犬まっしぐら
「そうなんですよ。熱が高いのでとりあえず病院に連れて行きますので、ハイ、ハイ、それでは宜しくお願いします。・・・・。」
「ほら、ミッチャン、これでいいだろ?」
「サンキュー!敦兄ちゃん!」
俺は高校へ本日休むための電話を近所に住む敦兄ちゃんに頼んだ。
敦兄ちゃんは俺の4つ上で、今は大学生をしている。
子供の頃はよく遊んでもらったが最近は少し疎遠になっていて頼むときは緊張したが、快く俺のアリバイ作りに協力してくれた。
俺をミッチャンと呼ぶのも敦兄ちゃんだけだ。
・・・可愛い幼馴染がいなくて悪かったな・・・。
「しかし、ミッチャンが冒険者か。戦闘職で良かったね。」
「うん、今度なんかおごるから。」
「子供がナマ言うなよ。ぶっちゃけ、高一ならダンジョンでレべ上げして知力上げた方がいいからな。
2年知力上げに使っても余裕で元取れるよ。」
そうなのだ。
敦兄ちゃんはかなりいい国立の大学に行ってるのだが、高校で2年間ステ上げして知力をあげた状態で1年勉強して大学に受かっているのだ。
「それって敦兄ちゃんだからだろ。始めは戦闘職でも無いのにダンジョン入り浸ってたから、おばさん青くなってたんだぜ。」
「馬鹿だな。戦闘職でない俺だから2年かかったんだよ。ミッチャンなら1年で十分だろ。」
ダンジョンでの恩恵について理解している敦兄ちゃんだからこそ、今回の話に乗ってくれたようなものだ。
最悪、鼻をつまんで電話するつもりだったから助かったぜ。
「それで、ミッチャンはどこのダンジョンに行くの?」
「やっぱ五反田かな。一番近いし。」
「それならいいけど、ダンジョンにもランクがあるから十分気を付けるんだよ。」
「ランクって何?」
「ダンジョンの難易度さ。渋谷ダンジョンが五反田ダンジョンより稼げるのは知ってると思うけど、それって単純に渋谷ダンジョンの方が高ランクダンジョンだからなんだ。」
「ふ~ん・・・じゃあ新宿ダンジョンはもっと高ランクなの?あそこってほとんど人いないよね。」
「そうだよ、新宿ダンジョンの場合は許可が必要になるからね。そうだ!ミッチャン、冒険者カード見せてよ。」
俺は言われるがままに敦兄ちゃんに冒険者カードを渡す。
「ほら、ここに冒険者番号が付いてるだろ。これをこうして入力すると・・・。」
敦兄ちゃんが自分のスマホに何か打ち込んでいる。
少しして操作を終えると俺に見せてくれた。
そこには俺の名前と・・・。
「冒険者ランク?・・・Fって低いんだよね?」
「下から2番目だね。ミッチャンは戦闘職だとみなされてるから、Fランクスタートなんだ。戦闘職じゃないとGランク固定だから。」
「どうやれば上がるの?」
「基本、魔石の買取額でランクは上がるんだよ。そのランクが高くないと新宿ダンジョンは入れないってわけ。」
「なるほどなぁ・・・。良く出来てるんだね。」
「そうだね。国としても折角の冒険者に無理して死んでもらいたくは無いからね。」
「敦兄ちゃん、分からない事あったら相談乗ってもらってもいい?」
「いいよ。冒険者としてのランクはGだけど、冒険者歴は僕の方が長いからね。」
久々に敦兄ちゃんと話せて楽しかった。
敦兄ちゃんの話は面白く、俺はもう少し話したかったが敦兄ちゃんに時間を無駄にしないように言われ五反田ダンジョンにむかった。
今日は時間に余裕があるのでリュックの中にサンドイッチとペットボトルを2本いれ、お昼は中で取るつもりだ。
入り口をくぐると1階の前半部は速足でスルーする。
もうスライムを何匹倒しても俺のレベルは上がらないだろう。
魔石も1つ40円なら無理して拾う必要もない。
そのまま、後半部に入り、ゴブリンとコボルトを相手にしていく。
相手にすると言っても勝手に死ぬので魔石を拾いながら2階層への階段へ向かうだけだ。
そして2階層の前半部分も同じだが、後半部分からは狼も出るから注意が必要だ。
昨日と同じで狼達は俺を見付けると突っ込んでくるが、俺に襲い掛かる寸前に死んで消える。
ある意味、魔石が近くに落ちるので、拾う手間を考えるとこっちの方がいいが心臓には悪い。
そして、昼前に2階層の奥まで行った俺は、丁度いい小部屋を見付け、ここで秘密兵器を使う事にした。
俺は1人で小部屋に入りその入り口の扉の外に置いたのだ。
高級ドックフード缶詰タイプを。
ペットショップの店員に聞いて一番臭いがする物を購入してきた。
高いけど、どんな犬でも喜びますよ、とはペットショップの店員さんの言葉だ。
俺は、その缶詰を空けて扉の左右に分けて置く。
1つ1000円もした高級缶詰だ。
是非効いて欲しい。
これで狼をおびき寄せる事が出来たら、座っているだけで経験値と魔石が手に入る。
小部屋に入り、扉を閉めてその前に座る。
ケツが冷たくて痛い。
上手くいったら次からは座布団を持参しよう。
聞き耳を立てていると扉の外から音が聞こえる。
犬がアスファルトの上を歩くような音だ。
間違い無く狼だろう。
その音とカツーンとかコツーンとかいう音が混じって聞こえる。
魔石が落ちる音だ。
思った通り、犬の餌は狼達をおびき寄せ、俺のスキルの餌食にしてくれている。
音はひっきりなしに続いているが1時間ほどすると音がしなくなった。
するにはするが、10分とか15分間隔になってきたのだ。
扉を開け、そっと覗くと、餌を置いたあたりに魔石が山になっている。
急いで魔石をかき集め、小部屋に引き返す。
扉を背に魔石を数えると43個もある。
これは当たりかもしれん。
狼だけじゃ無く鼻のいい魔物なら何にでも使えそうだ。
サンドイッチを食べながら考える。
まだ、夕方までたっぷり時間はある。
今日はこのまま一度外に出て座布団と犬の餌を買って再度ここに来た方がいい。
もしかしたら高級缶詰以外でも臭いの強いものなら餌の代わりになるかもしれない。
今日は1日実験して、明日からの狩りに活かそう。
思い立ったが吉日で、俺はすぐに出口を目指す。
戻ったらまずは魔石の換金だ。
ゴブリン12個、コボルド8個、狼が45個で10260円だ。
潜っていた時間は3時間ほどなので時給3000円越えだ。
これは冒険者の稼ぎがいいのも頷ける。
ついでにレベルも確認しよう。
名前:菅原直道 Lv5→7
年齢:16
職業:呪殺師 Lv2
称号:
HP:30→44
MP:44→58
攻撃力:4
防御力:2→3
精神力:6→8
素早さ:4→5
知力 :3
器用 :5→7
運 :6→8
職業スキル
呪殺Lv2
スキル
よし!防御力が1上がってる。
紙装甲だからこれは嬉しい。
だけど、知力は上がって無い。
中間テストはいいとして、期末テストまでに5まではあげたい。




