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唸る〇ー〇ー〇

翌日、上機嫌な2人を引き連れ、88階に降りる。

90階のボスを倒せば、それ以降は敵がいないはずだ。

進行速度も速くなるだろう。


90階のボスはおかしな怪物だった。

いつものように位置につき俺が扉を開けると、カイムが突然叫んだ。


『いかん!!!攻撃中止だ!!!』


あまりの剣幕に動きを止めて部屋を覗くと、中央にそいつがいた。

それほど大きくない4つ足で、首が長く頭が大きい。

体表はヘビの皮みたいに見えるが、鱗?がでかい。


『カトブレパスだ。そのまま殺せ!』


カイムの指示に従うわけじゃないが、しばらくすると勝手に死んでしまった。


『あれの視線は何でも固める。恐るべきダンジョンの番人だ。』


恐る恐る部屋の中に踏み込むと、魔石と金ぴかの宝箱が見える。


「カトブレパスって石化の視線を使う魔物だよね?」


『石化だと?そんな生易しいものでは無いぞ。あれの視線は何でも固めるのだ。見たもの全てを、時間や空間すらもな。常に目を見開いていれば自分すらも固める。故に攻撃されなければ目を開かん。』


加藤君の漏らした疑問にカイムが答えている。


「そんなの、どうやって倒すんだよ。」


『主のような力を持たなければ、四方に散り、犠牲を覚悟で倒すしかない。あれは視線以外はたいした事がない。あとは体表に毒が流れているだけだ。』


いや、普通にたいした事あるだろ。

でも、ここに来て確実に人数減らすためのボスになってるようにみえる。


カトブレパスの魔石はドラゴンより大きく、ケルベロスより小さいくらいの魔石だった。

宝箱からは古びた指輪が出てきた。

おかしな色の液体じゃないから、きっと当たりのアイテムだ。


ホクホク顔でカイムに鑑定を頼むと収納の指輪と言われた。

性能も抜群で30×30×30mの空間に時間停止と持ち主の認識機能まで付いている。


『一度、指輪をはめると、その者が認識される。考えて使え。』


「すげえじゃん。」


2人も思わぬ当りアイテムでニコニコ顔だ。


「これは売らずに、パーティーで使ったほうがいいな。誰が使う?」


「直道が使わないなら加藤君でいいんじゃねえか?俺はお前等と違って力はあるからよ!多少の荷物は平気だ。」


「じゃあ、加藤君が使ってよ。」


何故だか恐縮気味の加藤君に、押し付けるように渡す。


そして91階だ。

たぶんこの下辺りが以前、俺が跳ばされた階層のはずだ。

そこから数階層分は地図があるから、行程が楽になる。

そして、更に俺には秘策がある。


「カイム、出してくれ。」


カイムが出した物は中古のゴーカートだ。

これは通路に敵のいないこの階なら、移動に使えるはずと思って買っておいたものだ。

中古の為ボロボロだが、よく整備されており、それなりにスピードはでる。

歩くより楽だし早い、それに俺の知る限りここから下は直線が長い通路が多いから、これに無線機付きのヘルメットを合わせれば移動が格段に早くなるはずだ。

ただ、道幅は4m弱くらいしかないから、並んでは走れない。


「おおっ!凄いじゃないか!流石、直道!やるなぁ!」


「ご、ゴーカート・・・。」


大輔は喜んだが、加藤君はちょっと引き気味だ。


「直道、ゴーカートってどのくらいスピードが出るんだ?」


「馬鹿が!海に飛び込んだの忘れたのか!お前は一番最後をついてくるんだ!」


カイムが一直線に並べて出した、最後尾のゴーカートを指差し吠える。

不服そうな顔をするが、お前が先頭は絶対駄目だ。


「先頭は加藤君が乗ってくれ。このヘルメットを付ければ会話も出来るから、曲がる際やスピードを出す時、落とす時には教えてくれ。」


「ぼ、ぼ、僕が先頭なの?」


「ああ、加藤君に任せる。俺や大輔だと、たぶんスピード出しすぎちまう。」


俺がそう言うと、不安そうにしながらも納得はしたようだ。

よく整備されているといっても、所詮は中古、時速50キロも出たら御の字だ。


「加藤君、これって中古だからスピード出ないんだ。心配しなくても平気だよ。」


俺の説明にホッした表情で加藤君もゴーカートに乗り込む。

初めは10キロくらいのノロノロ運転だったが慣れてくると、徐々にスピードが上がりだした。

92階に降りると見覚えのある道筋がある。

ここだ!ここが、以前俺のいた階だ!

となると96階のボス部屋までの道順は分かる。

俺は後ろから指示を出し、加藤君は先頭を走り続けた。



「マジの話だったのかよ・・・。」


俺の道案内に懐疑的だった大輔が、失礼な事を言っている。

お前、それは思ってても口に出す事じゃねえぞ!

俺達は今、93階のボス部屋の前にいる。


ゴーカートをカイムに収納してもらい、扉の前でいつもの陣形を取る。

違ってるのは大輔がクロスボウでは無く、投げ槍を試してみたいと言って、槍を構えてるところだ。


「ここには、ケルベロスがいるはずだ。問題なく俺のスキルで倒せるからビビって泣くなよ。」


「さっさと開けろ!」


「僕も準備は出来てる。」


威勢のよい2人の言葉に頬が緩むのを我慢して、数をかぞえながら扉を開ける。

大輔の後ろに回ると、以前見た光景と同じものが見える。


「いいぞ、やれ!」


大輔が全身の力を使って槍を投げる。

放たれた槍が光を煌めかせながら1頭の口内に吸い込まれると目から光を失い、残った2つの頭の内の1つも加藤君の魔法で吹き飛び、そしてケルベロスが消えた。


ケルベロスの魔石と宝物(もちろん外れ)を収納し、2人と相談する。

今日は途中から道順が分かったのとゴーカートを使用したので、夕方にもなっていない。

このまま道が分かる96階のボス部屋まで行くべきではないだろうか。


「俺はいいと思うぜ。稼げるところで稼ぐのと一緒だ。余裕を持つのは悪い事じゃない。」


「そうだね。時間は有限だから有効に使った方がいい。僕も賛成だね。」


大輔の言い回しがイマイチ分からないが、2人とも進む事に賛成してくれたので、今日は96階まで行く事にした。

通路に敵がいないなら、いざとなればそこで寝ちまえばいい。

俺達はここにきて予定を変更し、先を急ぐため94階層への階段を降っていった。


温かい感想と誤字報告、有難う御座います。

頂いた感想を読み再度頑張ろうと思ったりしています。

本日2本目の投稿をさせて頂きます。

有難う御座いました。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] カトブレパスみたいな敵が居るとわかったしわざわざ仲間のレベル上げ手伝う理由なくなったよね レベル上げしてるともしかすると危険ってことなんだし
[気になる点] >宝箱からは古びた指輪が出てきた。 >おかしな色の液体じゃないから、きっと当たりのアイテムだ。 指輪が液体???
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