直道の野望
目が覚めると俺は拘束が解かれ、ベットの上に寝かされていた。
学校の保健室みたいなところだ。
意識を失った後にも吐いたみたいで口の中が気持ち悪い。
部屋の中にある洗面台で必死にうがいをしていると、いきなり部屋の扉が開いた。
「おお、目が覚めたか。よくやったな。」
高齢の如何にも医者です、というような恰好の爺さんだ。
「儂はこの医務室を取り仕切っている中西だ。お前が渋谷ダンジョンのダンジョンボスを倒したと聞いとるんだが、そうなんだろ?」
「・・・たぶん・・・。」
「なんだ・・・英雄様は元気が無いな。」
「英雄?」
「あれから魔物が溢れていたら、どれだけ死人がでたか分らんからな。」
英雄と言われても自分の事じゃないみたいだ。
「これで渋谷ダンジョンは管理ダンジョンになる。もう安全だ。」
管理ダンジョン・・・一部のダンジョンはクリアすると、クリアした者の制御下にはいる。
魔物のリポップ間隔や採掘、採取の種類を自由に変えれる。
それに、ダンジョンの制御をしている人間はダンジョン内なら自由に移動できる。
1つあれば莫大な富を生み出す。それが管理ダンジョンだ。
「俺ってどういう扱いなの?」
「気になるか?ほれ、これを見てみろ。」
中西先生が壁のTVを付けると、特番の真最中だ。
朝のニュースで見た事のある司会者と芸能人達、それと見た事も無い自称ダンジョン研究家。
そんな面々が好き勝手しゃべってる。
場面が変わって渋谷の街を写している映像が流れた。
夜の渋谷は人であふれ返って、お祭りのような騒ぎだ。
大学生くらいの男が笑いながらインタビューに答えている。
続いて、どこかの家庭の映像だ。
幼稚園児くらいの女の子が笑顔で映っている。
「あいがとう。」
舌足らずの感謝の言葉。
打算の無いその一言に胸が締め付けられる。
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この後、別室で飯野さん達と大石さんに土下座で謝罪された。
「もう何とも思ってませんから、頭を上げて下さい。」
「本当にいいのかい?」
「ええ、本当にです。」
ゆっくりと頭をあげる面々を見て新たに決意する。
このままだと結局はまた同じ事が起きる。
ならば、起きないようにするにはどうしたらいい?
俺が日本のダンジョン全てを制覇し、管理ダンジョンにしてしまえばいい!
そして、俺が裏から日本を牛耳る!!!
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「・・・という訳で、日本の支配者になりたいんだ。」
俺は自宅で唯一この件に協力してくれそうな黒い鳥に話をした。
「我が主も、ようやくやる気になったようだな。ならば我が力にて支えよう!」
パソコンの画面から顔を背けずに話す鳥に一抹の不安を感じるが言質はとった。
たぶん、今後はきちんと協力してくれるだろう。
そして次は・・・
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「あれってやっぱり、お前だったのか・・・。」
大輔は俺の正体が分かっていたようだ。
さすが、我が親友・・・。
「あのキモイ動きはお前しかないと思ってたんだよ。それに、お前には簀巻きが良く似合う。」
よく分からないが喧嘩を売られたのか。
ならば!買ってやる!!!
俺が襟首を掴もうと両手を出すが、脳筋戦士が手首を掴みガッチリガードしてやがる!
いつもの如く、微動だにしない。
「直道、首を狙うのは止せ!お前は何故、何かあると相手の首目掛けて両手を突き出すんだ?」
俺の動きが読まれてるだと!
脳筋戦士の分際で生意気だ!
「だが、協会っていうか大人達のやり方はちょっと酷いよな・・・。俺も力を貸すよ。」
馬鹿め!貴様の手助けは俺が話した時点で決定事項だ!
偉そうに言うんじゃねぇ!!!
「で、どうする?仲間は俺達だけか?」
安心しろ。
最後にとっておきの人物に声をかける。
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「加藤君、俺に力を貸してくれ!」
最後の一人は当然、加藤君だ。
精神的に少し病んできている加藤君だが実は優秀だ。
女性絡みでは最低評価を脱しないが、あれと平行して冒険者をしていられるほどの高スペックの持ち主だ。
それに、頭も女性が絡まなければ優秀で、魔法使いとしての戦闘での判断力も高い。
運動能力と外見以外は出来る子なのだ。
「でも・・僕は彼女を・・。」
「俺が日本を裏から牛耳ったあかつきには加藤君は俺の右腕だ。当然、美人秘書も付くだろう・・・。」
「ひ、秘書・・・美人の・・・。」
「そうだ、それも1人や2人じゃない。それに秘書を選ぶ権限は加藤君にある・・・。」
「ぼ、僕が・・・選んでいいの?」
「そうだ!加藤君が選ぶんだ!君が君自身で!」
「や、やるよ!僕は菅原君に従う!」
少し洗脳が入ったようだが、やる気になってくれたので良しとしよう。
俺達はこの3人と1羽で日本のため、ひいては俺のために動き出す!
絶対だぁあぁああぁあああ!!!
感想と誤字報告有難う御座います。
色々な意見を頂けて有難いです。
ですが、もう、どうなるか分かりませんが突走る事にしました。
本日1本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




