アドバイザー
「こ、これは・・・。」
特大魔石を前に絶句する小さいおっさん。
そして、それを前にドヤ顔を決める俺。
カイムは俺の肩で明後日の方向を見ている。
「それだけじゃ、ないですよ。」
俺が隠し持っていたモノクルを取り出す。
真上に手を伸ばし、寄こせとアピールする小さなおっさんにモノクルを渡す。
しばらくいじっていると呆けたように言葉をつなぐ。
「こ、これ、鑑定の眼鏡だよ!」
ウン、知ってた。
「世界でまだ、1つしか発見されてないマジックアイテムだよ!凄い!」
『騒ぐな、小人よ。さっさと金を出せ!』
「えっ!これはオークション行きだから、すぐにお金は払えないよ!」
そして、悲しい事に魔石も国の研究機関に引き取られるという事で代金は後回しになった。
ただ、32階までのボス部屋で稼いだ魔石と色とりどりの液体で2000万ほどになったので、特に問題は無い。
小さいおっさんが言うには多分魔石は3~5億の間、鑑定の眼鏡は前例がないので予想が出来ないと言っていた。
「間違い無く国が動くからね!多分、中国と米国の一騎打ちじゃないかな!」
「ぜ、税金関係は・・・。」
「え~っと・・・協会主宰のオークションの場合は手数料が10%と税率は一律20%だね!」
つまり10億で売れたら7億が手に入るという事だ。
もはや笑いが止まらないぞ。
一介の高校生の稼ぎが、サラリーマンの生涯年収を超えているんだ。
良し、売れたら家を買おう。
フッ、ハハハハハ!
超豪華な家にして両親は老人ホーム行きだ!
決めた事は初志貫徹で貫くぞ!
「それで、直道君にはちょっと話を聞きたいから、こっちね!」
「あっ!はい・・・。」
そこから連れていかれたのは、どこかの応接間のようなところだ。
ソファーとテーブルがあり、室内も明るい。
ただ一つの違和感は部屋の隅に壁に張り付くように置かれた事務机セットと、その椅子に座りこちらに背を向けている男の存在だ。
「彼の事は気にしなくていいから!」
小さなおっさんはそういうが、どうやっても気にはなる。
勧められたソファーに座り、32階で小部屋に入ったら転移し、その後ボス部屋の宝箱を開けた際に地上に転移したと言い張った。
「あの大きな魔石を落とした魔物は、どんな奴だった?」
「2つは頭が3つある犬ですね。残りの1つが頭が7つある蛇ですね。蛇とはいっても短い脚が2つありましたけど・・・。」
「直道君、どうやって倒したの?あの魔石の大きさだと、とんでもなく強かったはずだけど。」
「こう、スッっと近づいてバッっとやって倒しました。」
これが、今回俺が受けるであろう事情聴取対策だ。
名付けて、天才の言う事を理解出来る人はいない作戦だ。
答えにくいところは全て擬音で答えてやる。
「反撃は受けなかったの?一撃で倒したって事?」
「いえ、攻撃されてもこうビュッと避けたりガッと逃げたりしました。」
「ふぅ~・・・それじゃあ、階層とかは分かるかな?」
「いえ、跳ばされただけなので、随分下にいるとは思ったんですが、どこに居たかはわかりません。」
ため息をつきながら、小さなおっさんが質問するが、俺の要領を得ない回答に困り気味だ。
「じゃあ、最後に直道君が飛ばされた32階の部屋なんだけど、どこか分かるかな?」
「それは分かります。・・・この部屋ですね。」
俺は机の上に広げられた地図を見て、俺を跳ばした転移の罠の小部屋を指差した。
「この部屋で間違いない?」
無言で頷くと大石さんが壁際にいる人に地図を渡して、その人が出て行ってしまった。
「今日はこれで終わりだけど、また話を聞かせてもらうかもしれないから、その時は協力してね!」
こうして、俺は思っていたよりあっさりと解放された。
明日から2~3日はゆっくりしながら夏休みの予定を考えよう。
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翌日、小さいおっさんから、冒険者協会からの通達を伝えられた。
俺の情報の有用性を考慮し、新宿ダンジョンに調査チームが派遣されてくるそうだ。
そして、その際、俺にアドバイザーとして参加して欲しいというお願いというか命令のようなものだった。
ただ、アドバイザーというのは書類上の話だけで、俺の仕事は何もない。
というのも調査が終わるまでの2ヵ月の間、俺の行動には制限がかけられたのだ。
具体的に言うと、新宿ダンジョンへ潜る際は日帰りする事と潜る階層は10階層までとの内容だ。
そして、夏休みという稼ぎ時にこの制限を付ける以上、俺に対しての補填をすると言う意味で、名前だけのアドバイザーという役職が作られ、俺がそこに収まった。
ちなみに日当は100万で、それにプラスして何故か今いる家の権利をもらった。
そんなこんなで、俺はダラダラとふてくされながら夏休みを過ごしていた。
偶に大輔が遊びに来たが、あいつもチームでダンジョンに潜ってるため、そこまで頻繁に時間が取れるわけでも無い。
おまけに大輔は彼女持ちだ。
余りにも暇すぎて、夏休みの宿題に少し手を付けたくらいだ。
ただ、今回も俺は大輔のノートを写すつもりなので進みは遅い。
そして、そんなある日、俺は小さいおっさんからの呼び出しを受けた。
その要件は調査チームと一緒に新宿ダンジョンに潜って欲しいという内容だった。
最近は感想を多く頂けるので一人でにやけています。
それに混じって相変わらず誤字報告が多いのですが、すみません。
そこは本気で物凄く感謝しています。
本日3本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




