その後の直道
今日はバタバタでした。
ご迷惑おかけしました。
加藤君対策から1ヵ月ほど経ったある日、俺は再度圧迫面接を行われ、協会側の話に深く感動し協力する事にした。
決して30億の契約金にひかれたわけではなく、俺は正義に目覚めたのだ。
協会側が望む事は俺の場合、単純で自力でいくつかのダンジョンを制覇して欲しいのと、協会からの依頼を出来るだけ受けるというのだけだ。
かくして俺は30億の金をもらい自宅で高笑いを続ける毎日だ。
協会からの依頼は全て断わるつもりなので、実際はタダで30億もらっただけだが、多少の罪悪感はあるため、協会の依頼は一度内容を読んだ上で断る様にしている。
今日も小さなおっさんが俺の家に、協会からの依頼書を持ってやってきた。
「直道君、そろそろ1つくらい依頼を受けて欲しいんだけど・・・。君ならどの依頼でもさほど問題じゃないよね!」
フハハハハ!馬鹿め!
今の俺はかなりの金持ちなのだ。
はした金で動くと思うなよ。
特大魔石は1つ5億で売れて俺の元に15億はいってきている。
これは代金を支払う前に実験でバラバラにしているので、返せとごねられないように高値を付けてくれたらしい。
そして、鑑定の眼鏡は年末のグランドオークションの目玉商品として扱われている。
低く見積もっても数百億になるという話しだ。
そうなると、もはや俺には働く理由が無いのだ!
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「嘘だろ!!!人権侵害じゃん!!!それに契約違反だぞ!!!」
「ごめんね!でも、もうなりふり構っていられなくなっちゃたんだよね!」
数日後、俺は簀巻きにされ、戦神の刃の天野さんに担ぎあげられていた。
「直道、恨んでくれて構わん!お前の力が必要なんだ。」
何故、俺がこんな目にあっているかというと、例のクリスタルの内容が変わったのだそうだ。
今まではカウントダウンタイマーは1つだけだったのだが、それが消失し、新たにダンジョン毎にタイマーがセットされたのだ。
そしてイギリスでタイマーがゼロになったダンジョンから魔物が溢れだした。
かなりの犠牲を出し、溢れた魔物は駆逐したが、このダンジョンはまだ制覇されていないらしい。
今はイギリスの冒険者達が攻略に動いている最中だ。
そして、日本にも近日中にタイマーがゼロになるダンジョンがあるのだ。
それが渋谷のBランクダンジョンだ。
イギリスでのスタンピードの現状で青くなった協会と政府は、なりふり構わず渋谷ダンジョンの制覇に動き出した。
そして、それが俺が簀巻きにされている理由だ。
俺は生きたマジックアイテムとして渋谷ダンジョンに連行されている最中なのだ。
ビタビタと陸にあがった魚の様に蠢く俺は、よく分からない大型の車の後部座席で天野さんと高山さんに挟まれて座っている。
まるで犯罪者の様に護送されているが、簀巻きにされている分それよりたちが悪い。
「直道、覆面付けてやるから動くなよ。」
更に覆面のおまけがついた。
なんせ渋谷ダンジョンの前はマスコミと野次馬の人だかりだ。
素顔のまま連れ込まれては俺も協会も政府も都合が悪い。
マスコミ連中をかき分けるように担ぎこまれる最中、こっちを見ている大輔がいた。
あの野郎、不安な顔の宮沢さんを抱き締めてる!!!
「だいすぅ、むぐぅ!!!」
「しゃべるな!」
我を忘れて怒りの声を上げようとしたところ、飯野さんに口を塞がれ協会内に運び込まれた。
「あの・・・もう覚悟決めましたから、ほどいてくれませんか?」
「だめだ!天野が担いで走った方が早い。悪いが今日1日はそのままでいてもらう。」
飯野さんに鉄の声で断わられる。
この人、真面目だから本当にそうなりそうだ。
「トイレ行きたいんですけど・・・。」
「漏らせ!俺達は少々の臭いは気にしない。」
だめだぁ~・・・。
協会の人と何やら話していた高山さんがカバンを1つ受け取って合流した。
たぶん、マジックバックだろう。
何が入ってるかは知らないけど・・・。
高山さんが合流すると、すぐに渋谷ダンジョンに突入した。
初めて入る渋谷ダンジョンに感動する暇も無く、凄い速さで走りだした。
先行する飯野さんの後ろを俺を担いだ天野さんが疾走し、その後ろを高山さんがついてくる。
道順が分かっているせいか、ドンドン先に進む。
渋谷ダンジョンは7階層毎にボスがいる。
その7階層まで1時間足らずで走り切っている。
「渋谷ダンジョンは最終階層のダンジョンボスが強いだけで、そこまでは俺達でも行ける。だから後6~7時間ってとこだ。それまで我慢してくれよ。」
「いいぞ!」
扉を開けてボスを観察していた飯野さんが声をあげる。
天野さんは俺に我慢しろと言っているが、後6~7時間も揺られたら確実に吐く自信がある。
俺の予想通り、俺は2時間後、21階層のボス部屋で吐いた。
そして、無理矢理、治療用のポーションを流し込まれ、また荷物となる。
せめて、俺にもボス部屋覗かせてくれないかな・・・。
離れた位置で飯野さんが開けるせいで一度も渋谷のボスを見ていない。
そして、願いも虚しく俺は今、渋谷ダンジョンのダンジョンボスの部屋の前にいる。
「よし!ここで最後だ!頼むぜ、直道!」
天野さんが担いでいるまま俺の背を叩く。
ヤバい!また吐きそう!
グッタリした俺に天野さんが何かを話しかけてきたが、目の前がクラクラして、よく分からない。
そして、そこで俺の意識は完全に途絶えてしまった。
今日は色々あって疲れました。
あいかわらず誤字見て頂いてすみません。
凄い助かります。




