現実は厳しかった
音は聞こえるけど、水に遮られて周りは見えない。運ばれてるってのはなんとなくわかるんだけど。時間の感覚もわからない。
突然、水の壁がパッと弾けた。そして次の瞬間には透明な厚い空気の層に閉じ込められたっぽい。
1時間しか持たないって言ってたな、もう1時間経ったのね…。今度は外は見えるけど、音が聞こえにくい。
先頭に立つ赤いバンドをつけた鎧の人が、木々を押し広げて後ろを歩く人が通りやすいように道を作っている。時々後ろをふりかえって、なにかジェスチャーしてる。
合図的なそれがしですかね、気になります。
それにしても、巣の下を初めて見たけど、やっぱりThe森って感じだね。湿度はそこまで高くなさそうだけど、草とか蔦とかすんごい生えてて、歩きにくそう。陽の光とか少ししか入ってこない、上のはっばが厚いからかな。
あーあ、これからどうなっちゃうんだろ。
たぶんこのデカいヒヨコは珍しかったんだろうね、生け捕りにしてペットにでもする感じ?
そこからは、なんにも代わり映えのない景色だった。他の魔物と遭わないのは不思議だった。もしかしたら野生の魔物ってそんなに居ないのかな。
「ぴよ〜…。」(ふぁ〜あ…。)
代わり映えしなさすぎて、ちょっと眠くなってきた。ウトウトし始めた頃、鎧の人々の足が止まる。
たぶん、1番先頭の鎧が何かしたと思う。この先も森が続くと思われた景色が、私たちが通れるくらいの穴が空いた。その先には写真を切り貼りしたように、違う景色が続いていた。
「ぴよ!ぴよ!ぴよ!」(おぉ!すごい!これが人間の魔法!)
大興奮!すごい!この魔法はママンにも教えられなかった!認識阻害ってやつだよね?
少し拓けた場所になっているみたい。小さなキャンプ地みたいになっている。茶色いテントみたいなのがポツポツとある。中央にはキャンプなファイヤーが出来そうな重ねられた薪がある。
隊のだれかが薪の近くに土の檻を作って、私はその中に入れられた。しかも、無理やり右足になにか付けられて。たぶん、魔力を封じる系のアイテムだと思う。鎖みたいなもので、動くとジャラジャラする。
「ぴよ…。」
本当にこれからどうなっちゃうんだろ。もしかして、食べられる?いや、そんな事は無いと思うけど…。目の前にある重ねられた薪が、恐ろしく見えてくる。
赤いバンドの鎧が近くにやってきた。兜を外して、顔がよく見える。金髪に青い瞳、鼻も高いしほりも深い、外国人って感じの顔立ち。なんかニタニタして嫌な雰囲気。
「おい、魔物。俺を見ても何ともないんだな?」
じろりと値踏みするような視線を感じる。
「ぴよ?」
よくわからなくて首を傾げる。なんともないけど…?
「ふん、お前に俺ら人様の言葉は通じてるみてぇだな。気持ちわりぃ怪物が。お前は他の魔物と違うみてぇだからな、国に持って帰って調査してもらう。有難く思えよ?はっはっは!」
嘲笑と侮辱。笑い終わったあと、ぺっと唾を吐き出された。足元に唾が落ちる。
気持ち悪い怪物…?
一瞬どういうことかわからなかった。私は、人間と仲良く出来るかもしれないと思ってた。でも、あっちは私の事、ただの研究対象としか思っていなかったんだ。悔しい。心がギュッと締め付けられるような気持ちだった。
でも、心の底ではわかっていた気がする。私だって人間だったらこんなに大きなヒヨコなんて、気持ち悪いもん。ここまで拘束されて連れてこられたのも、そういうことだったんだよね。
あーあ、どうして転生したのが、こんな魔物だったんだろ。しかもしゃべれないし。
ぼんやりと積み上げられた薪を眺めていたら、鎧の人が近寄ってきて火を付けた。周りで鎧の人が、兜を外してなにか話しながら肉を焼いて食べている。私の存在なんて目もくれずに。
兜を外した人達はみな金髪の青い瞳だった。たぶんナイスガイというやつなんでしょ、歯が真っ白で爽やかに見える。でも、彼らを見すぎて、それで私に気付かれてまた酷いこと、言われたくなくて。そっと目線を外した。
そのままぱちぱち燃える火を見てた。なんか、火を見てると落ち着くな…。お腹が、減ったような気がする…。そういえば、ママンはどうなったのかな…。ウィンカナ、ガラナード、元気かな…。
そのままぼんやりしていたら、いつの間にか眠っていた。




