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登山するひよこ

一眠りして、すっきり目が覚めた。

こんな土の上で寝ても体が痛くならないって、さすが魔物の体。人間の時はベッドで寝ても仕事の疲れが取れなかったのにね。


いそいそと穴から這い出て、ばたばた翼をはためかせ、土を落とす。


1回巣に戻ってみるか、と考えたけど、どうやって戻ったらいいのかな。空に飛べたらすぐに見えるのに、あんなに目立つ巣だもの。せめて高いところ…。あっ、木に登ればいける?…やってみるか。


あの背の低い木に登ってみよう。頑張ってジャンプすれば、枝に届きそうな気がする!低い木から高い木の枝に飛び乗って、上に突き進めば登れるんじゃない?


善は急げと、背の低い木まで走って行った。実際に見てみてわかった。え、枝が細い…。飛び乗っても折れちゃいそう…。


クチバシで枝の端を咥えて引っ張る。ポキ、と簡単に取れてしまった。これじゃ登ったらケガしちゃう。図体がでかいんだよ!もう!魔物の中では小さいかもしれないけど…。


目論見が外れてがっかりした、とりあえず残っている木の実を食べる。昨日と同じくらいの量を食べる。もうあんまり残ってない、残っているけど私が届かない位置にある。


他の実を探すか。とりあえず高い所を目指して行くしかない、坂道を登っていけばてっぺんに着くはず!今は行くしかない、頑張ろう!


それから私は上へ上へと歩き始めた。

歩き始めて3時間くらいのところで、水が流れる音がした。体感だからもしかしたらもっと短いかもしれないけど。


歩き疲れもあったけど、水が飲みたくて、音の方向へ向かってみる。案の定というか、小さな沢があった!しかも澄んでいてキレイ!でも、向こう岸にあのイノシシがいた。しかも3頭並んで水を飲んでいる。


あの人と戦っていたイノシシを思い出してしまう。理性のない、血走った目。人の足元でピクリとも動かなくなった血まみれイノシシ。

私は目をぎゅっと閉じ、頭を振るう。ネガティブになっちゃダメだ。

とりあえず静かに、ゆっくり近づいてみよう。


そーっと近寄ってみる。あれ、イノシシって草食だよね?肉食だったっけ…。ゆっくり、ゆっくり近寄ってみた。


距離にしておよそ残り10m付近。3頭のうち、1頭が水を飲むのをやめ、顔を上げた。


「ぴ、ぴよ!」(こ、こんにちは!)


「…。」


私とがっつり目が合っている、無視しないで!イノシシはじっと赤い瞳で私を見る。うう、こわい!!

そしてブモ、と鼻を鳴らしてまた水を飲み始めた。残り2匹は、さっと顔を上げて私を一瞥し、またブモと鼻を鳴らして水を飲みはじめる。


え、なんか、大丈夫そう…?そしてまたゆっくり、ゆっくり近寄ってみても、なんともない。やっと沢に来れた!透明でキレイ!

ピチャピチャと水を飲む。


「ぴよーーー!!」(うまーーーい!!)


「ブモ!?」ビクッ


天然水サイコー!!

調子に乗って水を浴びるほど飲んでいく。う〜、飲みすぎた。お腹がたぽんたぽん、みずっぱらになっちゃった。なんかイノシシ達から変な目で見られた気がする。ご、ごめんなさい。


イノシシ達は水を飲み終えると、私とは反対方向にブモブモ帰っていった。ナワバリが違うのかな、争うことにならなくて良かった。


それから私はひと休憩して、沢沿いに歩いて行った。上へ上へ。水の近くだからか岩場が多かったけど、見通しが良かった。

暗くなってきたら辺りの茂みに身を隠して寝た。鳥目なのかな〜、暗いところは得意じゃない。


水の近くだからか、木の実が成る木も見つけやすくて、食料にもありつけて。

他の魔物との出会いも時々あった!あの3頭と同じ種類と思われるイノシシ、人並みな大きさの兎や、超でっかいクマっぽいのも。


いつもみたいに、ひと休憩ってウトウトしてたら、木みたいにデカいクマが急に出てきたのはびっくりしたよね。私のことはチラ見のみ、水を飲んで帰っていった。本当に本当に死を覚悟した。油断禁物ってまさにこのこと。心に命じます。



それにしても大分上まで登ってきたんじゃないかな?

傾斜は上がってきたけど、そんなに登りにくいほどではない。気温も変わらなくて、過ごしやすいと思うけど、いい加減歩くのも飽きてきちゃう。

まだ見ぬ頂上に向けて、せっせと歩を進めた。


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