一難去ってまた一難
通路上に敵がおらず、進みやすくていいと思っていたら、俺のスキルの性能上、あまり意味がなかった。
それより、階段がどこにあるかの方が重要で、それさえ分っていたら無駄に高い体力で即座に走破できた。
そのため早速、次の階層から苦戦を強いられる事となり、次のボス部屋の前に到達したのは3日経った後だった。
脳内計算では1日でこれると思っていたため、えらい計算違いだ。
到達した時は昼の2時だった。
少し前に通路で堂々と昼食にし、食休みまで取った後だったため、俺達はそのままボス戦に突入した。
ボス戦と言っても、俺の場合は扉を開けて覗くだけである。
逆にこれで倒せないと、俺は詰む。
この部屋のボスは頭がいくつもある蛇のようなトカゲだった。
カイムはヒュドラだと言っていた。
デジカメの望遠機能を使い確認すると、頭が1・2・3・4・・・7つあり短い脚が2本ある。
そして、こいつも巨大ダンプのような巨体だ。
部屋の中央ではく製のように微動だにしない姿が急に消える。
いつもより時間がかかったので、少し不安だったが問題無く倒せたようだ。
消えた場所に行くと、ケルベロスと同じくらいの大きさの魔石と金ぴかの宝箱があった。
魔石をカイムに預けたあとは、恒例の宝箱の開封儀式である。
熊手の釣り竿を伸ばし宝箱の後ろから、そっと蓋を開ける。
爆発も煙も出ない!
俺が喜び宝箱に駆け寄ろうとした瞬間、視界が暗転し景色が変わる。
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俺達は又しても大部屋に転送された。
辺りを見回すと継ぎ目のない壁が側面をおおい扉が無い。
そして、見覚えのある王様の椅子・・・。
『・・・あっ!ここ儂のいた部屋だ。』
俺達はカイムのいた部屋に転送された。
もう少しで新宿ダンジョンを制覇出来たのに・・・。
落ち込んでいる俺に対し、慰めるでもなく、早く帰ろうと鬼のような鳥が騒ぐ。
立派にネット中毒への道を歩み始めた鳥を捕まえ、以前使った転送陣で地上に戻る。
机の上で寝ている小さなおっさんをねぎらい静かに家に戻る。
こういった時は、この家を借りて良かったと思う。
戻るとすぐにパソコンの電源を入れる鳥をそのままに、シャワーを浴びて爆睡した。
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ボウッとしている起きたての頭で時刻を確認する。
8月3日の午前3時と時計は言っている。
もう1~2日早く帰ってきていた気はするが、カイムの部屋は時間の流れがおかしいから、それで感覚が狂っているのだろう。
スマホで時間を確認したわけだが、同時に見たく無いものまで目に入った。
驚異のメール群である。
大輔から、さかのぼると5日前の朝方からメールが来ている。
最後のメールは昨日の夜の11時だ。
早い時は朝の4時からメールが来ているのだが、睡眠時間は大丈夫なのだろうか。
まぁ、この様子なら今日も4時には起きているだろう。
とりあえず、朝飯を食ってから電話してやる事にした。
俺は朝食はパン派なのだが、ダンジョンに潜っている時はパンやカコリーメイト等が多い。
そのため和食に飢えていた。
夢中でパソコンを操作している鳥に留守番を頼むと、俺は牛丼のチェーン店にまで足を延ばした。
新宿はこんな時間でも人が歩いている。
流石に自衛官がいるダンジョン近くは皆無だが、駅に近づくにつれ酔払いとかが目立つようになる。
牛丼屋で大盛りおしんこ卵付きで早目の朝食をとり家に戻る。
帰り道でふと悪戯心がわき、起きたら電話くれと大輔にメールをしておいた。
10歩、歩いたらスマホが振動した。
俺はいつでもマナーモードだ。
電話の相手は・・・大輔だ。
やはり起きていたのか・・・。
「大輔、俺だ。状況は?」
「もう俺には無理だ。頼む、加藤君を止めてくれ!」
「状況を言え!話は全てそれからだ。」
「何が知りたい・・。」
「・・・加藤君は・・・痩せたのか・・・?」
「痩せるわけないだろ!ワンサイズ小さい服を無理矢理着てる!どうすんだよ!世紀末救世主並みに破れてるぞ!」
・・・なら上半身は、ほぼ半裸か。
マズイな間違いなく事案発生になる。
「言い訳は使ったか?」
「あ?あぁ、例の天気の話と気温の話だろ。使ってるよ。使ったから阻止できたんだぜ。」
「お相手の情報は?」
「そっちはバッチリだ。日付が開いたからな。加藤君が探偵まで雇って調査してる。」
くっそ・・・想像の斜め上に動きやがる!
「直道!もうすぐ加藤君が来るんだ!どうすりゃいい!」
「今日の昼に新宿に集合だ。俺に相談すると言え。俺が言い含めるから、お前は俺が話す事に必ず賛同しろ。それと日記を持ってこさせろ!」
「わ、わかった。じゃあ、き、来た!後でメールする!」
この夏、最大の戦いが始まろうとしている。
だけど、俺はとりあえず、帰って二度寝をきめこむぜ。
誤字報告を含め御指摘や御指南有難う御座います。
まだ、慣れていないところもあって助かります。
本日1本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




