母の力
家に帰り、喜び勇んでパソコンをセットするカイムを尻目に、随分ステータスを確認していなかった事に気付き確認することにした。
ゾンビ観戦ツアー直前に確認した際は48だったはずだ。
名前:菅原直道 Lv48→64
年齢:16
職業:呪殺師 Lv19→26
称号:
HP:338→452
MP:384→516
攻撃力:30→41
防御力:19→22
精神力:48→64
素早さ:23→30
知力 :7 →8
器用 :24→34
運 :48→64
職業スキル
呪殺Lv7
スキル
すげぇ!一気に16レベルだ。
最近は全然レベルが上がらなかったのに凄い上昇だ。
それに知力が1つ上がってる。
10になれば、俺でも敦兄ちゃんが行ってるような一流の国立大に行けるかもしれない。
大学生冒険者は今の流行りだからな。
これで俺もモテるぞ!
俺がバラ色の未来構想を練っていると玄関から声が聞こえる。
ついに両親が帰ってきたのだ。
カイムの事を紹介し、事後になるが家におく事の了承を得なければならない。
夢中でパソコンをいじっているカイムをおいて偵察任務にでる。
聞こえる声は明るく上機嫌だ。
この機を逃さず突き進めば勝利は我が手に入るはず。
居間でくつろぐ両親を見る。
母はツヤツヤのテカテカで温泉の効果が発揮されていて上機嫌だ。
それに比べ何故か親父は疲れている。
それどころか、温泉に行く前よりやつれて見える。
荷物持ちとしての労働が温泉の力を上回ったのだろうか。
「あら、直道どうしたの?・・・・何かしたのね!」
発見された瞬間、上機嫌だった母の機嫌が急転直下で不機嫌になり、ツヤツヤだった眉間に皺がよった。
息子の顔を見ただけで不機嫌になるのは、いくら何でもおかしいだろ。
何故だ!
「直道・・・お前は何かやると後ろめたいのか、いつも隠れて母さんを見ているんだ。・・・ほら、父さんも一緒に謝ってやるから、こっちに来なさい。」
別に後ろめたい事なんて無いぞ!
家でカイムを飼いたいって言いたいだけだ。
虚勢を張るが、母の顎がしゃくられ俺は親父の隣に連座した。
親父が素早く正座したので、俺もそれにならって正座する。
「それで、何をしたの?」
底冷えするような母の声が部屋に響く。
あまりの圧力に視線を横に外すと、隣で正座し机の一点を見つめ続ける親父の背後にチワワの守護霊が見える。
プルプル震えながら不安そうな顔をするその姿に、思わず声が漏れそうになったが必死に耐えた。
どもりながらカイムの事を話すと母の怒気がとまった。
ホッとして顔を上げるが、眉間の皺は無くなったが目が笑っていない。
連れてきなさいと死刑を宣告する判事のように冷たい声を出す。
部屋に戻り、カイムを連れてくる。
部屋までの往復にかかる時間は約30秒。
この間にカイムにミッションを与える。
ミッションと言っても時間が限られている現在、詳しく話している時間は無い。
俺がカイムに与えた指令はただ一つ、母を褒めろ、だ。
「その子がカイムちゃん?」
『うむ、お前が主の母御か?随分若いな。』
「あら!あら、あら、あら、もお~、正直な小鳥さんねぇ~。」
よし!先制のジャブが決まった!
『それで、何の用だ。儂は忙しい。』
「あ~、そうね。・・・カイムちゃんはここに居たいのよね?」
『儂は主と共にある。』
「その~トイレとかは大丈夫かしら?」
『儂は糞尿など漏らさん!』
母の目が俺を射抜くように見つめる。
たじろぎながらも頷く。
・・・そういえばカイムはどこで用を足してるんだ?
部屋の中に形跡が無いって事は外でしてるのか・・・。
『凄い眼力だ。まるでメデューサのようだな。』
「えっ!メデューサって誰かしら?」
「が、外人のモデルさんだよ!」
危ねぇ!!こいつ、余計な事言うんじゃねぇ!
モデルに似てると言われた母が喜びクネりだす。
この頃になってようやく親父が頭をあげた。
あれは、もう大丈夫のサインだ。
「俺が面倒見るから、飼ってもいいでしょ?」
『儂は飼わ、うぐっ。』
しゃべりだそうとするカイムの口ばしを抑えて黙らせる。
ここが勝負の分かれめなんだ!黙ってろ!
「う~ん・・・ちゃんと世話するのよ。」
勝った!!!
これで、カイムも正式に我が家の一員だ。
最悪、屋根に巣箱を取り付けるつもりだったが良かったぜ!
そのまま母から温泉の土産をもらう。
また饅頭だ。
もうちょっとその温泉特有の何かを買ってくればいいものを、この夫婦は旅行の土産と言えば饅頭だ。
「直道、温泉有難う、父さんも久々にゆっくり出来たよ。でもお金は本当に大丈夫なのか?」
「平気だよ。こう見えても結構稼いでるんだ。」
親父は温泉でゆっくり出来たと言うが本当だろうか。
ゲッソリではないが、スッキリ痩せている気がするんだが・・・。
「そうか。じゃあ納税とかもしっかりしてるんだな?」
えっ!何を言ってるんだ。
俺はまだ未成年だぞ。
大輔もそんな事してるようには見えないし。
『父御よ。税は買取で既に引かれている。いい手だ。今の支配者は抜け目がないな。』
鳥にフォローされて釈然としないが、俺の代わりにカイムが答えてくれた。
しかし、そんなの聞いた事ないが本当だろうな。
『協会のHPに書かれていた。』
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その後、解放された俺とカイムは部屋に戻り、俺はカイムの使うパソコン用の机の設置を行った。
ありとあらゆるものを売り込みやがって、あの店員!
いつか後悔させてやる。
『これは仕舞っておく。』
カイムがアイテムボックスの中に書類の束を仕舞い込んだ
インターネットをつなぐために、何だか分からない物に大量にハンコを押した書類の控えだ。
月額1万円ほど取られるが、それが高いのか安いのかも分からない
俺のスマホ代が月7千円くらいな事を考えると、高いのはパソコンだからだろうか。
俺が使うわけでは無いが、部屋の中にパソコンがあると、頭が良くなったような気がしてくるから不思議だ。
『気のせいだ。』
カイムは何かブツブツ呟きながらパソコンをいじっている。
飽きもせずによくやるぜ。
感想頂き有難う御座います。
税金の事を心配されている意見が多かったので、ご都合主義で処理しちゃいました。
それと、多くの誤字報告有難う御座います。
山ほど報告頂いても一向に減らずに申し訳ありません。
ブックマークや評価が凄く伸びてきていて吃驚しますが張り合いも出てきています。
本日2本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




