鉄の結束
遅くなりました。
「や、ヤバかったな・・・思わず手が出ちまったぜ。」
へたり込む俺に、同じくへたり込みながら大輔が話しかける。
「な、なにあれ?」
加藤君が声を震わせながら聞いてきた。
『レギオンだな。悪霊共の塊だ。実体化でき、ダンジョンのボスにまで成長した個体は珍しい。集合体のお陰で中々多芸な奴なのだが・・・惜しいな。』
なにが、惜しいなだ。
あんな化け物、普通に存在しちゃ駄目だろ。
落ち着いたところで、恒例の宝箱だ。
宝箱自体は加藤君の魔法で簡単に開いが、出てきたのは薄汚れたお守り(タリスマン)が1つだけだ。
しかも、デザインが六芒星を象ったコインのような厨二心をくすぐる様なお守りだ。
一応、首から掛けられるようにチェーンがついているが汚い。
『これは儂がもらう。』
言うが早いか、器用にお守りに首を通す鳥。
そうするとマジックアイテムらしく、チェーンが縮みカイムの首にピッタリの長さになった。
「あっ!こら!」
次の瞬間、止めようとする俺の手をすり抜け、部屋の上の方に逃げやがった。
「降りて来い!」
部屋の天井近くのくぼみに降り立ち、俺が声を大にして喚くが知らん顔で横をむいたままだ。
「まぁ、別にいいんじゃね?」
「ぼ、僕も別にいいよ。」
大輔と加藤君が甘やかすが、あの鳥は欲しい物を我慢する事が出来ないだけだ。
しっかり躾けなければ今後も何かやらかす。
2人に引きずられる様にコアルームに続く扉をくぐり、通路を進む。
引きづられながらなので、ちゃっかりカイムが付いてきているのが見えるのだが、それがまた腹が立つ。
コアルームに投げ出されると、俺の前に澄まし顔の鳥がひょこひょこと近づき羽を広げた。
「おい、直道・・・何してんだ?」
俺が飛び掛かろうと身をかがめたところで、大輔に後ろから声をかけられる。
タイミングを外されたたらを踏み、顔面からダイブしてしまった。
怒りの形相で顔を上げるが、既に鳥は俺から離れた場所で再度羽を広げていた。
「ぐぅむぅう!!」
「おかしな声出すな。」
怒りの余り声にならない声を出すと、大輔に頭をペシリとやられてしまう。
鼻息荒く振り返るとダンジョンコアの前に小さなテーブルが用意され、シャンパングラスが載っていた。
「乾杯の真似事くらいしてもいいだろ!」
俺が馬鹿を見る目で2人を眺めると、慌てた大輔がそんな事を言いだした。
大方、何かの映画かドラマの影響だろう。
「一応、ちゃんとしたシャンパンだよ。」
加藤君がそう言って見せてくれた瓶はサイダーの瓶のような透明な瓶だった。
黄色っぽいラベルが貼られサイズは大きいが、もの凄く胡散臭い。
こぽこぽと注がれるそれからは確かにアルコールの臭いがするが、見た目は完全にサイダーだ。
「これ本当にシャンパンなのか?サイダーにアルコール混ぜただけなんじゃ・・・。」
「馬鹿!ちゃんとしたシャンパンだ!ルイロ・・なんとかクリスタルだ!」
ムキになるのが怪しいが、何のために名前も言えないシャンパン持って来たんだよ。
「写メだけ撮ってお仕舞にするのはどうかと思ってな。乾杯くらいしてもいいかと思ってさ。ほら、皆でグラス掲げて写真撮ったら格好いいじゃん。」
・・・この馬鹿、未成年の飲酒の証拠を自ら残すつもりかよ。
「き、聞かれたらサイダーだって言えばいいしね。」
まぁ、確かにそうだな・・・。
率先して言い訳を考えておくとは、加藤君も成長したな。
その後、写メを撮った俺達は大輔の音頭でグラスのシャンパンを勢いよく空けた。
甘いような苦いような微妙な味だ。
本当にこれ毎回するのかよ。
「じゃあ、加藤君。」
いよいよ加藤君が大分ダンジョンの管理者になる、
震える右手がダンジョンコアに伸ばされ、距離を縮めたかと思えば開く。
「加藤君・・・そろそろ・・・。」
このデブ、諦めてさっさと触れろや!
「・・・ちょっと、待って。」
往生際の悪さを発揮した加藤君を、無言で大輔が後ろから蹴り飛ばした。
勢いよく顔面からコアに突込み、両手で触り光り輝くデブ。
だが、それだけで勢いは止まらず、アメフトのタッチダウンのようにダンジョンコアを床に叩きつけた。
カシャーン!
俺の耳にはそう聞こえた。
そして、目の前で床に叩きつけられたダンジョンコアが粉々になった
息つく暇もなく視界が暗転し、俺達は大分ダンジョンの入り口に立っていた。
いや、俺達だけじゃなく、恐らくダンジョンに入っていた全員が・・・。
ある者はツルハシを振り上げたまま、ある者は眠ったまま、全員が大分ダンジョンの入り口に転送されたのだ。
「おい!ダンジョンに入れないぞ!!!」
荷物を取りに戻ろうとした冒険者の1人が大声をあげる。
それを契機に周りにいた冒険者達が入り口に殺到するが、見えない壁でもある様に入る事が出来ない。
人でごった返し怒声のあがる入り口から、俺達は即座に離脱を図る。
加藤君が中々抜け出せなかったが、混乱の坩堝と化したその場から逃げだすのは、そう難しい事ではなかった。
俺達は駐車場に預けた車に乗り込むと、何事も無かったかのように車を発進させた。
その後、大分ダンジョンは再度侵入出来るようになったが、採取できる量が減ったようだとニュースで言っていた。
「墓まで持って行けよ。」
ニュースを見ながら無言で頷く2人。
俺達の結束が鉄になった瞬間だった。
感想や誤字報告、有難う御座います。
急な出張で盛岡に行ってました。
急に決まって急に行ったため、ご報告できずに申し訳ありませんでした。
じゃじゃ麺、超美味かったです。
明日からは今のところ大丈夫だと思います。




