若人は刺激に飢えている
大分のダンジョン制覇から3日後、俺は某県の県境に存在するという幻の山寺に精神療養の名目で緊急搬送された。
別れ際に大輔がまともになって帰ってこいと言っていたが、俺は今もこれ以上ないくらいにまともだ!
逃亡防止のために例の如く簀巻きされた俺はお気に入りの麻袋を剥ぎ取られ、顏のバッテンが白日の下にさらけ出されている。
コンテナに車輪を付けたような謎の車に乗せられ、外から鍵をかけられた状態で片道5時間もの山道に耐える。
放り出されるように荷台から降ろされた俺の見たものは、暗雲立ち込める山の中腹にそびえる巨大で古い寺門とその門の上に掲げられた山国寺という文字だった。
「ざ・・・ざんこくじ?だと・・・。」
呆然と寺の前で呆けていると重厚な寺の扉が徐々に開かれて行く。
「よく来たな!儂がこの山国寺の住職を務める無残だ!」
光り輝く禿げ頭と共にあらわれた屈強な爺がドラ声をとばす。
無残だと・・・名は体を表すというがこれほどマッチした名前はないだろう。
普通は住職と言えば針金のような体の爺のはずだがこいつは違う。
腕も体もボディービルダーのように太く法衣がはち切れんばかりだ。
そのうえ恐ろしいくらいの悪人面のため、どう見ても堅気に見えない。
「今回のいけ・・・修行希望はそいつか!・・・顔にバッテンがついとるのう!よし!おぬしの法名は今日から罰天じゃ!」
ふざけるなよ!誰がバッテンだ!
修行なんかするかよ!
俺が身をよじってなんとかこの化け物から離れようとすると片手でむんずと掴まれてそのまま米俵のように肩に担がれた。
「は、はなせぇぇえぇえええ!!!俺は帰る!帰るぞぉおおぉおおお!!!」
「五月蝿いのう。耳元で大きな声を出すな!お主等、こやつは儂が責任を持って預かるから手続きだけして帰っていいぞ!沈念!後は任せたぞ!」
沈念と呼ばれたプロレスラーのような体格の僧侶が俺を連れてきた職員に近づいていく。
目の錯覚じゃなければあいつ2メートル以上あるぞ!
俺が戦慄に慄いている内に寺の境内に運び込まれた。
この爺、一歩がとてつもなくデカい!
「じゃあ、まずは断髪式じゃの。残念、バリカンじゃ!」
バリカンを持って来た僧侶を見るとこいつも2メートルはあるぞ。
周りを見渡すと寺の境内で作業中の僧侶は全て2メートルだ!
化物寺か!!!
「やめろぉおぉおおぉおお!!!!」
押さえつけられた俺の髪は無残にも刈られてしまった。
「ふむ・・・眉毛もいっとくかの。」
「よ、よせっ!!ふざけるなよ!!!」
「ふざけとらんわい。眉毛も無い方が諦めがつくじゃろ。生えそろうまでここで修行じゃ。」
「ぶっ飛ばすぞ!じじい!!!」
「元気じゃのう・・・沈念!念書は書いてもらったか?」
先ほどいた大男が物音一つ立てずに横にいやがった!
そして、沈念と呼ばれた大男が無言で頷くと俺の左右の眉毛もバッサリ刈り取られてしまった。
ちくしょう!!!だが眉毛が無い程度問題は無い!すぐに逃げてやる!
「決めたぞ!お主の修行はSPデンジャラスコースとする!」
「な、百歩譲ってスペシャルは分るが、デンジャラスってのはなんだ!危険なのか!危険なんだろ!俺はやらんぞ!!!」
「大丈夫じゃ、危険だと思うから危険なんじゃ。危険じゃ無くて刺激的だと思えばいい。若人は刺激的なのが好きなんじゃろ。」
黙れ爺!俺は誤魔化されんぞ!
くそ!さっさと俺を自由にしろ!!!
「今日は着いたばかりじゃし、軽く流す程度で一通りやるのが良かろう。」
化物和尚が言うが早いか俺をひょいと担ぎ上げ本堂に向かっていく。
その後ろをぞろぞろと、境内で仕事をしていた坊主どもが・・・1,2,3、・・・5人がついてくるんだが・・・何故だ?
「まずは座禅じゃ。」
よし!これで自由になれる。
こいつら力は俺より上だがデカすぎるから早さは俺だろう。
素早さで翻弄して逃げてやる!
「じじい!さっさと縄をほどけ!!!」
「何故じゃ?そのままやれば良かろう。」
「座禅じゃねえのかよ!」
「寝ながらでも出来るわい!正確には寝禅というのじゃが、まぁお前にとってはどうでも良かろう。さぁ、やるのじゃ!」
出来るかそんなもん!
くそ!結び目が固くてビクともしねえ!
「喝ッ!!」「喝ッ!」「喝ッ!!!」「喝ッ!」「喝ッ!!」
「ギャアァアァアアァアアア!!!・・・な、何を・・・。」
「悪霊退散!!!」「邪心滅殺!!」「悪即斬!!!」「邪気退散!」「四法滅殺!!!」
俺に向かって次々と座禅棒が振り下ろされる。
後半の掛け声はなんだ!明らかに違うのも混ざってるぞ!
何故5人同時に打ち込むんだ!
防御する事も許されぬ座禅棒の一撃を頭に受け一瞬目が眩む。
「折れました!」「私もです!」
「未熟者め!!!迷いがあるから警策が折れるのじゃ!迷いなく打ち込まんか!!!なんじゃ?もう気絶しとるの。若いくせに柔いのう。初日じゃし仕方が無い、起きるまで休憩じゃ!」
戻った意識を無理矢理に無にしてやり過ごす。
恐ろしい爺だ。
俺はここから脱出出来るのだろうか。




