会話?
もそもそ、私の下でなにかが動いた気がする。
あの女の子が起きたっぽい!穴の上から動いて、覗き込むような姿勢になる。起き上がった女の子と目が合う。
あ〜、美少女だぁ。
神様は不公平だなぁ、私はヒヨコの魔物に生まれ変わらせたのに。
大きな目をさらに大きく見開いた女の子は、わなわなと口を震わせている。
「化け物…。」
ぽつり、と零した。
やっぱり、そうだよね…。もしかして仲良くなれるかも、なんて心のどこかで期待してた。あの女の子からしたら、突然現れた黄色い魔物に攫われたとしか考えられないよね。
がっくりと肩を落とす。肩はないけど。
「ね、ねぇ!」
「ぴ!」(わ!)
うわ、超びっくりした!びっくりして後ろに飛んじゃうくらいびっくりした!
穴から女の子を覗き込むと、女の子座りになって私に話しかけていた。
「ねぇ!魔物じゃ、ないんですか?言葉、通じますか?」
「ぴよ!ぴよ!」(できる!できるよ!)
木の葉から零れる光が、透き通った紫の瞳をさらに輝かせて、すごく綺麗だった。
やばい!会話できる!仲良くなれる!
嬉しくて嬉しくて、小躍りしそう!
女の子は四つん這いになって穴から出ようとしている。咄嗟に作ったから、割と急な傾斜になって、登りにくそう。
「ぴよ、ぴよぴよ!」(これ、掴んで!)
私は穴の中に短い足をつっこみ、一生懸命伸ばした。ちょっと間が空いて、私の足を掴んでくれた。引っこ抜くぞ、それ!
「ぴーよ!」(ふんぬ!)
「ふぉぉ、おお!!」ズリズリ
ちょ、女の子らしからぬ声が出てますよ。大丈夫?ごめんね、足短いから引きずるような形になってしまって。
あっちゃ〜、腹ばいになっていたから胸からお腹らへんまで、すっかり土が付いて汚れちゃってる。
「ありがとうございます…。う、ぺっ!ぺっ!」
口の中にも土が入っちゃったみたい、私から見えないように口から土を吐き出している。ご、ごめんよ!服の土を払って、少し身だしなみを整えている。それから、女の子は私の方に向き直る。
「あの、あなたは一体…?私を助けてくれたのですか?」
「ぴよ!ぴよぴよ!」(うん!そうだよ!)
ぴよぴよ言ってるようにしか聞こえない。これ通じてるのかな…。女の子は眉をひそめて、首を傾げている。絶対通じてない、どうしよう!
「あの、私の言葉はわかりますか?」
「ぴよ!」(わかります!)
あ、つい敬語で返しちゃった。敬語で話しかけられると、なんか敬語で返しちゃうよね!うん!
「うーん…。」
女の子はちょっと考えると、近くにあった木の棒を掴んだ。足元の落ち葉とかを払って、土を露出させる。
そこに、女の子は「はい」と「いいえ」を意味させる文字を書いた。
「これ、読めますか?」
私は「はい」をクチバシでつつく。
「おお!」と女の子が喜んでる。かわいい。
「私を、あの儀式から、助けてくれたのですか?」
儀式…?ちょっと儀式ってのは知らないけど、助けたのは確かだから「はい」をつついた。
「なぜ…。」と女の子が問いかけたけど、説明できそうもない。女の子は、俯いて、ぎゅっと眉をひそめ、唇を真一文字に結んでいる。辛そうなカオ、ちょっと震えてるし。次の質問を待っていると、急に顔を上げたもんだから、ちょっとビビった。
「私は、私は魔物を恨んでいるのです!でも、貴方は魔物だけど、私を儀式から助けてくれました!」
「ぴ、ぴよ。」(は、はい。)
女の子が私をまっすぐ見て話した。お、おう。
「い、今でも魔物は嫌いです、怖いです。でも、あなたは魔物だけど、命の恩人だし、感謝しています。だ、だから、その、貴方のこともっと知りたいです!たくさん質問して、いいですか!」
「ぴよ、ぴーよ?」(はい、どーぞ?)
つい言葉がでちゃった。「はい」をつつく。
それから、色んなことを聞かれた。魔物なのか、どうしてあそこにいたのか、何で緑の瞳なのか等。「はい」「いいえ」で答えにくい質問ばっかりだったけど、頑張って答えるようにした。
…そういえば、この女の子なんていう名前なんだろ。
私は棒を咥えて、「はい」「いいえ」の隣に自分の名前を書こうとした。む、むずかしい!書いたは書いたけど、グチャグチャで読めない!
女の子は覗き込んで、うんうん唸ってる。
「ゆ、ゆるえり?ゆるせり?…うーん。」
惜しい!ユリセリエルだよ!ごめんね、読みにくくて…。
私は、「名前」をつついて、私の存在を強調するように小さくジャンプする動作を繰り返した。
女の子はじっと私を見つめて、考えている。そして、「あっ!」と閃いた顔をした!
「もしかして、貴方の名前ですか!」
私は「はい」を何度もつついた。通じて良かった。
「なるほど!」と女の子も手を叩いて喜ぶ。
「えっと、ゆるえりですか?…では、ゆるせりですか?え、違う?じゃあ、ゆりせりですか?」
「はい」をつつく。エルの部分はわからなかったみたい、いつか伝わればいいや。私は「名前」をつついて、それから女の子をじっと見た。
「あ、私の名前…です、か?」
「はい」をつつく。
「私は…エリシアといいます。私は、呪われた子供なのです。」
呪われた…?どういうこと?わからなくて、首を傾げる。
「あなた…いえ、ユリセリ…さんのことばっかり聞いて、私のこと話して無かったです。ユリセリさんは、魔物だけど悪い魔物じゃない。だから、私の話、聞いて欲しいです。」
迷わず「はい」をつつく。エリシアちゃんの話、興味あるし、短い間しか話してないけどいい子だし優しいし真面目だし、仲良くなりたいよね!かわいいし!
私が今まで出会った人間が、特別ヤヴァイだけかもだけど…。
エリシアは肩ぐらいまである銀髪を、耳にかけた。み、耳がとんがってる!ファ、ファンタジー!エルフっていう種族なのかな?
「私は、呪われし亜人なのです。この耳も、目の色も、魔物と人間の間に生まれた証、らしいです。」




