SOSは突然に
こうして平和に時が過ぎていくと思っていたんだ。
かつての自分が突然死んだように、変わらないなんてことは無い。そんなことも忘れるくらい何の変哲もない日々だった。
今日までは。
その日はいつもと変わらない。朝日が登ったらママンがご飯をくれて、勉強したり遊んだりしていた。
私たちヒナを見守ってくれているママンが急に警戒し始めた。一気にひりつく空気。
「ぴよ…?」(どうしたの…?)
「しっ。じっとしていなさい。人間の気配がする。」
人間…、遠い所に住んでいるって聞いたな。私たち魔物と人間は仲良くなんてない。ママンから人間は私たちを見かけると殺戮をする、悪魔だと教えられた。人間に見つからないよう生きる術も。
「ダメね。」
ポツリとママンが零した言葉。私たちは聞き逃さなかった。
「だめって、どういうこと?」
ガラナードが、ふるふると震えながら問う。
「人間は真っ直ぐこちらに向かって来ています。目的はまだ力の弱い貴方たちでしょう。愛しい子ら、貴方たちだけでも逃げるの。」
そんな…どうして…!!ママンと一緒じゃなきゃ、嫌だよ!!
「クェ、こわい、こわいよ。クェエ…。」
ウィンカナが震え声で鳴いてる。
私も怖い、どうしたらいいのかさっぱりわからない。このちっぽけな脳みそはいつも以上に働かない。人と魔物、話し合えないの?ママンが死んじゃうの?
「愛しい子ら、まだ教えたいことはたくさんあったわ。でも、それもここまで。さぁ、早くここから飛び立ちなさい!私が時間を稼ぐわ。」
ママンは、私たちの姿を焼き付けるようにじっと見つめて、それから飛び立って行った。待って、行かないで!!
「ぴよーー!!!!!」(お母さん!!)
「クェーーー!!!!」
ママンが振り返って笑ったような気がした。
残された私たちは、ふるふる震えながら巣から飛び立って行った。
私以外は。
ママン!!私、飛行魔法まだ使えないよ!?どうやって降りたらいいの!?
天高くそびえ立つ大樹のてっぺんにある巣から落ちる訳にも行かず。ただ長い時間を巣の上で過ごすことにした。だって落下ダメージ半端なさそうなんだもん。
誰か助けてぇ!!!




