゃうよね。ごめんね、ママン、ヒナ達。




