加藤MKⅡ
加藤君と新宿ダンジョンに潜った。
加藤君は万能タイプの魔法使いで、攻撃、防御、支援、回復と何でも出来る。
嬉しい事に開錠の魔法も使えるので、ボス戦後の宝箱も安全に開けられる。
新宿クラスのダンジョンになると、50%より高い確率で何らかの罠がかけられている。
たいていは毒針や五月蝿いだけのアラームだったりするのだが、極稀に火炎弾や転移等の凝った罠があるため、加藤君のように宝箱を開ける技術を持つ人は貴重なのだ。
新宿ダンジョンに潜って2日目、俺達は順調に32階層の小部屋から転移した。
跳んだのは42階層のボス部屋の前。
やはり、前と一緒だ。
少しドキドキしていたが予定通りの階層へ来れて良かった。
この階層のボスは小山の様にデカいスライムだ。
「この階層のボスは資料によるとビックスライムだね。」
加藤君が俺から渡しておいた大石メモの知識を披露する。
加藤君とダンジョンに入って分かったが、彼は一度見たり読んだりした内容をきちんと覚えている。
そのためか、探索がやりやすい。
こちらの痒いところに手が届くといえばいいのか、言わなくてもしてくれる。
ボスに対しても的確に弱点を突き、道も間違えたりしない。
俺が扉を開けると、15秒ほどして加藤君が魔法を発射する。
ボスに当たり戦闘が開始すると、俺達は部屋に吸い込まれ。
近づいてくるボスが間を置かず消える。
もはや流れ作業的な物になっている。
「ここってさ、魔力で水を出せる指輪が落ちる時あるんだよね。ダンジョンに潜るなら持っていた方がいいって言われたんだけど、人数分確保するまで粘った方がいいかな?」
「そうだね。僕はここでも十分レベルアップ出来るから、菅原君の好きにしていいよ。リーダーは君だからね。」
加藤君も承知してくれたので、ここで明日の夜まで粘ってみよう。
1回目の宝箱は残念ながら、黄緑色の液体の入った瓶だった
やはり、あの指輪は当たりのアイテムだったようだ。
夜まで粘り10回ほど戦ってみたが魔法の指輪は出現せず、黄緑色の液体だけが溜まっていった。
唯一の救いは加藤君のレベルが32まで上がったことだ。
なんだか加藤君のレベルの上りが遅い気がする。
俺の時はもう少し早く上がっていた気がするんだが・・・。
「なぁ、加藤君のレベルアップって少し遅めだったりするの?なんか俺の時はもっとサクサク上がってた気がするんだけど。」
「これでも十分早いんだけど・・・それって多分、2人で経験値分けてるせいじゃないかな?それと魔法使い系は菅原君が言うようにレベルアップの経験値多めだね。」
なるほどな。
流石、加藤君は博識だ。
『主は、もう少し本を読むべきだ。』
黙れ、鳥!
足りなければ、誰かが補えばいいだけだ。
加藤君が我がチームの情報担当だから問題は無い!
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それは次の日の昼過ぎの出来事だった。
昼食後に復活したスライムを殺すと、いつもはすぐに宝箱に解錠の魔法を使う加藤君が、目も口も開いたままガクガクと体を震えさせていた。
聞いてはいなかったが何か持病を持っているのかもしれない。
体中の脂肪をプルプルと震わせる。
「か、加藤君、どうしたの大丈夫?」
「い、いま、僕の職業が進化したよ・・・。」
職業は、職業レベルが上がると稀に上位職と呼ばれるものに進化する人がいる。
稀にと言ってるように全員では無く、全体の3%くらいの人数でしかない。
そして、上位職と呼ばれるものは、それまでの職業より圧倒的に性能がいい。
新しいスキルも覚えるため格段に強くなれるのだ。
加藤君は魔法使いだ。
となれば、後衛職の強力な上位職になれるはずだ。
高山さんのように魔導士になれば、更に攻撃魔法の威力が増すだろう。
「加藤君、職業は何に進化したの?」
「け、賢者!僕は賢者になったんだ!」
興奮する加藤君が言うには、賢者は世界に3人しかいないレア職業らしい。
レベルが上がっていくと例がいなく強力な魔法を覚えていく夢の職業だ。
「スキルは何を覚えたの?」
「新しく覚えたスキルは、『不可視化』だよ!」
熱に浮かされたように加藤君が叫んだスキルは不可視化。
・・・嫌な予感がする・・・。
「加藤君、ちょっとスキルを使ってみてくれるかな?」
「いいよ。見ててね。」
・・・セーフ!!!見えなくなるのは身体だけだ。
しかも、完全じゃない。
昔見た人狩りの宇宙人の映画みたいに空間が歪んでるような違和感もある。
戦闘中なら使えるかもだけど、普段使いは出来ない。
しかし、よりによってこんなスキルを引き当てるとは・・・恐ろしい男だ。
感想や誤字報告、有難う御座います。
小説も後書きもある意味勢いで書いてる所があるため、ちょいちょい無駄に悩んでいますが、感想で励まして頂いたり、対応策を考えて頂いたりで感謝しています。
加藤君が魔王になるかどうかはこれからの展開しだいですが、パワーアップはしました。
本日3本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




