人化
なんやかんやあって始まったお勉強会。
ママンとの勉強は存外辛くなかった。ま、成人ですし?
「ぴよっ。」(どやっ。)
「…。」ジロリ
ごめんなさい!
調子乗りました。あー!睨まないでぇ!!
前世での教養もあったし、なによりこの世界について学ぶという明確な目的が出来ることが嬉しかった。生まれ落ちてからというもの、ほとんど巣の中で食べて寝て、動いて食べて寝ての生活だったからね…。
前世では学校での授業なんて嫌い嫌いだったけど、自分の話す言葉の勉強なんてちょチョイのちょい(ジロリ
…ウソです!ごめんなさい!!
私以外のヒナ達も言葉の飲み込みが早かった。地頭が良いのね、きっと。
勉強会から何日か経って、ママンの話す言葉は分かるようになった。
「愛しい子ら、おいで。」
ママンの声がする。私たちのことを愛しい子と呼ぶの、ちょっと恥ずかしい気持ちがある。なんかこう、ね?ちなみにママンは勉強以外の時は巨体に戻っている。本を開くのに巨体では不便なんでしょ。
「お母様!」
「お母様!大好き!」
私以外のヒナ達が走って行く。かわいい。
「ぴよ!」(ママン!)
なぜか私は未だに喋れないんだけどね。そう、言葉は分かったが話せない。
私の考え的には鳥の声帯では話せないはずの言葉を、魔力とやらでなんとかしてるっぽい?ヒナ達とママンが話してる時は魔力を使うって言ってたから。
私もママンに習ってから、魔力を少しは扱えるようになってきたけど、なぜか言葉は話せずにいた。
そそそ、そんなに不便じゃないよ!?相手の言葉はわかるのさ、あっちが私の伝えたいことを分からないだけで。不便じゃ、不便じゃないんだからね!!!ぐす。
「お母様ー!!」ギュ
ママンの足元にくっつくヒナ。かんわいいい!癒される。
「ガラナード、ウィンカナ、ユリセリエル。愛しているわ。…ユリセリエル、貴方はまだ言葉が話せないのね。私の教え方がいけないのかしら…。」
「ぴよ…。」(そんなことない…。)
ぬわーー!!!そんな悲しい目で私を見ないでおくれ!!!私の不器用な、小さいカギヅメでは、文字を書いて伝えることもできないの。ごめんなさい…。
ママンの教え方は上手いんだけど…。
ガラナード、ウィンカナっていうのは、私以外のヒナ達の名前。
少し大きくなったけど、私には違いが未だにわからない、だって似てるんだもん。
声もそっくり、もう少し大きくなって頂かないと。
いや、大きくなったとて分かるかなぁ。全身まるっきり一緒に見える…。
そう、そして私はユリセリエル。前世の百合って名前と似てる。DESTINYを感じずにはいられない。名前はママンがこの前名付けてくれた。私はこの響き、結構気に入ってる。
「ユリセリエル、まだ話せないー。」
「クェ!変なの!」
私は少しむっとする。こやつら見た目はかわいいけど性格は悪いんだよねぇ!!魔法を使えない私をあからさまにハブってくる。
くっそ〜、2対1なんて卑怯だぞ!
「ぴよぴよぴよーー!!」(ぎったんぎったんのめっためったにしてやりたいーー!!)
「やめなさい、愛しい子ら。ユリセリエルは話せなくとも、言葉を解ってはいるのよ。近くにおいで、みんなでお勉強しましょう。」
「「はい!お母様!!」」
「ぴよ!ぴよ!」(はい!ママン!)
優しいママンだ…。愛してる。そういえば、ママンの名前教えて貰ってないな。私が話せるようになったら聞こうっと!
「今日は魔力の練り方を教えるわ。見ててね。」
そう言うと人化ママンは、空を掬うように両手を動かした。何も無い、けど、確かになにかある。そんな気配だった。私とひな達は食い入るように見つめる。お、おお!なにか集まってきた!
「ここには魔力があるの。わかる?光っているでしょう。」
手のひらの上には、ぼんやりと光っているピンポン玉大のようななにかがあった。これが…噂の魔力ってやつですか!?
「ふふ…。これが魔力。貴方達に見せるように少し光らせてあるわ。いい、これをね、千切らずに伸ばすの。」
玉を掴むと、ぐいーんと左右に引っ張った。そして、畳む。ねり飴みたい、キレイだな。
「貴方達は、まだ私のように人化できないわ。人化というのは、人のような姿になるということ、今の私のようなね。だから、今のような魔力の練り方は自分の体の中で行い、外にださないよう留めておくの。そうすることで魔力が増えていくのよ。」ニコ
「お母様、人ってなにー?」
「人化したいよー!」
「ぴよ!」(人になれる!?!)
興奮し、バタバタと翼を羽ばたかせる。人化が覚えられたら、人に戻れるんじゃ…!!ふぉぉお!!!
てか、ママンが人化できてるからそうじゃん…。私はアホか。盲点だった。
「人っていうのはね、この森を出て、ずっと行くとある国の中に住む人のことを言うの。手、足があるから、細かいことをする時便利よ。まだあなた達には人化はしばらく難しいわ。魔力が全然足りないの、魔力が増えたあと教えるわ。」
「やったー!お母様、頑張るね!」
「お母様、こう…?」
「あら、ウィンカナ流石ね。もう出来てるじゃない。教えるのも時間の問題かしら、ふふふ。」
答えるママンの瞳は、優しい光をたたえている。
くっ、負けてられねぇ…。うおおおお出てこい魔力うぅううう!!
「ぴよよよよぴよよよよ!!」(うおおおおうおおおお!!)
「ユリエリセル。」
「ぴ、ぴよ?」(うぉ、うお?)
ママンは不意に私に向き直った。
「ユリセリエル、ごめんなさい。人化であって人になることではないわ。あなたは話せないけれど、私にはなんとなくわかるの。」
「ぴよ!?」(えぇ!?)
「人化と聞いて、あなたは誰よりも興奮していたわ。私の人化を見た時もそう。人に拘りがあるのかしら。…でも、焦らないで、あなたは大丈夫。さ、魔力を練る練習をしましょう。」
お、おおお!あのぴよぴよ言葉で通じていた…?ニュアンスみたいな感じって言ってたけど。ママン、さすが母親なだけある…!!
人に拘り、か。そうだと私も思う。人を目指しているの見透かされちゃった。
俯いて自分の姿を見る。見るからに人ではない姿。
人に戻って何がしたいという訳でもない。それでも目標にはなるよね。うん、頑張ろう!
魔力が上手く扱えない私が人化か。使えるようになるまで一体何日かかるんだか。ちょっとセンチメンタルになっちゃうよ。あーあー…。
よし、前を向いてがんばろう!!!
こうして日常の時間は過ぎていく。




