森のくまさん
空を見て微笑む白ローブの男の前まで、連れてこられた私たち。
このひよこボディは人間の体より丈夫だけど、さすがにフルボッコにされたら堪える。切り傷は翼の付け根のみ、あとは殴る蹴るの打撲が多量に。
正直、歩くと傷に響いて痛みが増す。
「魔のものの力は浄化されたようですね。えぇ、えぇ、もう抵抗する力は無さそうですね。」
ちらり、と私を見る。それから、エリシアの方を見て眉を顰めた。
「呪われた子供は、また聖なる祠まで連れていきましょう。呪いを浄化し、ルーサー様の慈悲を頂くのです。」
「ぴ、ぴよ!ぴぃぴぃ!」(そ、そんな!約束が違うぞ!)
「おやおや、ぴよぴよ騒がしいですよ。」
にこり、と私を見て微笑む。くそ、最初からエリシアを殺す気だったんだろ!そんなことはわかっていたけど!
あの時、抵抗したらエリシアは殺されていた。
なんとか、なんとかしなきゃ…!
「この黄色の魔物は、私が連れていきましょう。あなた達は呪い子を連れ、儀式を終わらせるのです。」
白ローブの男が懐から白い縄を取り出した。
「これは神罰のロープと言って、魔なるものを封ずる力が込められたロープなのですよ。さて、どう巻きましょうか。」
そのまま男は白い縄を両手で持ち、胸の前でピンと張って近寄ってくる。
…縄を巻く時がチャンスだ…。こいつを人質にエリシアだけでも解放してもらおう。こいつは余裕綽々、私に対して油断している。
あと3歩…、2歩…。
緊張して、男の動きがスローモーションのようにゆっくりに見える。歩くたびに揺れるローブの裾、両手でロープを持ち隙だらけの体。観察するんだ、一瞬でこいつを無力化するために!!
あと、1歩…!!
そのとき、男の後ろで2つの赤い何かが、光った。
「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!!」
メキメキメキ!!
木を薙ぎ倒して現れたのは、なぎ倒された木並にでかいあのクマだった。
目は充血して焦点が合っちゃいない。アレは、正気を、理性を失っている!
「ヘルズベアー!!!」
エリシアを抑えているローブ男が叫んだ。
白いローブ男は、吠え声が聞こえてからすぐにこの隊列の後ろに回っている。
逃げ足速いな、おい!
他のやつらはその場で硬直し、動けずにいた。
「そんな!ヘルズベアーはもっと奥地に生息しているはずでは!?」
「有り得ない…有り得ない、あんなもの、適うはずがない!おしまいだ…!うわぁぁあ!!」
クマから1番近い位置にいた男が泣き叫ぶ。
じろり、とクマが男を見た。そして狙いを定めたクマは河原を駆ける。
そして驚きに目を見開いた男に肉薄したクマは、右前脚を振り下ろした。
ぴよ、と私がつぶやく間もなく男はクマの鋭く太い爪に切り裂かれ、上半身は吹き飛び、下半身は血しぶきをあげながら地面に伏した。
その肉は後ろにいた私たちの足元に散らばり、血は頬を掠める。
「ガァアアアア!!!グルァァァ!!」
血しぶきをあげるが、尚もクマは満足しない。
両後ろ足で立ち、胸と両前脚を広げ雄叫びを上げる。ぎらぎらと血走った目で、焦点があっていない。
雄叫びを上げた口から、唾液が垂れる。右前脚は血に濡れて、てらてらと光が反射する。




